第3話 どういたしまして

とある日、私は根城にしている家の住人、水澄ヨーコの案内で、村を散策していた。彼女は気分が乗っているのか、スキップをしながら歩いていた。

「ねえ、シロ!これ、なんだか分かる?」とヨーコは問いかける。

「何かしら?人間が球を投げているように見えるけれど、、、」

「お!すごいじゃん、よく分かったね!」

「そ、そうかしら、、、」

「これはね、有名な彫刻家が作った銅像なんだ!でも誰も注目してくれなくて、みんな、これが何をしているのか分からないって言うの、、、」

「そ、そうなの、、、」

「私はね、この村が発展するように願ってるの。それは村長、父さんも同じ。でも、村の人たちは諦めムードでやる気がある人があんまりいないの。だから、シロにも協力して欲しいんだ。あなたみたいな人なら起爆剤になると思うの。どう、、、かな、、、?」

困った。そんなこと急に頼まれても、、、

「やっぱり迷うよね。でも、この村のいいところを知ればきっと興味が湧いてくると思うの。だから、さ、一緒に行こ!」

ヨーコは私の手を引くと駆け出した。

「まずは、、、ここ!この広い湖!水質も綺麗で飲み水にもなるくらいなんだ!」

「ええ、とても綺麗ね。こんな池は初めて見たわ」

私がいた地底は水こそあったが汚くて、とても飲み水にはならなかった。

「でしょでしょ、でもね、池じゃなくて湖!だよ!」

「池じゃないのね、、、」

「それで、次は、、、ここ!この広い草原!村自体は狭いけど何故かここは広く感じるんだよね。でねでね、ここでは毎年花火大会が開かれるんだ!」

「花火、、、?」

「あれ、もしかしてシロって花火知らないの?」

「ええ、初めて聞いたわ」

するとヨーコは意気揚々と語り出す。

「花火っていうのはね、発火すると色が出る金属を爆発させるんだ。とっても綺麗だからシロにも見て欲しいな」

「その花火大会はいつ行われるの?」

「お、よくぞ聴いてくれた!なんと1ヶ月後に開かれるんだ!だからそろそろ花火職人さんたちが準備に取り掛かる時期だね」

「1ヶ月後、、、」

私はその時まで彼女たちと一緒にいられるのだろうか。悪い人間には見えないが、いずれ殺すことになる人間だ。情を傾けすぎると任務に悪影響を及ぼしかねない。だが、私は、

「、、、その時が楽しみね、、、」

と返事をしてしまった。

ヨーコに連れられるままに様々な場所を巡っていたら、いつの間にか夜になっていた。

「最後は、、、この天文台!いろんな星が見えるんだよ!今なら管理してるおじさんがいるはず、、、」

「おお、ヨーコちゃんじゃないか」

1人の男性が現れた。

「おじさん、紹介するね!この子は新しい家族のシロ!」

ええと、確かこういう時は、、、

「よ、よろしく、、、」

「ああ、私はこの天文台の管理人の春日井(かすがい)ソータだ。こちらこそよろしく、シロちゃん」

「ねえ、おじさん、シロに星を見せてあげたいんだけど、今から大丈夫かな?」

「なんだ、そんなことか。それなら構わないよ。さあ、こっちだ」

私たちはソータの案内で、天井が高い部屋に入った。

「さあ、シロちゃん、上を見上げてみてくれ」

「、、、綺麗、、、」

私の目に写ったのは無数の光る点だった。だが、ただの点ではない。一つ一つが違う形をしている。それらは個性的で私にとってとても魅力的だった。ずっと地底の奥深くにいたからか、空というものに興味が出てきた。

「あらあら、とても興味深そうに見てるね、シロ」

「そうだな、これで宇宙に興味を抱いてくれると嬉しいな」

私たちはソータにお礼を言うと、家路をたどった。その道中、、、

「ねえ、ヨーコ。さっきのことなんだけど、、、」

「え、なになに?もしかして村の復興のこと?」

「ええ、そうよ。わたしにも協力させてくれないかしら?」

「ホント!?ありがとう、シロ!恩に着るよ!」

私は感謝されて少しくすぐったかった。すると彼女は、、、

「ねえ、シロ。ありがとうって言われたときにもちゃんと返す言葉があるんだよ。こういう時は『どういたしまして』って言うの」

「そう、なの。どういたしまして、ヨーコ」

「うん!村の復興、一緒に頑張ろうね!」

ヨーコは帰るときもスキップをしていた。

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