第11話 Dルート さようなら
私はヨーコの頼みで村の外から来る要人をもてなしていた。
「こんにちは、水澄セージさん、それからそのお子さん、ヨーコちゃんとシロちゃんも。私はB県の知事、相良(さがら)キョーコです。今日はよろしくお願いしますね、お三方」
「さあ、さあ、相良さん、こちらです。ここがかの有名な湖です。水質がとても良く、飲み水にもなるんですよ」とセージはキョーコを案内する。
「ええ、噂に聞いていた通り、とても綺麗な湖ですね」
「でしょう?私もここはおすすめなの」
「そう、シロちゃんもここがお気に入りなのですね」
「次はここです、この草原、、、」
「ここはとても広いの。周りに建物がないから空が全部見渡せるみたいで心地良いわよ」と私。
「それから、今年はもう終わっちゃいましたが、花火大会も開かれてとても盛況でしたよ」とヨーコ。
「花火大会の他にもファッションショーもしたのよ。キョーコにも見て欲しかったわ」
「ふむふむ、それは楽しそうですね。私も是非見てみたかったです」
「それからここは、、、」
私はセージの言葉を遮るように言う。
「この天文台では、夜になると星がたくさん見られるのよ。夜に是非また来て欲しいわ」
「あらあら、シロちゃん、セージさんよりも物知りなのですね」とキョーコははにかみながら言う。
案内を一通り終わらせると、私はキョーコと2人で話していた。
キョーコは不意に言ってきた。
「あなた地底の出身ですね」
「!?」
私は戦闘体制を取った。
「まあ、そう焦らないでください、私には敵意はありません。むしろあなたとは協力関係を結びたいのです」
そうしてキョーコは自分の生い立ちを語る。
「私は地底で生まれた1人の人造人間でした。それはあなたと同じ。けれど役割があなたとは違います。あなたは戦闘用、私は地上世界の政治経済に詳しく、言語による交渉が得意なのです。だからこうして県知事にまでなることが出来たのです」
「キョーコ、あなたは地底の世界とは縁を切ったの?」
「ええ、そうです。彼らとはもう無関係です。私は地上で愛する人もでき、1人の人間として生きていくことにしたのです。あなたはどうなんですか?やはり私と同じように寝返ったのですか?」
「ええ、今のところはそう考えているわ。だからさっきの協力関係の話、受けるわ」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね、シロちゃん」
私は数少ない同郷の知り合いが出来て頼もしかった。彼女とは携帯電話の番号とメールアドレスを交換するのだった。
キョーコの帰り際、、、
「それじゃあ、今日はありがとうございました。とても実りのある1日になりました。それでは皆さん、さようなら」
「さようなら、とは、確か、、、」
「人と別れるときの挨拶だよ、ほら、シロも、、、」
「さ、さようなら、キョーコ」
「ええ、さようなら、シロちゃん」
私は彼女を見送ると、展望台に来ていた。
「今日は入れてくれてありがとう、ソータ」
「いやいや構わないよ、シロちゃん。いくらでも星を見ていってくれ」
星々は輝き、いつまでも見ていられた。すると、ドアの開く音が聞こえた。
「あ、シロも来てたんだね」
部屋に入ってきたのはヨーコだった。
「こんばんは、ヨーコ。あなたも星を見に?」
「うん、そうだよ。綺麗だよね、星」
「ええ、とっても、、、」
私たちは気の済むまで星を見上げ続けるのだった。
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