第九話 質問
一度本人に聞いてしまった以上、もう一度聞き直しては自意識過剰だと思われてしまうかも知れない。という気の小さい心配から、どうにか視線を意識の外に追いやって本に集中しようとしていた。
しかし、そんな僕の努力を知ってか知らずか、辻先輩が突然に唐突に、突飛でとても信じられないような、とんでもない言葉を、どうという事はないとでも言いたげに、なんの躊躇いもなく放った。
「天鬼くん、君、死にたいと思ったことはありますか。もし万が一にでもそういうことがあったら、いつどんな時にどうして死のうと思って、実際に死ぬとしたらどうやって死ぬのか。私に教えてくれませんか」
「え、いや……、はは」
いきなりのことでかなり驚いた。僕もなんでもない様子で笑ってみようとしたが、あまりうまくいったとは言えないかも知れない。
なぜそんなことを聞くんだろう、普通なら人の死についてなんてあまり気軽に聞くことじゃない。
「別に君個人の考えに対して、とやかく言うつもりは毛頭ありません。私はただ、仮に考えたことがあるのなら、どうしてそう思ったか聞きたいいだけですから」
「どうしてそんなことを聞きたいのか、教えてくれますか」
なんの根拠もないただの勘でしかないが、もしも何かとんでもない話をしても、この人ならば言葉を曲げず、言葉の通り、ただ聞くんだろう。
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