第32話 大事な話


 俺は家に着くと玄関でお辞儀をしているお手伝いの紀野さんに


「少し高原さんと話がある。俺が声を掛けるまで入ってこないで」

「分かりました。慎之介様」

 そう言うと奥の方に消えて行った。


「綾香来て」


玄関を上がり右に折れて廊下を歩く。後から綾香が付いて来ているのが分かる。


「入って」


自室に入るとローテーブルの側にあるソファに座る事を進めた。

「悪いな。飲み物も出さないで」

「構いません」


「…………」

「…………」


 彼女が話し始めるまで待っていよう。




「慎之介さん、私は今年で十七になります。慎之介さんも同じですね」

 何を聞きたいんだ?


「春休みの時私に、俺が君に伝えていない言葉ってなんだ。とお聞きしましたよね。その言葉見つかりました?」

 何をいきなり言い出すかと思えば。


「いやまだだというか考えていなかった」

「そうですか。では、私を一生守ってくれるとおしゃいましたよね。その意味は?」


「あれはその…………」

 まさか、これを突いてくるとは。えっ、何でそんなに寂しい顔をしているんだ。


「慎之介さん、もし、もしですよ。今私の将来連添う人を選ばなければならないって言ったら…………」


「それは君のお父さんにもいってある。他の人は止めて欲しいって」

「では…………」

 私は慎之介さんの覚悟を聞きたかった。言って慎之介さん。


「綾香、何か変わった事が有ったのか。俺が君のお父さんにあった後」

「何もありません。ただ、……最近浅川さんの件や本城さんの件で…………」


「…………」

「…………」


 綾香は何を俺から言って欲しいのだろうか。高校卒業までには、相手を見つけないといけない。それはお互いの事だ。

 俺も綾香も跡取り。下手な事は言えない。確かに一生守るとは言ったけど。

「綾香」

「はい」

じっと俺の目を見て来た。


「今から言う事は、場合によっては二人の間に大きな問題を引き起こすかもしれない。

 綾香、俺達はまだ高校二年生だ。少し早いかもしれないが、俺は……君を生涯の伴侶としたいと思っている」

「っ!」


「でも、君も俺も跡継ぎだ。どちらかがそれを諦める必要がある。俺は諦める事は出来ない。君は諦める事が出来るのか。両親を説得できるのか?」


「出来なければ?」

「…………俺は君とは別れたくない。出来ないと言われても」


「私もです。慎之介さんと別れたくありません。だから私に決心させて欲しいのです」

「…………」

 なんて言えばいいんだ。俺が後、綾香に言っていない言葉。まさか!あの時の。



「なあ、綾香は愛しているという言葉の意味を知っているか?

 俺はまだ好きと愛しているの違いが分からないんだ。今の気持ちじゃ駄目なのか?」


 確かに好きと愛の違いってなんだろう。やはり二人共経験不足?私は愛しているという言葉を言って欲しかったけど愛って何?言葉を欲している私が知らないとは。


 これは不味い事になりました。二人で話し合い、慎之介さんから正式ではないにしてもプロポーズの片鱗も言葉でも頂ければ、心を決めるつもりでした。でもこれでは決められない。


「綾香どうしたの?黙り込んでしまったけど」

「あっ、少し考え事を」


「綾香から話したい大事な事って?」

「済みません。話すつもりが自分の頭がまとまっていない事が今分かりました」

「そ、そうか」


「ごめんなさい、慎之介さん。私今日は帰ります。また改めてお話したいと思います」


「……綾香、お前が嬉しい時は俺も嬉しいし、お前が心配な事は俺も心配だし、だから綾香がいつも笑顔で居れる様にしたいと思っている。ボディガードもその一つだと思っているんだが。上手く言えないけど、出来ればずっと一緒に居れると嬉しい」


「えっ!」

いきなり綾香俺に抱き着いて来た。思い切り俺の胸に顔を埋めている。


この人は自分の気持ちが一つの言葉と繋がっていなかったのね。


「慎之介さん、私も同じ気持ちです。あなたが嬉しい時は私も嬉しいし、あなたが心配な事が有れば私も心配です。……やっと言ってくれましたね」


 えっ、いつも思っている事を言葉に出しただけなんだけど。


 じっと俺の顔を見て目を閉じた。


「慎之介さん、お願いです」

「でも…………」

「いいのです。それとも私は場所もわきまえず、好きな男の人の家で欲しがる卑しい人間でしょうか?」

「分かったよ」


……………………。


 ああっ、慎之介さん。嬉しいです。



 綾香が俺のベッドの上で寝ている。まさかこんな事になるとは。一応持っていたから良かったけど。

 しかし可愛い綺麗な顔をしている。でもどうやったらこの子の両親を説得できるのか。父さんとも考えるか。


「あっ、慎之介さん」

 唇を塞がれた。


…………。



「綾香、そろそろ」

「はい」

 二人共何も着ていない。二人でタオルケットに包まれている。


「あの、慎之介さん」

「分かっている。反対向いているよ」



 俺の背中を反対に向けると彼女が起き上がり洋服を着始めた。そして等身大の鏡の前で身なりを整えて化粧をし直すと

「慎之介さん、出来ました。ちょっと待って下さい」

 ソファに座って下を向くと


「着替えて下さい」

 俺は、別にみられても良いのだけど彼女は駄目らしい。


「送って行くよ」

「うん」


 綾香の家まで俺の家から約一時間、往復で二時間だ。彼女を送って家に戻ると玄関に雅が立っていた。


「お兄様、雅は言いたい事が有ります」

「なんだ?」

「こほん、あの……。あーもう、いいです。とにかくお友達を連れて来た時は少し小声にして頂けると助かります」

顔を赤くして自室に戻って行った。


「あっ」

そうか、綾香の声が! 一応各部屋は壁で区切ってはいるが完全防音にしている訳ではない。漏れてしまったのか。自分の顔が赤くなるのが分かった。


とにかく一度父さんに相談しないと。


―――――


雅ちゃん、君の言う通りです。


個人的事情で次の投稿は来週の水曜になります。済みません。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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