第31話 嵐が去った後


 浅川さんも本城さんも退学になったらしい。時任の方は刑事罰を受けるらしいが、もう俺達には関係ない事だ。


 綾香への告白はずいぶん減った。俺の所為かもしれないけど。学校じゃ随分有名になった様だ。


 いま、二人でGWを利用して遊園地に来ている。去年の夏プールに来た遊園地だ。


「ねえ、あれに乗りません」

 綾香が指を差したのは、メリーゴーランド!


「いや、俺はいいよ。綾香が乗ってくればいい。俺は見ているから」

「慎之介さんも乗らないと楽しくないんですけど」

「俺はいいから」


「済みません。大人二人」

「えっ!おいちょっと」

「ふふふっ、もう買ってしまいました」


 俺達の番が来た。なぜか係員が俺の顔を見て嬉しそうにしている。

動き出すと綾香が俺の横で本当に嬉しそうにしている。俺は恥ずかしくて外側を見れないので自然と綾香の方をみることになったしまった。



「ふう、参った。恥ずかしくてしょうがない」

「私の顔を見ているのがそんなに恥ずかしかったのですか?」

「いやそう言う訳じゃなくて。あういうのを俺なんかが乗るのは恥ずかしいだろうが」

「そうですか。私は慎之介さんと乗ると楽しいですよ」

 だめだ、頭の中が遊園地に来てお花畑になっている。



「次が何を乗りたいんだ?」

「あれ!」

「えっ、俺は良いけど」


 有名な名前の付いたジェットコースターだ。確かこれ引っ繰り返るんだよな。綾香スカートだぞ。


「なあ、乗るのはいいが、あれ逆さにもなるだろう。大丈夫なのか」

俺は綾香のスカートを見た。


「大丈夫ですよ。スカートがめくれるならみんな落っこちてしまいます」

「そういうものか」

「はい」


 結構早い。上る怖さと降りる怖さだな。綾香をちらりと見ると目を思い切り開けて


ビューッ。

「きゃーーーーーーっ」


そして

グルン。

「きゃーーーーーーっ」


グルン。

「きゃーーーーーーっ」


俺は横目で彼女を見ながら可笑しくなって来た。自分で乗りたいと言っていたのに。


降りると

「慎之介さん、ちょっと休みたいです」

「あそこにベンチが有るから座ろうか」

「は~い~」

 大丈夫かな?


 ベンチに座って思い切り俺の腕に抱き着いて来ている。うーっ、結構彼女の胸のプレッシャーが。

 目を瞑っている。本当に綺麗だ。この子の側に居ると心が落ち着く、楽しくなる。どうしたものか。




やがて夕方になった。でもこの季節は陽が長い。


「ねえ、慎之介さん。最後はあれ」

まあ定番だろう。



「慎之介さんと二人でこうして乗るのを楽しみにしていました」

同じ側のシートに座ってべったりくっ付いている。


景色を見ていると、綾香が俺をじっと見て

「慎之介さん」


目を閉じた。




 もう午後六時を過ぎている。遊園地を出て駅に向かう途中


「慎之介さん、明日は?」

「特に何もないが。GWも後二日だ。のんびりしようと思っている」

「そうですか」

 何を下向いているんだ。


「慎之介さん、明日少しお話したい事があります」

「いいけど。話って?」


「お会いした時に。私の家に来て頂けませんか」

「いや、それは」

 必ずああなりそうだから。


「じゃあ、慎之介さんの家でも良いのですが」

「えっ、でも。外じゃ駄目なのか?」


「大切な話です。二人だけで話したいのです」

「…………分かった。俺の家でいいよ」



 翌日、綾香の家の最寄りの駅に迎えに行くと改札で待っていた。二十分前に来たというのにもういる。

 オレンジ色の半袖シャツ、少しハイウエストの膝下まであるスカート裾が少しフレアになっている。そして黒のスニーカ。白のバッグを持っている。首にはネックレス、そして耳にはイヤリング。両方とも俺がプレゼントしたものだ。いつもながら可愛い。


「綾香、早いな」

「今来たばかりです。慎之介さんの方こそ早いですね」

「俺はいつもこの時間だ。朝食は取ったか」

 今日はいつもより少し早い。まだ八時半だ。


「はい」

「そうか」

「慎之介さんは取られたのですか?」

「まだだが」


「では、先に慎之介さんの朝食を取りましょう」

「でも…………」

「私は、モーニングティにします」


 俺の家の最寄り駅の一つ前、いみじくも浅川さんと本城さんの家のある駅で降りると歩いて五分程の所にある喫茶店花キャベツに入った。綾香がここのパンケーキが美味しいと言っている。


 俺はプレーンにサニーサイドエッグとコーヒー、綾香は紅茶を注文した。


「綾香、話ってなに?」

「ここではちょっと。それよりもうGWも終わります。直ぐに中間テストですよ。一緒に勉強しませんか?」

「いや、俺は…………」

「駄目です。この前の学年末テスト結果もはかばかしくない結果です。まずは十位以内を目指しましょう」

「まあ、学年トップの人に言われてもなあ」

「頑張りましょう!」

 やけに気合入っているな。


 話をしている内に注文したパンケーキと飲み物が来た。俺は早速フォークとナイフを使ってパンケーキを切ると口に運んだ。


「確かに美味いな」

 偶に雅が作るパンケーキも美味いがここのも美味い。綾香はティーポットからカップに紅茶を継いでいる。


「そうですか、それは良かった」


 俺達は窓際に座っているが外からは軽くシェードされていて見えない。何気なく外を見ていると、えっ、浅川さんが年配の人と一緒に歩いている。父親かな、でもあの雰囲気。気にするのは止めるか。


「どうしたんですか慎之介さん」

「そこを今浅川さんが通った様な?」

「そうですか。私達には関係ない事です」

 少し怒った顔で言っている。確かに綾香の言う通りだ。彼女にしてみれば思い出したくない記憶だ。


 食べ終わり少しゆっくりした後、喫茶店を出た。丁度午前十時だ。


 俺の家の最寄りの駅は隣だ。綾香はにこやかな顔をしているが、何処か緊張している感じがする。今日の話に関わる事なのだろうか。


―――――


 さて高原綾香さんのお話とは?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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