第11話 Cルート じゃあね
「今日は来てくれてありがとう。せっかくだから、寄り道もしましょう。一緒に楽しみましょうね」
私はケーコの上京に付き合うことにした。私たちは慣れない鉄道を駆使して、ついにケーコをスカウトした事務所に到着した。
「やあ、水澄くん。今日はよろしく、、、おや?そちらのお嬢さんは、、、」
プロデューサーと思わしき青年は私を見ると覗き込むように観察してきた。
「社長!この子は逸材ですよ!今すぐ来てください!」
「あらあら、シロ。やっぱり私の観察眼は間違っていなかったみたいね」
そう言うケーコはどこか自慢気だった。
「おやおや、君が水澄ケーコちゃんか、ようこそ、って、君は!?」
社長と見られる中年男性は私を凝視した。
「君、名前は!?」
「水澄シロよ、今日はケーコの付き添いで来たの」
「そうか、シロちゃんか!是非、ケーコちゃんと一緒にうちの事務所に入らないか?君は1000年に1人の逸材だぞう!」
「そ、そうかしら、ありがとう、、、」
私はしばらく考えるために1人の時間を作らせてもらった。
事務所前の自販機付近にて、、、
「なあ、お前、、、」
不意に青年の3人組に声をかけられた。
「何かしら?」
「お前、地底の出身だろ?」
「!?」
私は戦闘体制を取った。
「まあ、そう構えるなよ。周りに聞かれると困ることもあるだろうし、そこの路地裏に入るぞ」
私は彼らに促されるまま、路地裏に入った。
「あなたたちは何者かしら。私のことを知っているようだけれど」
すると、最も背の高い人物が最初に答えた。
「よくぞ聞いたくれた!俺は地底三兄弟の長男、リドル!」
次に顔の堀が深い人物が続く。
「そして、僕は次男のシードル!」
背の低い人物も続く。
「最後に末っ子の俺っち、キードルだ!」
彼らはドヤ顔でポーズを決める。私はとりあえず拍手を送った。
「お前は被検体第13号、かなりの力を持った実力者で、地底でも有名人だったんだぜ」とリドル。
「私、被検体第13号という番号じゃなくて、水澄シロっていう名前があるの、そちらで呼んでもらえる?」
その発言に彼らはとても驚いた様子だった。
「そうか、お前も寝返ったのか!?それなら俺たちは協力できるな!」
「!?もしかして、あなたたちも、、、」
「お察しの通りさ。僕たちは地上に出てからこの名前をもらったんだ」
「俺っちたちを引き取ってくれたアメリカの婆ちゃんが名付けたんだぜ。イカしてるだろ?」
「、、、」
私はそのお気楽さに呆れてすぐに反応できなかった。
「まあ、俺たちもお前と同じように、地上殲滅のために送られて、その後寝返ったわけだ。俺たちが送られたのはかなり前のことになる、だから、良ければ情報を共有しないか?」
私は彼らと協定関係を結ぶことにした。そして、私の持っている情報を与え、彼ら三兄弟も私の知らない情報をくれた。それから携帯電話の番号とメールアドレスを交換してから「じゃあな」と言われた。
「じゃあな、とは?」
「なるほど、お前は戦闘に特化している代わりに言語には疎いわけだな。今の言葉は別れ際に言う挨拶だ。さようならとは違って、こっちはより親しい人間に使う言葉なんだぜ。お前は女の子だからじゃあね、だな」とリドルは教えてくれた。
「じゃあね、リドル、シードル、キードル」
「ああ、またな」
彼らとは貴重な同郷の仲間になれた。正直嬉しかった。
ケーコと合流後、、、
「おお、それじゃあ、、、」
「ええ、そのスカウト、受けるわ。これからよろしく」
「私も同じ事務所の同期としてよろしくね、シロ」
「ええ、こちらこそよろしく、ケーコ」
私はケーコと2人で事務所に入ることになった。
帰りの寄り道にて、、、
「ねえ、シロ、この白いネックレス、あなたに似合うと思うの。どうかしら?」
私はケーコにコーディネートしてもらっていた。
「お客様、こちらのカーディガンがお似合いですよ!」
「どれも高級なものばかりね。でも、確かに見た目は華やかになりそうだわ」
私はケーコと店員に促されるままネックレスとカーディガンを購入した。それから、道端でタピオカミルクティーなるものを購入して飲んでみた。
「このプチプチとした食感のタピオカとミルクティーのほのかな甘味がいいわね」
「でしょう?うちの一押しなんですよ!」
褒められて店員もまんざらではなさそうだった。
帰りの電車内にて、、、
「シロ、あなた街中でもスカウトされそうになってたわよね。やっぱりあなたってすごいのね」
「そうかしら、まあ、悪い気はしなかったけれど」
今日は自分の容姿の良さを再確認する日になった。
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