第24話 誠司君大好き♪ ずっと私と一緒にいてね♪

 海で疲れるまで遊んだ僕足りは別荘の中で休んでいた。


「はぁ~たくさん遊んだ~」

「僕こんなに海で遊んだの初めてです」

「楽しかったね~」

「そういえば、あの二人はまた帰ってきてないようね」


 ソファーでぐったりとしている響子さんがそう言った。


「響子さん。あの二人は何者なんですか?」


 僕はずっと気になっていたことを響子さんに聞いた。


「そうね。簡潔に説明するなら私が助けた子達たちかしらね」

「助けた?」

「そう。そんなことより奈美~お腹空いた~」


 完全にはぐらかされた。

 助けたってなんだよ。ますます気になるんだけど。


「何か食べるものあるかな~」


 奈美さんはそう呟きながら冷蔵庫に向かった。


「まぁでもあの二人のことくらいは教えておいた方がいいわよね」

「教えてくれるんですか?」

「その方が誠司が安心するっていうなら」

「安心はしますね。お二人のこと名前くらいしか知らないので」


 まぁ、それは響子さんたちにも言えることなんだけど……。


「じゃあ教えてあげようかしらね。まずは己龍から。己龍清太郎きりゅうせいたろう。二十三歳。私のボディーガードをしてもらってる元格闘家。黒スーツと黒手袋が私服の少し変わったやつ。根はまじめで話してみると案外面白い。ノリも軽いし、空気も読める。顔はまぁ見ての通りのイケメン。誠司には負けるけど。己龍に関してはこんなところかしらね」 


 続けて響子さんは有紗さんのことを話し始めた。


「で、そんな己龍のことを好きなのが有紗ね。神川有紗じんかわありさ。二十三歳。彼女は現役の警察官。ちなみにあのクズ男を捕まえたのは彼女。普段はクールだけど、己龍のこととなると周りが見えなくなるちょっとおかしな子。クール美人で高身長。。有紗も話してみると面白い子だから機会があれば話してみるといいかもね。まぁ、心を開いてくるまで時間がかっかるでしょうけどね」


 響子さんが話し終えたところで奈美さんが響子さんを呼んだ。


「姉さん。ケーキがあるけど食べる?」

「まぁ、二人についてはそんな感じかしらね。奈美食べるわ」


 響子さんは立ち上がると冷蔵庫の方に向かって行った。

 有紗さんは警察官で山崎たちを逮捕した。

 それが一番驚きの情報だった。

 今となってはもうどうでもいいことだが、後でお礼くらいは言っておいた方がいいだろうと思った。


 しばらくすると己龍さんたちも別荘に戻ってきた。

 どうやら今まで海で遊んでいたらしい。

 疲れ果てた顔をしていた己龍さんはすぐさまお風呂へと向かっていった。

 そんな己龍さんの後に続いてお風呂に向かおうをしていた有紗さんを響子さんが止めた。

 本当に己龍さんのこととなると周りが見えなくなるらしい。 

 有紗さんはしばらく「私も一緒に入ります」と泣き叫んでいた。

 

 

 それからだらだらと過ごして、奈美さんの手料理を食べた僕たちは庭に出て花火をする準備をしていた。

 響子さんがろうそくに火を付けたのを合図に僕たちは花火を手に持った。


「それじゃあ、一日目の締めに花火を楽しみましょう。乾杯~」

「乾杯~」


 花火を持っている手とは反対の手に持っていたお酒を天に掲げて僕たちは乾杯をした。

 僕以外の四人はビールでみんな美味しそうに喉を鳴らしていた。

 奈美さんと響子さんがお酒に強いのは知ってるけど、あの二人も強いのだろうか。

 そう思って二人の飲みっぷりを見ていると奈美さんが近寄ってきた。


「あ~。有紗ちゃんのこと見てるでしょ~」


 ぷにぷにと僕の頬を突いてくる。

 見ていたので否定はできなかった。


「二人の飲みっぷりを見てただけです」

「やっぱり見てたんだ~」

 

