第47話 建国神話の第二章になる様な話よね?
「この男は、この男の血族たちは、何代を経ても変わらず私の父母を苦しめ、冒涜し続けるのです。不可能を悟りもしない者を止める手立てが他にありますか?私がこうして手を下す以外の手立ては。」
そう言われて「だよねー」なんて答えるとでも!?
「ちょっと待って?色々分からないことが多すぎるから―――って!」
ひゅ、と目の前を短刀が通過して国王を狙う。問答無用なんて、もぉ!
「オルフェ!一旦落ち着けないの!?」
「始末してから一息つきましょう。」
そんな、ねー?みたいな軽い感じで言いながら、笑い掛けられても、絶対に同意しないよ!?
「一応確認だけど、オルフェは今、王様を殺そうとしてるわね?」
「勿論。」
即答かよ!
ひゅ、とまた短刀が飛ぶから、懐に忍ばせていた扇を取り出して叩き落す。
べきり、と鈍い音がして、扇を振るった手に痺れが走る。明確な害意ある投擲に、扇じゃあまともに防ぎ続けるのは厳しそうだ。この場には国王を護る騎士も居なければ、国王本人も逃げるだけの体力気力があるかどうかも怪しげな様子だ。ミワロマイレはそもそも戦力外だろうし、頼れるのは自分だけな状況だ。
「オルフェは国王が、その石に魔力を流すのが許せないのね?そして、その石はオルフェのお父様やお母様に繋がっていて、国王が魔力を流して発生する気持ち悪さ‥‥魔力の歪みのせいで、そのお2人が傷付いている――その解釈で間違ってないかしら?」
「えぇ。」
再び投擲。
と、今度は国王自身が手にした王笏で、自分を狙って飛んで来た短刀を叩き落す。
あぁぁ!もぉ、何本短刀を持ってるのよ!じっくり考える時間が欲しいって!オルフェンズの両親が生きていて、そのご両親は王城の奥深くの如何にもワケ有りそうな石と繋がっていて、王様の魔力が歪みを作っちゃうから苦しめてしまって、しかも王様は何か効果があると思っているその行為が実は無意味だって悟らない――と?
うんうん考え込むわたしの隣で、デウスエクス王がゆっくりと顔をオルフェンズに向けて大きく息を吸う。
「私はこのフージュ王国のため、国民のため、開祖である帝から受け継ぐ浄化の力を持って、女神らが魔物を月に封じる礎となった、この魔力の弱った
何が悪い!とでも叫びそうな堂々とした様子でオルフェンズに対峙するデウスエクス王。かぐや姫のつくった月の封印を助けるために、体調を悪くするくらい魔力を使ったのを全否定するオルフェンズに言い返したい気持ちも分からないでもないけど、挑発しないで欲しい!静かに考えさせてよ!
「情報量が多すぎるわ!!ややこしすぎるのよ、もっと単純にして―――!オルフェ、あなたご両親を助けたいのね?」
「えぇ。」
「だったらどうしたら助かるの?教えて。」
「私の両親を助ければ月の封印は解けますよ。」
国王が「なっ‥‥」と、動揺を隠せずに呟きを漏らすのが耳にはいる。けど、それは今は構わない。
「そんな事、聞いてないから。どうなるか、じゃなくって、知りたいのはシンプルに助ける方法よ!助けたいんでしよ?だから王様を止めようともしたんだものね。」
「――封印の礎で無くなることです。黒い魔力を地上から減らすために、その魔力を集めて、月へ封じてしまう大魔法を持続させるために、父母は自分たちを死ねない体に作り替えて、自分たちが存在する限り続く、地上の黒い魔力を弱化する魔法を使っています。それが礎、開祖達自身の死ぬ事のできない身体と魂です。」
開祖が父母って‥‥オルフェ、もうやっぱりって気しかしないわ。
「どうすれば封印は解けるの?」
王様を殺しても根本的な解決にはならない事は、オルフェンズも分かっているんだろう。なら、解決する条件を明らかにして具体的行動を決めるのが一番単純よ。
けど、微かに唇を開いたり、閉じたりを繰り返すオルフェンズは躊躇してるんだろうな。まあ、想像以上の大事になりそうだもんね。
「両親が――
オルフェ、簡単に言うけど、それってもしかしなくても―――完全に建国神話の第二章になる様な話よね?
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