第13話 作業の手が止まるハイレベルメンバーよ!
教室についたわたしは、待ち構えていたギリムにいきなり謝られることとなった。
「済まなかったな、具体的な話は聞けなかったが何となく察することは出来た。護衛殿にも‥‥
「え‥‥は、あぁっ。はい。うん、
「バンブリア嬢?」
「
「嫌ですねぇ、いつも通りですよっ!折角3人が揃ったんだし、歴史学の課題をやりましょう!」
苦笑するスバルと、何か探るような視線の怪訝な表情のギリムだったけれど、わたしの促すまま着席してくれた。あとね、世迷い言を放ったのは、どちらかというとオルフェンズなのよ!「それら全てなら既に桜の君がお持ちですね。」なんて殺し文句よ。さすが暗殺者――いやそうじゃない。落ち着け、わたし。
それからわたしは、王都中央神殿での調査の結果、引っ掛かりを覚えた『実際よりもずっと大きく表現された月』と『表現されていない王都を取り囲む山脈』について話し、2人の意見を求めた。
取り敢えず、自分の心の平安のために『かぐや姫に
「すごいね、セレネ!そんなところに気付くなんて。たしかにその辺を掘り下げたら面白いかも知れないね。私が領地に帰るときは、あの山を越えるんだけれど、何処にも途切れの無い、本当に厄介な山なんだ。そんな憎たらしいくらいの存在感のある山を描かないのは、理由が無い筈がないと思うな。」
「意外な着眼点だな。俺はてっきり神器や貴公子の方に着目しているものだとばかり――バンブリア嬢?」
だっ‥‥ダメだ――何でそこでいきなり話題が変わるかな!?いや、ふざけた説を振りかざしてたわたしのせいだよね。分かってる。
「真っ赤だぞ。」
「マイアロフ殿は、なかなか素知らぬ様子で気持ちをえぐるよね。」
「何でもないんです。ほんと、気にしないでください。今、平常心を取り戻す呪文を唱えますから。――わたしは商会令嬢、儲け、利益、稼ぎ、収益、実利、実利、実利‥‥。」
胸に手を当て、目を閉じて「実利」を繰り返していると、段々と気持ちが落ち着いて行く。
よし、もう大丈夫!と顔を上げると、何故かスバルは苦笑し、ギリムは「なんでそんな言葉が禍々しい呪詛のように聞こえるんだ?!」と、気持ちの悪いものを見る様な顰め面をしていた。
ようやく復活したわたしと、スバル、ギリムは「
峻嶺が描かれない理由としては、「意匠的意図を持って(他の物を目立たせたいから)」が有力ではあるけれど、他には「かぐや姫が居た当時は、山が無かったから」「実はかぐや姫の神話がこの国ではないどこか別の国の出来事だったから」「山が見えない場所での出来事だったから」などを推測した。
月が実際よりも大きい理由は、「月の神々しさを強調するため」が一番ありがちだけれど、「昔は今よりも、月と地上が近かったから・月が大きかったから」
「地上よりももっと月に近い、標高の高い場所の出来事を現したから」などが考えられた。
これらをもう少し詳しく調べていかなければならない。山をはじめとした地歴に詳しい人を探すか、天文学に通じた人を探すかしなければならないだろう。打ち合わせをそう結んだところでちょうど一時限開始5分前となった。
「ではまた後程、バンブリア嬢。」
そう言って教室を出るギリムの目的地は王子のところだ。文化体育発表会前の今は、講義スケジュールが大きく変わり、発表の準備に時間割りの殆どが充てられている。そんなわけで、一時限目が歌劇準備に充てられている今日は、これから星組「西遊記」もどきの練習のために鍛練場へ集合だ。
鍛練場では、大きく演者、裏方に別れて作業をする。演者は演技指導のために臨時雇用されたあの美人ポリンドが指導することになっている。相変わらず藍色のしっとり艶やかな髪が妖艶な上に、すらりとした引き締まった体躯を際立たせる乗馬服の様な装いで、胸の前で腕を組んで立っている姿は堂々としていて威厳さえ感じる。けれど、その前に立つ主要キャストも負けてはいない。華やか可愛いフージュ王国王子に、クールな神殿司ギリムは、並んでいるだけでもそれぞれの容姿レベルが高くて見応えがある。そして我らがドッジボール部から選ばれたレッド担当君は、顔の造作こそ人並ではあるけれど、わたしが基礎体力作りから鍛えに鍛え、装いも『情熱のレッド』らしくプロデュースしただけあって、先の2人にも引けを取らないんじゃないかしら!聖女役の子爵令嬢も生粋の貴族だけあって、外見は勿論のこと、一朝一夕では身に付かない気品ある所作が美しい。
裏方担当の生徒たちも、思わずチラ見どころかガッツリ見で、作業の手が止まるハイレベルメンバーよ!
「バンブリア生徒会長!デザイン画にある衣装とセットのこの輪っかは何ですか?」
「あぁ、それは頭に付けるアクセサリーで、
それで、ギリムは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます