第7話 祭りの準備
雨が降りやすい6月を抜けて、7月がやって来た。普段通り日常を送っていたある日の正午、私はヨーコから相談を受けていた。
「ねえ、シロ。今度の8月のお祭りで花火大火の他にも、催しを考えてるんだ。何かいい案はないかな?」
「そうね、、、」
私は考えた。そして、、、
「ケーコはファッションに興味があったわよね。彼女に協力してもらって何か出来ないかしら?」
「うーん、ケーコは村の復興にはあんまり興味がなさそうなんだよね、、、」
「ええ、それは私も分かっているわ。でも彼女の力があれば何か出来そうなのも事実よね」
「そうだね、何か案も出してくれるかも知れないし、今から聞いてみよっか」
昼食を取り、午後、私たちはケーコの部屋を訪れていた。
「うーん、それならファッションショーとかはどうかしら?私も腕を磨けるし、これならウィンウィンよね」
「って事は、、、」
「ええ、私にも協力させてちょうだい」
「やったー!ありがとう、ケーコ!」
「でも、それには条件があるわ。シロをコーディネートさせて欲しいの。どうかしら、シロ?」
「それは私もファッションショーに出るってことよね?」
「ええ、そうよ。私、ずっとあなたに似合う服のことを考えてたの。やっぱりダメかしら、、、?」
「いえ、ケーコ。私にも是非協力させて。あなたたちの力になりたいの」
「ありがとう、シロ。それなら交渉成立ね。これからよろしくね、シロ、ヨーコ」
私たちは早速ファッションショーのアイデアを出し合った。
「開催は8月よね。あまり時間がないわね。それからシロの他にも出演者が必要ね」
私はケーコの言葉に反応する。
「それなら1人当てがあるわ。高身長で髪が短いから彼女もきっと映えるでしょうね」
私はクラスメイトで学級委員長のトーコに協力してもらうために、彼女の家を訪れていた。
「ファッションショー?いいよ、面白そうだし、是非僕にも協力させてくれ。よかったら、僕の人脈を使って他にも何人か当たってみようか?」
トーコは思ったよりかなりノリノリだった。本当はこういうことに興味があるのだろうか?
「よろしくね、トーコ」
「こちらこそ、よろしく、ケーコ」
ケーコと私とトーコたちは実際に着る衣装の相談や準備、ヨーコやセージは実行委員会にかけ合い、それぞれ支度を進めていた。そんなある日、ファッションショーに危機が訪れる。
「今なんて!?衣装が届かない?」
「ごめんなケーコちゃん、大きな事故があって服が到着するのがかなり遅くなってしまいそうなんだ」
ケーコと中年男性が少し揉めていた。どうやら予定通りに衣装が届かないらしい。
「どうしよう、いっそ都会に直接赴いて服をまとめて買ってくるしかないかしら」
焦るケーコにトーコが重い口を開いた。
「ケーコ、衣装なら僕の持ってる服を使わないか?」
「でも、あなた、普段からファッションに興味なんて、、、」
「いや、それが、もってるんだなあ。これはあまり人には言いたくなかったんだけど、こういう時なら仕方ないよね。うん、僕も一肌脱ごうじゃないか」
私たちはトーコの家にやってきた。
「あらあら、大人数で、、、みんな、いらっしゃい。何か用かしら?」
私たちを出迎えたのは、トーコの母親だった。
「母さん、僕の秘蔵のコレクションの出番がやってきたみたいなんだ」
「そう、ついに、あれを解禁する日が来たのね、、、」
「さあ、見てくれ!これが僕の宝物たちさ!」
トーコが見せたのは、クローゼットに入ったたくさんの衣服だった。
「すごい、立派な服がこんなに、、、」
「ケーコ、こんなものじゃないぞ。まだまだあるんだからね!」
今度はトーコは家とは別の物置に案内した。そこにも服がたくさん入っていた。
「すごいわね、、、正直驚いたわ。あなた、さっぱりした性格だから、ファッションには興味がないと思っていたわ」
「これは他人には隠していた趣味なんだけどね。でも非常事態だもん。僕も力を貸すよ」
「ありがとう、トーコ。恩に着るわ」
私たちはトーコやケーコの服からそれぞれ何を着るか案を出し合った。と言っても、私は服を着るマネキンの係しか出来なかったが、、、大きな催しに向けて活動する彼女たちはとても充実していそうな表情をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます