第29話 浅川さんの策略


 俺がテニス部の部室で、上半身ブラだけの浅川さんから抱き着かれキスされそうになっている所に綾香が入って来た。


「慎之介さん、何しているの!」


「いやこれは……」


「高原さん、失礼ですね。せっかく私と九条君が楽しい事をしようとしていたのに。出て行って!」


「慎之介さん、どういう事ですか?」


「綾香これは……」


「何を言っているの九条君、私と放課後ここでしようと約束したじゃない。高原さん、早く出て行ってよ!」


「くっ!」

 綾香がドアを叩きつける様に閉めて出て行ってしまった。


「どういうつもりだ。浅川さん」

「いいじゃない。九条君」


 浅川さんは俺に抱き着いたまま、自分のブラを俺の手に付けて強引に取った。


「ふふっ、どお、高原さんにだって負けないでしょ。良いのよ好きにして」

「ふざけるな。する訳ないだろう」


 強引に引きはがそうとして、彼女の胸を押す形になってしまった。

「あ、ああ。もう九条君、もっとゆっくり」


「いい加減にしろ」

 俺は、浅川さんをそのままにして部室を出て行った。



「出て来て良いわよ。上手く取れた」

「任せろ。それよりひいろ、俺達のも映して上手く編集する。だからいいだろう」

「ふふっ、上手くしてね。でも今回でもう終わりよ」

「分かっている。俺もあの女が欲しいからな」



 ばかな、女ね。




 俺は、テニス部の部室を出てグラウンドを見たが、もう綾香の姿は見えなかった。

不味いな。誤解されたか。でも綾香だって分かっていただろう。とにかく電話するか。


 ルルル。ルルル。ツーッ。ツーッ。


 出ないじゃないか。綾香どうして出ないんだ。




 高原さん視点


 慎之介さん、どういうつもり。今日テニス部の部室に呼ばれていたから、当然部活の事だと思っていたのに。あんな事しているなんて。よりによって相手が浅川さんだなんて。


 プルル。プルル。

慎之介さんからだ。とても出る気になれない。




 俺は家に戻ると自室に入ってからもう一度綾香に電話した。


 ルルル。ルルル。ルルル。ツーッ、ツーッ。

 出ないかな。仕方ない。




 またかかって来た。どうしよう。

 慎之介さんが私を裏切るなんて信じられない。私以外に彼女を作ったの?でもよりによって浅川さんだなんて。


 彼女は放課後に会った時、自信を持っている様な事を言っていた。

 でもその後、慎之介さんは私を裏切らないと言っている。もう一度掛かってきたら出よう。

 


 結局、慎之介さんから電話は掛かってこなかった。

次の朝いつもの様に登校するともう浅川さんがいる。自分の席まで行くと浅川さんが近寄って来た。


「高原さん、話があるの。今日の放課後話しできるかな?」


 高原さんの顔が自信ありげにしている。

「何の話でしょう?」

「ここで言っても良いけど。でもあなたは都合悪いんじゃない」


彼女はスマホの映像を見せた。

「っ!これは」

「あなたにも九条君にも都合悪いわよね。だから放課後って言っているの」

「分かったわ」

「じゃあ、後でね」


 浅川さんが私に見せたビデオは、私がテニス部の部室を去った後、慎之介さんと浅川さんとの情事が写し出されていた。


 慎之介さんがその後、教室に入って来た。じっと私を見ている。


「おはよう綾香」

「…………」


 どうしたんだ。電話にも出ない。朝の挨拶もしないなんて。まだ俺をじっと見ている。

えっ、髪の毛を両耳にあげた。今日告白されるのか?


 昼食は別々に食べた。俺は購買に行って買って来たが、綾香はお弁当だ。全く俺を無視して食べている。




 放課後、


 朝川さんが、私を見てから出て行った。私も付いて行くと体育館の裏に来た。


「よく来たわね。というか来るか。大切な九条君の事だものね。ふふっ、九条君は私のものよ。あなたはセフレよ。彼が言っていたわ」

「そんな事慎之介さんが言う訳有りません」


「まあ、どう考えても良いけど、もう九条君から手を引いて」

「出来る訳ない。そもそも九条君があなたを相手にしているとは思えないわ」


「じゃあ、この録画はどう。彼は積極的だったわ。あなたより私の方が全然良いって言っていた。彼凄いわ。

 いつもされても最高になれる。あなたも彼に抱かれているんでしょう。でももう終わりよ」


 私は、浅川さんが自分のスマホに映し出している映像を見た。彼が積極的に浅川さんの相手をしている。信じられない。


「いつもってどういう事」

「言っている通りよ」


 そんな訳ない。慎之介さんは私が初めてだって言っていた。私も初めてだった。


「高原さん、悩む事ないわ。九条君から手を引いて。その代わりこの人を相手にしたら」


 校舎の陰から現れたのは、私に手を出そうとして退学になった時任一郎だ。

「ふふっ、高原さん。久しぶりだな。九条なんか止めて俺としようぜ。あいつより気持ち良くしてやるよ」


「時任、ここでしちゃいなよ。ビデオっとくから」

「そうだな」


 私が、時任に摑まれそうになった時だ。


「止めろ」


 彼が体育館の陰から走って来た。

「いい加減にしろ、浅川さん。綾香そのビデオを偽物だ。俺はこの人に何もしていない」


「九条君、酷いわ。あなただってあんなに夢中だったのに」

「嘘だ!」


「これはどう説明するの?」

「っ!」


 俺にビデオ映像を向けている。確かに俺が浅川さんとしているように見える。


「これをクラスネットにアップしましょうか。私は構わないわ。九条君だから。君が私の彼だってみんなに証明できる」


「止めてよ!」

「綾香!」


「高原さん、じゃあ俺としなよ。そしたらアップ止めても良いぜ」

「冗談じゃないわ。汚らわしい」


「なんだと」


その時だった。


 ピピピピ。


何、クラスネットだ。

「誰かしら、せっかくのいい所を。えっ!」


「なんだこりゃ」


 浅川さんと時任が騒いでいる。俺もスマホを見ると


「えっ!」


 そこに映っていたのは、浅川さんがテニス部の部室で情事をしているビデオ映像だった。

 相手は時任。俺達が浅川さんに見せられていた映像で俺の顔が時任になっている。


「何よ。これ。誰よ、こんなのアップしたの?」


「浅川さん、相手はそこにいる汚らわしい物だった様ね。お似合いだわ」

「何だと。このアマ」


 時任が綾香を殴ろうとした手を掴み取るとそのまま、思い切り投げ飛ばした。

「ぐあっ」




「先生、こっちです」


 声の方を見ると何故か、本城さんが生徒会役員と運動部の先生二人を連れてやって来た。


「何やっている。九条またお前か」

「いや俺は」



 運動部の先生が時任を抑え込んでいる。浅川さんは生徒会の役員に腕を掴まれている。

「浅川、時任。この映像はどういう事だ」

「先生、それは…………」

「朝川さん、観念したら。あなたが九条君をテニス部の部室に誘いだした時、あそこにいたのはあなた達だけじゃないわ。しっかりと取らせてもらったわよ。こちらが恥ずかしくなったけどね」



「この女(本城)は!」


―――――


 浅川さん、甘かったですね。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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