第25話 誠司。私は誠司に出会えて幸せよ。
三十分ほど酔っぱらった奈美さんと攻防を繰り返していると、奈美さんは僕の膝の上で眠りに落ちた。
「はぁ~ようやく寝てくれた」
「あはは、酔った奈美の相手は疲れるでしょ」
響子さんがお酒を片手に近寄ってきた。
「笑い事じゃないですよ。相手をさせられる僕の身にもなってほしいです」
「仕方ないわよ。酔った奈美は私よりエッチなお姉さんになるんだから。でも、奈美がこんなに心を開くのは私か誠司くらいだから誇っていいわよ」
そう言いながら響子さんは僕の隣に座った。
「で、誠司はいつになったら私たちのことを受け入れてくれるのかしら?」
「それは……」
それについては明日ケリをつけるつもりだった。それは僕が勝手に思っていることで二人には何も言っていない。
「まぁ、いいわ。私たちはいつまででも待つつもりだから。だから、私たちのことを受け入れてもいいって思う日が来たならちゃんと言ってね。襲うから♡」
「……はい」
僕が頷くと響子さんは少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで花火をして楽しんでいる己龍さんたちのもとへと向かって行った。
僕はとりあえず奈美さんを別荘の中に連れて行こうとお姫様抱っこをした。
別荘の二階は寝室になっていて、ベッドルームがいくつもあった。
各自部屋が一つずつ割り当てられていた。僕は奈美さんの部屋に入ると、ベッドにそっと奈美さんを寝かせた。
その寝顔は最高に可愛く、ずっと見つめていたいほどだった。
「まったく、僕のことをドキドキさせすぎです」
僕はそう呟いて奈美さんの頬をツンツンと突いた。柔らかくてスベスベだ。
「おやすみなさい。ゆっくり休んでくださいね」
奈美さんの頭を優しく撫でると僕は部屋を後にして庭に戻った。
「お、戻ってきたなモテ男!」
庭に戻るとすぐに酔った己龍さんにからかわれた。
「美人姉妹のどっちもから好かれてるなんて、羨ましいかよ!」
己龍さんは肩を組んできた。
「清ちゃんには私がいるからいいでしょ!」
どうやら有紗さんも酔っているようで頬を赤かった。
「というか、私以外の女に目移りするなんて許さないからね!」
そう言って有紗さんは己龍さんの頬をつねった。
「い、痛いって! 有紗!」
「私のことだけ見る?」
「見るから! 見るからつねるのはやめてくれ!」
「じゃあ、許してあげる」
有紗さんはニコッと微笑んで己龍さんの頬をから手を離した。
響子さんの言っていた通りだ。有紗さんちょっと変だ。
てか、めっちゃ饒舌だな。
なんてことを思っていると己龍さんが花火をやろうぜと提案してきた。
「よし! 花火やるか誠司!」
「そ、そうですね」
「プールに投げ入れられなくてよかったな」
「ですね。あ、僕はこれからやります」
ようやく花火をすることができる。
ここに奈美さんがいないのは少し寂しいが仕方がない。
初めにつけたろうそくはすっかりとなくなっていたので、新しいろうそくに火をつけた。
そして花火に火をつける。
ボーっと音を鳴らしながら赤色の火が暗闇を照らした。
それから僕たちは三十分程だらだらと花火を行った。
ただ、何も考えずに花火を見ていた。
「ふぁ~眠くなってきました」
「そうだな~」
あくびをした僕につられて、己龍さんもあくびをした。
「そろそろ寝ようぜ。明日もあるから」
「ですね」
僕たちが頷き合ってると響子さんたちもそれに同意した。
「そうね。そろそろ寝ましょうか」
「清ちゃんは私と一緒に寝てね?」
「は、はい……」
どうやら己龍さんは響子さんと有紗さんに頭が上がらないらしい。
己龍さんは有紗さんに連れていかれてしまった。
「どうする? 私たちも一緒に寝る?」
「もちろん寝ませんよ」
「あはは、そう言うと思った」
響子さんは優しく微笑んだ。
「じゃあ、私たちも中に入りましょうか」
なんか、いつもの響子さんじゃない。
響子さんと一緒にお酒を飲むのはこれで数回目だけど、こんなほんわかした雰囲気の人だったっけ。
まるで、素面の奈美さんと話しているようだった。
響子さのことを見つめていると「どうかした?」と小首を傾げられた。
「いえ、なんでもありません」
「そっか。てっきり私の横顔に見惚れてるのかと思ってけど、違ったみたいね」
ふふ、と響子さんは微笑んだ。
そんな響子さんは千鳥足で別荘のへと向かって歩き始めた。
その足取りは見ていて不安になるほどフラフラだった。
危なっかしくて見ていられなかった僕は響子さんに近づいて肩を貸した。
「捕まってください。寝室まで送ります」
「ありがとう。お願いするわ」
響子さんは素直に僕の肩に手を回した。
「誠司はやっぱり優しいわね。そういうところも好きよ♡」
「ありがとうございます」
ゆっくりと階段を上がって響子さんの寝室へと向かった。
部屋の中に入ると響子さんはベッドに座った。
「誠司。今日は楽しかった?」
「はい。楽しかったですよ」
「そっか。それはよかったわ」
響子さんは母親のような笑みを僕に向けてきた。
その言葉の節々に優しさを感じる。
「少し心配してたのよ。誠司があの二人と仲良くなれるかどうか」
「そうなんですか?」
「ええ」
まさか響子さんがそんな風に思っていたとは。
「己龍さんとはそこそこ仲良くなったと思いますけど、神川さんとはあんまり話せなかったです」
結局お礼も言えていなかった。
「まぁ、有紗はしょうがないわよ。あと三日で仲良くなれるといいわね」
ん? 三日?
今響子さんは三日って言ったか?
言い間違いかな。まぁいいや。
「誠司。ちょっとこっちに来なさい」
響子さんは自分の隣をポンポンと叩いた。
「な、何ですか?」
僕は恐る恐る響子さんの隣に座った。
座ったと同時に僕は響子さんに抱きしめられた。顔をおっぱいに埋める形で。
「誠司。私は誠司に出会えて幸せよ。こんなに誰かを思って幸せな気持ちになるのは初めてなの。だから、私は誠司のことを離さない。私たちはいつでも受け入れる覚悟ができてるからね。遠慮も気遣いもいらないから。私たち二人のことを愛してくれていいのよ? いいえ。溺愛してくれていいのよ?」
耳元で囁かれ体に電撃が走った。
顔に触れるふわふわとした感触と耳元に伝わる熱い吐息。そして聖母のような包容力。
これはヤバい。このままでは溺れてしまいそうだ。
僕は響子さんのおっぱいから無理やり顔を離す。
「誠司。好きよ♡」
目が合って微笑まれた。
「それじゃあ、おやすみ♡」
あっさりと僕のことを離した響子さんはベッドに寝転がった。
僕は「おやすみなさい」と響子さんに言うと自分の部屋に向かった。
☆☆☆
酔った響子さんは実は……
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