 この雰囲気は……。


「奈美さん? もしかして酔ってます?」

「酔ってな~い♪」


 そう言って奈美さんはビールに口をつけてぐいっと飲む。


「まだ一本目だよ~酔うわけないじゃん~」


 完全に酔っている時の目だ。たれ目がさらにとろ~んと垂れている。口元はえへへと緩んでるし、おそらく疲れているのが原因だろう。

 奈美さんは酔っぱらっていた。


「えへへ。誠司君好き~」


 はい。酔っているの確定。

 奈美さんと一緒にお酒を飲む機会(奈美さんが一人で飲んでいるだけ)も増えたのだが、奈美さんは酔っぱらうと必ずと言っていいほど、僕に好意を伝えてくる。

 僕のどんなところが好きなのかとか、僕と一緒にいることが幸せとか。

 聞いているこっちが恥ずかしくなるようなことを永遠と聞かされる。


「誠司君に日焼け止めクリーム塗ってもらえて嬉しかったな~♪ でも、前側を塗ってもらえなかったのは怒ってるんだからね」


 にへらと笑った後、すぐに頬を膨らませた。


「明日はちゃんと前側も塗ってね♪ 無理なんて言わせないからね? 姉さんのを塗ったんだから私のもできるわよね?」


 ぐいぐいとその豊満なおっぱいを僕の体に押し付けてくる奈美さん。

 もはや、花火どころではなかった。まだ一本目の花火にも火を付けれていない状態だった。


「な、奈美さん。せっかく花火があるん出るから花火をしませんか? 僕、花火やりたいです」


 なんとか意識を花火に持っていこうとしたが……

「え~花火なんかより私と楽しいことしようよ~♪」

 と、奈美さんは花火には興味がない様子だった。


 そんな僕たちのやりとりを三人は楽しそうに、まるでお酒のつまみにでもするように眺めているだけだった。

 響子さんにいたっては「奈美もっとやりなさい」と奈美さんの背中を押していた。


「ね~♪ 一緒に楽しいことしない?」

「僕は花火をやります!」

「むぅ。花火なんかに負けるの嫌!」


 奈美さんは頬を膨らませると僕の手に持っていた花火を奪い取ってプールに投げ入れた。


「これで花火はできなくなったね♪」

「まだ別のがありますから!」

「むぅ。他の花火も全部プールに投げ入れてやるっ」


 そう言った奈美さんは花火が置いてあるテーブルに千鳥足で向かっていった。


「己龍。花火を別の場所に移動させて」


 それを見た響子さんが己龍さんに指示をした。

 己龍さんは「了解っす」と奈美さんがプールに投げ入れる前に花火を確保して別の場所に移動させた。


「姉さんも己龍さんも邪魔しないで。花火があったら誠司君とエッチできないじゃない」


 もはや隠すつもりがない奈美さんはオブラートに包んでいた『それ』をストレートに言った。

 奈美さんとお酒を飲むようになって分かったことは、奈美さんは完全に酔っぱらうと『エッチなお姉さん』になってしまうということだ。


 僕のことを褒め倒している時はまだ少し理性が残っている時で、『それ』をストレートに表現するときは完全に酔っぱらった時だ。

 つまり奈美さんは今、完全に酔っぱらっているということだ。


 普段ならあまりこの状態までいかないのに、今日は疲れているからなのか、浮かれているからなのか分からないが、完全に酔っぱらっているようだった。

 こうなったら最後。僕は理性を保ちながら奈美さんが眠りにつくのを待つしかない。

 ここからはひたすらに奈美さんからの攻めに耐えるのみだ。

 受け入れてしまえば楽になるのかもしれないが、せめて後一日待っていただきたい。 


「誠司君大好き♪ ずっと私と一緒にいてね♪」 


 そう言った奈美さんは僕のことを強く抱きしめる。 

 そして、僕の下半身に手を持っていこうとした。


「奈美さん! いつもやめてくださいって言ってるでしょ!」


 触られるギリギリのところで奈美さんの手を掴んで阻止する。

 油断していると一瞬で狩らてしまうので、奈美さんが酔っぱらっている時は一瞬たりとも気が抜けなかった。


☆☆☆


 酔っぱらった奈美さんは実は……。

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