第8話 祭りの本番
ついに迎えた、祭りの当日、、、
「緊張するね、シロ、、、」
「それほどでもないわ、ヨーコ」
ファッションショーの直前、私たちは控え室にいた。それにはヨーコも参加することになっていた。
「ヨーコ、シロ、みんな。行くわよ、、、!」
「えい、えい、おー!」
私たちは壇に上がった。
、、、そこで待っていたのは沢山のスポットライトや多くの観衆、いかにこのファッションショーが期待されていたのかがよく分かった。私たちはケーコやトーコを筆頭に堂々と進路を往復した。観衆からは歓声が上がっていた。観衆だけでなく、出演者の私たちも大満足でショーを終えるのだった。
ショー後の控え室にて、、、
「すごいわ、シロ!初めてなのにあんなに堂々として、立派だったわよ!それからみんなもね!」とケーコはみんなを称賛した。
「そうだね、みんなお疲れ様!今回は協力してくれてありがとう!お陰で凄い盛り上がったよ!」とヨーコも興奮気味だ。
「僕の衣装が役に立ってよかったよ。ちょっと緊張したけど、堂々と歩けたかな」とトーコ。
「みんな、今日はありがとう。私も楽しかったわ」と私も続く。これは紛れもない本心だった。
「それじゃあ、衣装はトーコとケーコに返して、、、」
「それなんだけど、みんな、その衣装は花火大会まで着てくれて構わないよ。ケーコさえ良ければだけどね」とトーコは提案する。
「それなら私も問題ないわ。普段と違う服ならより思い出に残るでしょうしね」とケーコもそれを承諾する。
「ありがとう、2人とも、それならお言葉に甘えようかな」と他の出演者も乗り気だった。
花火大会が行われている草原にて、、、
ヒュー、、、ドーン!という大きな音と共に空に大きな光が打ち上がる。赤、緑、青、黄色、白、様々な色の美しい光、、、とても綺麗だった。可能ならずっと、永遠に眺めていたい光景だ。
「綺麗ね、この前に見せてもらった星とはまた違った趣があるわね」
「そうだね、すごく綺麗、、、」
ヨーコも口を半開きにして空に上がる花火を見ていた。
夏祭り後の深夜、、、
私は寝床でずっと考えていた。地底からの通信は途絶え、連絡が取れない。何か問題があったようだ。
「、、、」
私は人間を殲滅するという命令を受けた存在。だが、最近は明らかに人間に肩入れし過ぎている。本当に彼女らを殺してしまっていいのだろうか。地底には嘘の報告をして、裏切りを行うという選択肢もある。
「、、、!」
そう、裏切り。私は地底の科学技術を結集させて作られた人造人間。もしかしたら彼らを滅ぼすことも出来るかも知れない。そんなことを考えていた。
トントン、とドアをノックする音がする。
「シロ、ちょっといいかな?」
ヨーコの声がする。
「ええ、構わないわ、入って」
私も返事をしてヨーコを招く。
「さっきまでの興奮が取れなくてさ、眠くなるまでちょっとお喋りしようよ」
私とヨーコはたわいもない会話をする。最近の学校のことや村の復興のこと、それから、先程の夏祭りのことなど。
トントンと再び音がする。
「シロ、入っていいかしら?」
ケーコの声がする。
「どうぞ」
「あら、ヨーコもいたのね。私はね、今日のお礼を言いたかったの。あんなに素晴らしいファッションショーを自分の主催で開けてとても光栄だったわ。2人とも本当にありがとう」
「何?そんなに改まって。私の方こそありがとう!村の外からもお客さんが来て、きっと村の知名度も上がったと思うんだ。ケーコ、シロ、ありがとうね」とヨーコも感謝の言葉を述べる。それに私も続く。
「私も楽しかったわ。初めての体験で新鮮でいい思い出になった。こちらこそありがとう」
私たちは深夜、雑談をして時を過ごした。そして彼女らは私のベッドで寝付いた。左にはケーコ、右にはヨーコがいる。
「、、、」
そうだ、私には守りたい存在がいる。地上で出来た家族が。私は彼女たちを守りたい。それだけでも地底への裏切りの口実には十分だろう。私は決意を固め、眠りにつくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます