第2話 よろしく

私がシロという名前をもらってから、約3時間が経過した。私はこの家に住む他の人間とも顔を合わせていた。

「私は水澄ケーコ。ヨーコの姉よ。あなたがシロね、噂通りの美人だわ。ちょっと嫉妬しちゃうかも」

「美人?私が?」

「そうよ、その様子だと自覚はないみたいね。モデルや女優向きの顔だから、こんな田舎町じゃなければ有名事務所からスカウトされちゃうかもね」

「ここは田舎なの?」

「そうよ、田舎、いえ、ど田舎よ。父親のセージはこの村の村長で復興に力を入れているみたいだけど、いかんせん要領が悪いからねぇ」

「あなたはここが嫌いなの?」

「いやぁ、嫌いってほどじゃないけど、好きにはなれないわ。いつか私はこの村を出て、都会で大物になってやるのよ」

おかしい、私は気づいた。何で人間ごときの戯言(たわごと)を興味深く聞いているのだろう。人間はいつかは滅ぼす存在だというのに。脳にバグでも生じているのだろうか。必要なら一旦帰還しようか、、、

「あなたも私の上京計画に付き合ってくれていいのよ?あなたくらい見た目が良ければ私もそれなりに映えるでしょうからね」

「そう、余裕があれば協力するわ」

そう言ってその場はやり過ごした。

「ウチにはクロっていうもう1人の家族もいるんだぞ」

イキイキとそう言うのはセージ。一体誰なんだろう。

「ワン!」

「わっ、、、!」

「どうした、シロ?まるで犬を見るのが初めてみたいな反応だな」

「え、ええ。初めてよ、、、」

その言葉にその場にいた全員が驚いた様子だった。

「シロ、お前一体どこから来たんだ?」

「あなた何人なの、、、」

私は焦った。自分の正体を悟られては潜入工作の計画が台無しになってしまう。ところが、、、

「謎多き美少女、、、これは村新聞の見出しになるな!」とセージ。

「私と友達になって!こんな可愛いくて不思議な子と親友になりたい、、、!」とヨーコ。もしかして歓迎されている、のだろうか、、、

「こんな賑やかな連中だけど、これからよろしくね、シロ」とケーコ

「『よろしく』、とは?」

「あなたホントに知らない事多すぎじゃない?まあ、いいけど。初めて会う人、これから仲良くなりたい人には『よろしく』って挨拶するのよ」

「それじゃあ、、、」

私は一呼吸置いてから、

「よろしく、みんな」

と言った。するとクロを除いた全員が

「よろしくね、シロ!」

と返した。

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