第27話 そして日曜日
俺は金曜日綾香と約束した通り彼女の家の最寄りの駅の改札に来ていた。約束は午前十時だ。今は、十分前そろそろ現れる頃だ。
改札の反対側の壁に立っていると
「慎之介さん」
彼女が声を掛けて来た。
「待った?」
「いつも通りだよ」
「そっか。じゃあ行こうか」
「えっ?」
てっきり綾香の家に行くとばかり思っていたのだが。
「今日はね、買い物行って食事して映画見てそして、ふふーんです」
はっ、最後のふふーんってなんだ?
来たのはいつものショッピングモール。流石に来過ぎな感じが否めない。
「なあ、いつもここだけど」
「なに?仕方ないでしょ。この辺ここしかないんだから」
「まあ、そうだが」
連れて行かれたのは、昨日本城さんと来たデパートの同じ洋服売り場。
「ここでね、買い物する。一緒に来て」
強引に手を引かれて売り場の中に連れて行かれた。
「春夏向けの洋服。何着か選ぶから見て」
「ああ良いけど」
今更分からないと言っても仕方ない。
彼女が選んだのは半袖茶系のワンピースと半袖白いブラウスと紺色のロングスカートの組み合わせ、それに花柄のワンピースだ。
「ちょっと一緒に来て」
「えっ、ここって」
試着室の前で待たされた。店員から顔には出さないけど、何か変な目で見られている。
「いいから、この二つ持っていて」
カーテンを引いて着替えている。女性の洋服の着替えの音は結構理性を刺激してくる。参ったな。
「どうこれ」
最初に選んだ茶系のワンピースだ。
「とても似合っているよ」
「じゃあ、それ取って」
次に選んだのは白い半そでブラウスに紺のロングスカート。
「どう?」
「うんとても似合っている」
最後に選んだ花柄のワンピースも見せられて
「うん、似合っているよ」
「分かった。ちょっと待っていて」
なんだ?
カーテンから首だけ出して周りを見るといきなりカーテンを開けた
「これは似合っている?」
「くっ!」
身に着けていたのは、前に買った青系のブラとパンティだ。
「お、おい」
「いいじゃない。誰もいないし。見せるって言ったでしょ」
マジで見てしまった。
「ふふふっ、もう良いかな?」
「もういい」
一回しているからスタイルは知っているけど……。どういうつもりだ。
結局、花柄のワンピースと白のブラウスと紺のスカートのコーデを購入する事になった。しかし、高校生が買う金額か?
売り場の前で店員から彼女に渡された洋服の袋は、何故か俺の手にある。
「ねえ、ちょっと早いけどお昼にしよう。今食べておくと見たい映画に間に合うんだ」
「良いけど。何処に行く?」
また、ちょっと高そうなレストランと思いきや
「〇ックがいい」
「えっ、いいのかそこで?」
「うん、君と行きたい」
珍しい事も有るものだ。普段高校生のお昼とは思えない物を食べているのに。
「結構美味しいのね。スムージーとかもまあまあだわ」
「綾香の口に合うとは思わなかったな」
「そんなことないよ。でもまだ二回目」
「二回目?最初は誰と入ったんだ?」
「あっ、いやー、誰とかなー?えへへ、忘れた」
昨日追いかけて入ったなんて言えないし。
「なあ、もしかして昨日?」
「ソンナコトナイデスヨ」
「なんでそこ棒読みなんだ」
「いいから、いいから早く食べよ」
結局何となく想像はついたが追及しても意味が無いので止めた。でもなんで昨日の本城さんと同じ洋服売り場と〇ックなんだ?
「ねえ、この映画見たい。いいかな?」
「良いけど」
日本人の若手俳優と女優の恋愛映画だ。
綾香は最初の盛り上がりからずっと俺の手を握っている。最後の盛り上がり、二人で再会のキスシーンの時は、俺の手を自分の胸に押し付けて来た。勘弁してくれ。
場内にいる客が半分くらいになった時、ゆっくりと俺達も席を立って外に出た。
「ふふっ、素敵だったね」
「そうだな」
「ねえ、思い切りあの二人盛り上がっていたよね。ねっ!」
何でそこ強調するの。
「ねえ、まだ三時半だよ。私の家、今誰もいないんだ。いいでしょ」
「…………」
全く、あの洋服売り場の事といい、今の映画といい、もしかして最初からこの予定だったのか。
「なあ、綾香の家に行く前に一つ聞いて良いか」
「昨日、本城さんと会っていた時、もしかしてだが」
「ふふっ、バレちゃったか。本城さんの行った所、私とのデートで全部上書きしちゃおうと思って。あのお店に行っても〇ックに行っても思い出すのはわ・た・し。映画はおまけかな。慎之介さんを誘う為の」
「はーっ。負けたよ」
「ふふっ、じゃあ帰ろう。私の家に」
……………………。
慎之介さんやっぱり私の下着と映画で彼の気持ちを焚きつけたみたい。今日はとても凄かった。
三回もしてくれて。激しかったし。初めての時してない事もしてくれた。それに避妊もしっかりしているから大丈夫。
ふふっ、他の人(女性)なんかに一時でも慎之介さんの気持ちを取られないようにしないと。
慎之介さんの寝顔って綺麗。本人は気付いていないけど結構イケメン。気を付けないと。
もう彼は私と結婚してくれると思う。
でもこの高原家を継いでくれるのは難しい。彼と素直に話してみよう。
あっ、目を開けた。
「慎之介さん」
「綾香」
えっ、もう一度。ふふっ嬉しい。彼と体を合せていると本当に幸せな気持ちになる。
結局俺は綾香の家を午後六時半に出た。それまでお手伝いさんを含めて誰も帰ってこなかった。どういうことだろうか。
私は彼を駅まで送って行くと一人で帰った。この季節は十分に明るい。
家に帰ると直ぐにお父様の書斎に行った。
「お父様、ありがとうございます」
「本当にいいのか。九条君で」
「はい、今度二人で話したいと思っています」
「そうか」
―――――
ふーっむ。なるほどね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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