第37話 少し見えて来た事


更新遅れてすみません。


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 寝てしまったようだ。うん?何か俺の頬に柔らかい物が付いている。ゆっくりと目を開けると

「あっ!」

「ふふっ、目が覚めましたか?」

「寝てしまっていたのか」

「はい」

 参った。俺の横に透き通るような肌を見せる綾香がいる。もちろん何も身に着けていない。


「何時?」

「気にしなくていいですよ。今日はやっぱりゆっくりしましょう。私もこうしていると心が落着きます」


 彼がゆっくりと私の背中に手を回して来た。



「綾香、そろそろ起きないと」

「えっ?」

 今度は私が寝てしまったようだ。


「もう午後五時だぞ。大丈夫か?」

「大丈夫です。お父様の帰宅はいつも遅いです。お母様はお友達と会っているのでまだ帰って来ません」

「そうなのか?」


「はい。でもそろそろ起きましょうか」

 彼に体を添えているととても心が落ち着く。このままずっと居たいけどそれは将来に残しておきましょうか。その為にもあれを何とかしないと。


お互いに着替えが終わると外に出た。駅の近くの喫茶店にいる。

「明日からまた学校だな」

「直ぐに中間テストですね」

「なんかいつもテストしているみたいだな」


「そんなことないですよ。今日だって」

 顔をちょっと赤くして視線をずらした。


「ま、まあな」



 GWが開けて一週間後中間テスト有った。三年生だと教科数は多いが一学期の為、範囲は狭い。綾香は当たり前の様に一位だったが、俺はまだ五位だ。

 この学校は進学校だが、大学受験は全国の学生を相手にしなければならない。

俺としては今のままでもいいんだが。




 放課後、図書室にぎりぎりまでいた俺達は、図書室が閉まる前に学校を出た。

「綾香、喫茶店に寄って行かないか。この季節まだ明るいし」

「私は構いませんが」


 学校のある駅の側では誰が見ているか分からない。目立つので綾香の家のある駅の側の喫茶店に入った。店員にダージリンとアールグレイの紅茶を注文すると綾香の顔を見た。


「どうしたものかな」

「…………」


 考えていると店員が紅茶を持って来た。それを飲んでいると新しい客が入って来た。俺達のすぐ近くのテーブルに座ると


「ねえ、早く二人のアパート見つけようよ」

「分かっているんだが、保証人がいないと敷金が高くなる。二人ともまだ大学生だ。バイトしているからとはいえ、そんな事世間じゃ通用しない。親が保証人になってくれればいいけど、同棲するから保証人になってくれって言うのもな」

「だから、早く私をあなたのご両親に紹介して。それで保証人になれば若い二人でも大丈夫だわ」


「っ!」

 そうか。若い二人でも世間が納得する方法があったんだ。父さんは、高原さんがヒントをくれたと言っていた。…高校二年生十七才の子供が口にしたところで…あれがヒントか。


「どうしたんですか。慎之介さん?」

「綾香、見えて来た気がする。君のお父さんを納得させる方法が」

「本当ですか!」

 あまりの声の大きさに周りがこっちを向いた。


「綾香声が大きい」

「スミマセン」

 下を向いて恥ずかしそうにしている。


「綾香、俺が君のお父さんに言った事を文書にする。その内容を俺の父さんが保証するというものだ。もちろん文書は正式なものとする。

 父さんを説得させないといけないけど、これなら何とかなると思う」


「分かりました。それがめどついたらお父様に時間を取って貰います」



 俺は家に帰ると父さんが帰るのを待った。


 食事をして少し経つと父さんが帰って来た。もう十時を過ぎている。俺は母さんが迎えに出ている玄関まで行って

「父さん、帰ったばかりで疲れていると思うけど頼みたい事がある。今日中に話たいんだ」


 父さんが、俺の顔をじっと見ると

「分かった。後で私の書斎に呼ぶ。それまで待っていろ」

「はい」




 父さんに呼ばれたのは零時近かった。

「何用だ。慎之介」

「父さん。頼みがある。前に俺が高原さんに言った事を書面にしたい。その上でその内容の実行を父さんが保証して欲しいんだ」

「私にお前と高原さんの娘のこれからの事の保証人になれと」

「はい」


 父さんが腕を組んで考えている。始めは遠くを見ている様な感じだったが、やがて俺の顔を見て

「慎之介、高原の娘さんと会いたい。連れて来れるか」

「分かりました」



 翌日学校で綾香にこの話をした。

「そうですか。分かりました。慎之介さんのお父様のご都合の良い日時を聞いて下さい。それとその時は私を迎えに来なくて良いです。家の車で行きます。正式に高原家の跡取りとして」

「分かった」


 ここは、周りに人のいない所だ。この話を出来るのはこの辺だけ……のはずだった。


「あの、お二人さん。熱く語られているのを邪魔したくないんですけど、花壇に水やるので退いて頂けますか?」


二人で後ろを向くと女の子がリールホースとジョーロ持って立っていた。


「あっ、ごめん」

「いいんです。でも凄い会話ですね。まだ高校生なのに」

「えっ、えっと聞いた事他言無用でお願いできないかな?」

「良いですよ。高原家のお嬢様」

 その後少し笑われた気がしたけど気の所為かな。



 二週間後の日曜日、私は家の車で九条家までやって来た。何時に着くかはスマホで慎之介さんに連絡を入れてある。


 車止めに着くとセキュリティの方が二人立っていた。運転手が直ぐに降りて私の座っている後部座席のドアを開けてくれた。


 私が車から出ると話が通っているのか、車止めにいたセキュリティの一人が門の中に入る様に手で案内している。もう一人はお辞儀したままだ。


 私が車から出ると運転手は私にお辞儀をした後、車で戻って行った。


 十メートルほど行くと慎之介さんが玄関で待っている。脇にお手伝いの紀野さんも一緒に立っていた。


「綾香!」

「どうしたんですか慎之介さん。驚いた顔をして」

「いや……」

 参った、完全な和装で着こなしている。見事だ。


「では、こちらへ」

 お手伝いの人が声を掛けてくれた。


―――――


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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