第25話 新学期です


あっという間に春休みも過ぎ、二年生が始まった。


始業式の日に下駄箱の先にある掲示板にクラス分けが発表される。クラス分けは、成績順でAクラスからFクラスに別れる。


俺と高原さんは成績上Aクラスになった訳だが、浅川さんと本城さんも同じクラスになってしまった。もちろん水島も一緒だ。


 教室に行くとがやがやと賑やかだ。

「九条君おはよう」

「おはよう高原さん」


「あっ、九条君おはよう」

「本城さんおはようございます」

「九条君と同じクラスになりたくて頑張ったよ学年末テスト」

「そうか」


「おはよう九条君」

「おはよう浅川さん」


本城さんが浅川さんをじっと見ている。まだ仲悪そう。


予鈴が鳴ると



「はーい、みんな座って。私が担任の吉沢京子です。一年間みんなと一緒だから宜しくね」


眼鏡をかけ髪の毛が肩まである2Aの担任。背は百六十センチ位で胸は…………。まあ置いておこう。ちょっと怖そうな感じ。


「全員、体育館に行って」


 始業式では、校長先生の長ーいお話の後、新しい先生の挨拶とか色々聞いて、教室に戻った。


やがて担任の吉沢先生が戻って来た。

「はーい、席について。今から席順を決めます。この箱の中に席位置が書いてある紙が入っているから廊下の一番前の人から取って行って」


 俺は、一年の三学期の時の位置に座っていたので、大体真ん中辺りで引いた。高原さんは、先に引いている。窓側の最後の人が引き終わると


「はい、みんな席を移動して。その後学級委員決めるわよ」


 席順は、俺が廊下側から二列目の後ろから三番目、高原さんはなんと廊下側一列目の後ろから三番目で俺の右隣りになった。思い切り嬉しそうな顔をしている。


 浅川さんは廊下側一列目の前から二番目、本城さんは窓側前から三番目だ。こちらを見て複雑な顔をしている。


「はい、移動しましたね。では学級委員を決めて。自薦他薦良いわよ」


 シーンとしている。それはそうだ。好んであんなのやりたくないだろう。


「みんな決めないと時間無くなるわよ。誰かいないの?じゃあ、廊下側から誰が良いか声出して。私が黒板に書いてまとめるわ」


 なんと結果は男子が水島、女子が浅川さんになった。がんばってね。


 昼休みになると

「慎之介さん、今日はお弁当持ってこなかったので、学食行きましょうか?」

「綾香そうしよう」


「「「え、ええーっ!!!」」」

「ねえ聞いた。高原さん九条君を名前呼びしたよね」

「うん、うん。九条君も高原さんの事名前呼びした」

「やっぱり。これで確定だね」

「そうそう」


一年の時から一緒の賑やかな女子三人組の話声が聞こえている。浅川さんと本城さんがこちらというか綾香を睨んでいるけど仕方ない。



 学食に行くと二年生と三年生それに新一年生で一杯だ。

「これは大変だな。購買にしないか?」

「良いですけど、購買も混んでいるのでは?」

「そうだな」


結局、二人共定食にした。端の方で食べていると

「九条君、私も一緒に食べていいかな?」


本城さんだ。金髪で少し化粧をしている。初めて会ってから変わっていない。胸は綾香より大きそうだ。いや同じ位か?


俺は本城さんを見た後、綾香を見ると少し不満そうな顔をしたが、

「九条君良いんじゃない」

なんと自分で答えた。


「悪いわね高原さん。九条君と一緒の所。でも九条君への気持ち高原さんと同じ気持ちなの。だから一緒に食べたい」

「はっきり言いますね」

「うん、今日の朝、二人で名前呼びしたでしょ。だから。それに二人共まだ友達同士なんでしょ」


どういう意味で言っているんだろう本城さん。

「そうですね」


 結局三人で食べる事になった。確かに今の状況で慎之介さんが本城さんに強く出るのは状況をおかしくする。


「ご馳走様。先に戻るわ。ごゆっくり」

本城さんは食べ終わるとサッと席を立ってしまった。


「慎之介さん、どうしようか?」

「そうだな。あれだけストレートに来られると言いようがないな。下手に言っても状況を混乱させるだけだし」

「そうね。私もそう思っている」

「作戦考えるか」

「そうしましょ」



本城さん視点


 九条君と高原さんは朝名前呼びしたけど、まだ初々しかった。あの二人の関係は一年からの出会いとはいえ、まだ始まったばかり。いくらでも九条君を私に向けさせることが出来るはず。


 高原さんは高原産業の一人娘。九条君とは最後まで辿り着かない。私はそれが出来る。今は高原さんかもしれないけど、最後に九条君が私の彼で有ればいい。

 ふふっ、楽しみだわ。


 問題は高原さんより浅川さん。あの人は捨て身で来る可能性もある。策を考えないと。




 放課後、今日から図書室は開いている。いつもの様に図書室に行くと常連さんの一部がもう来ていた。本を読んだり、勉強したり、友達と何か小声で話をしている。


 ちらりと入り口の直ぐ側にいると図書委員を見ると窓際の席に行った。

鞄から本を取出し、外を見る。運動部はもう部活するのか凄いな。


何となく外を見ていると


ガラガラガラ。


スタスタスタ。

ガタ。


「慎之介」

いつもの様に綾香が隣の席に座った。鞄から本を取出し読み始める。俺もそれにつられて読み始めた。



 やがて予鈴が鳴り常連も帰り始めると

「慎之介さん帰りましょう」

「ああ帰ろうか」




 やはり二人は毎日放課後は図書室にいて最後の方に帰る。でも九条君と高原さんは駅で方向が別々。それがチャンス。


 私は早速行動に出た。彼が改札で高原さんと別れると

「九条君」

「あっ、本城さん」

「ねえ、時間ある。少しお話したいのだけど」


―――――


本城さん早速行動に出ました。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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