第4話 ただいまとお帰り

「なあ、シロ。お前学校に行ってみないか?」

「学校、、、とは、、、?」

私はセージからとある提案を受けていた。

「学校っていうのはな、子供が将来のために色んなことを学ぶ場なんだ。同年代の子も沢山いるからきっと仲良くなれるぞ」

「そう、、、」

私は正直言ってあまり興味が湧かなかった。だが任務遂行のため人間の生態を知ることも大事だろうという考えから、私は、、、

「私も行ってみたい、、、かしらね、、、」

「そうか!それならヨーコやケーコも通っている村の高校に転入させよう!きっと楽しい毎日が始まるぞ!」


転校初日、、、


どうやら学校というのは生まれた年代順に生徒たちがクラスというものに割り振られ、同年代の人間と一緒に様々なことを学ぶらしい。なるほど、人間の割にはいい制度を考えるではないか。確かに地底人からすれば脅威にもなりうるだろう。

「あなたは、、、水澄、シロ、、、でいいのよね?」

「ええ、そうよ」

私は担任と呼ばれるクラスをまとめる大人の案内を受けていた。

「これからあなたが入るクラスへ案内するけど、余り堅苦しく考えずに肩の力を抜いてね。自己紹介もしてもらうから」

「分かったわ」

ガラガラッとドアの開く音、私は教室と呼ばれる部屋に入っていく。

「みんな、私はシロ、水澄シロよ。これからよろしく」

「、、、」

生徒たちは何故か私を見てポカンと口を開けたまま何も言わない。何か粗相があっただろうか。

「めっちゃ美人、、、」

「か、か、か、かわいい、、、」

すると担任は、

「みんなあなたの容姿が気になっているみたいね。これならすぐに打ち解けそう。これから頑張ってね!」

と小声で言ってきた。


午前の数学の授業中、、、


「ね、ねえ、あなた。ケーコとヨーコの家族なの?同じ苗字だし、、、」

「いいえ、同じ家に住んでいるだけで家族というわけではないわ」

「でも水澄ってことはやっぱり家族なのよ、それって」

「そうなのかしら、、、」

「ちょっとそこの女子!転校生が気になるのは分かるけど、授業中の私語は慎みなさい!」

「はーい、さーせーん」

授業というのは正直退屈だった。数学という科目だからだろうか、私にはあまりにも簡単すぎる。するとさっきの少女がまた声をかけてきた。

「ねえ、シロちゃん、ここ分かる?私、この問題さっぱりでさ、、、」

「この式ね、この文字にそこの数字を代入して、、、」

「すごい!これなら簡単に解けるね、ありがとうシロちゃん!」

「ええ、どういたしまして。役に立てたなら何よりだわ」


昼の休み時間、、、


「な、なあ、シロ。俺と一緒にご飯でも、、、」

「いや、僕とだ。彼女は僕と昼飯を、、、」

「ちょっと男子、シロがかわいいからってそうやって誘うのは、いくらなんでも無謀すぎるんじゃないか?両目をつぶりながら針に糸を通すくらい無理だよ。この学校に慣れてもらうためにも、まずは同じ女の子である僕と一緒にここに慣れてもらうのが無難だと思うんだけど」

「うえー、またお堅い学級委員長の妨害かよ、せっかくシロとお近づきになれると思ったのにぃ」

「さあ、あっち行った行った」

「あなたは?」

「僕は学級委員長の横手(よこて)トーコ、横手でもトーコでも好きに呼んでくれていいよ」

「よろしく、トーコ」

私は短い髪が特徴の少女、トーコに学校の案内をしてもらうことになった。

「ここは職員室、先生たちの集まる部屋だね。ここでテストの採点とかをしてるんだろうね」

なるほど、それなら先に襲うのはここになるだろう。

「ここが体育館、体育の授業では基本的にここか校庭を使うんだ。道が入り組んでてわかりづらいけど入り口の場所はしっかり覚えておいてね」

「分かったわ」

「それで、ここが理科室、理科の授業に使う部屋だよ。実験器具とか危険な薬品も置いてあるから、どうしても入りたいときは先生の許可が必要なんだ」

「そう、危険なのね。注意するわ」

「そんでもって、ここが、、、」

いつの間にか私たちの後ろに行列ができていた。

「委員長だけずるい!私にもシロの案内させてよ!」

「俺も俺も!」

「ちょっと、君たち!あんまりシロを困らせないでくれるかい?」

「いいじゃねえか、ちょっとくらい。なあ、シロ、そんなお堅い委員長とじゃなくて俺と、、、」

「はーい、お前らー、廊下で団子になるなよー、邪魔になるぞー」

「げ、校長、、、」

「さー、散った散ったー。走って転ぶんじゃないぞー」

「ありがとうございます、校長先生、助かりました」とトーコ。

「いーよいーよ、気にするなってー。それより、君ー、転校生だよねー。この学校はどーだい?もう慣れたかなー?」

「いえ、流石にまだ慣れないわ、思ったより広いし、、、」

「そーかそーか、まー、ちょっとずつ慣れていって、いずれ大きな事を成し遂げる器になってくれたらうれしーなー」


午後の体育の授業中、、、


「今日は100メートル走をしてもらう!くじ引きでペアになる人を決めるぞ」

、、、

「おや、奇遇だねシロ、僕と一緒みたいだ」

「よろしくね、トーコ」

そして私たちの順番が回ってくる。

「位置について、、、よーい、、、ドン!」

ダダダッとかけていくが、私はある失敗をしてしまう。それは、

「すげー!シロちゃん!めっちゃ早えぇぇ!」

「謎の爆速美少女転校生、これは漫画のネタになるわ、、、」

手加減をせずに走ってしまったことだ。これでは私の正体がバレかねない。ところが、クラスメイトは、

「ねえねえ、どうしたらそんなに早く走れるの!?教えて教えて!」

などと言い、私の正体がバレることはなさそうだった。


家路にて、、、


私は水澄家まで、ヨーコとケーコと一緒に帰路に着いていた。

「ねえねえ、シロ。学校はどうだった?」とヨーコ。

「初めての経験ばかりでとても新鮮だったわ」

「そう、それなら良いんじゃないかしら。まあ、シロなら慣れるのに焦るなんてことはないでしょうしね」とケーコ。


帰宅後、、、


「ただいま!」

「ただいま」

「ただいま、とは、、、?」

私の疑問にヨーコは、

「家に帰ってきたらただいまって言うんだよ。そしたら家にいる人はおかえりって言うの」

と返した。

「た、ただいま、、、」

「おー!お帰り、みんな、ちゃんと冷房も効かせてあるからゆっくり休んでくれ」

私の長い長い1日は終わりを迎えた。

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