第23話 バレンタインデー
バレンタインデー当日
俺が教室に入り席に着くと何となくいつもより賑やかだ。女子が男子の側で可愛いラップを渡している。
「九条君、おはよ」
「おはよ浅川さん」
「これ、バレンタインチョコ。手作りしたの。貰って」
「あ、ありがとう」
いつも俺達の噂をする女の子達が寄って来た。
「九条君、おはよ。これバレンタインチョコ。貰って」
「ありがとう」
「私のも」
「私のも」
「あ、ありがとう」
あっという間に俺の机の上には四つのラップに入ったチョコが置かれた。
どういう事?俺そんなにモテたっけ?
不味い、他の女の子に先を越された。仕方ないお昼休みに渡そう。
一限目が終わり中休みになると
「九条君」
「あっ、本城さん」
「これ、バレンタインチョコ。手作りしたんだ。貰って」
「えっ、あ、ありがとう」
どうしたんだ俺?
不味い隣のクラスの本城さんまで九条君にチョコを持ってくるとは。
この前の日曜日、九条君と結ばれた後、名前呼びしようと話したけど、私が恥ずかしくなって結局苗字呼びなっている。
それがいけなかったのかな。
結局、昼休み前までになんと八個ものラップが俺の手の中にあった。まさか貰えるなんて思わなかったから袋なんて持って来ていない。どうしようこれ。
午前中の授業が終わり、昼休み。
「九条君、お昼行こう」
「えっ、あっ、ちょっと」
浅川さんに腕を引かれた。
「ちょっと、ちょっと待って」
ちらりと高原さんの方を見るとやるせなさそうな顔をしている。
「浅川さん。高原さんも一緒で良いかな」
「……いいよ」
浅川さん面白くなーいって顔をしているけど。でも高原さんの顔がパッと輝いた。
「浅川さんに悪くない?」
「いいよ。私なら。行こう九条君」
普通誘わないでしょ。もう!
俺達が、学食に行くと
「あっ、九条君。今日は学食なの?」
「ああ」
「ねえ、私も珍しく学食なんだ。一緒に食べない?」
「ちょっと、本城さん。九条君は私達と一緒に食べるの」
「えっ、そうなの九条君」
「そうだけど」
「じゃあ、私も一緒でいい?」
「俺は良いけど」
何よこの人。最初は私だけと思っていたのに。まあ高原さんは同じクラスだから仕方ないけど。
「九条君。今日は私達だけで食べよ」
浅川さんと本城さんが睨み合っている。
「九条君何とかして。目立っている」
確かに周りを見るとこちらを見ている人が多い。
「二人共!取敢えず今日は四人で食べよう」
「九条君、じゃあ今度二人で食べてくれる?」
「私もよ!」
「浅川さん、本城さん、そういう話はまた後にしよう。みんな見ているから」
なんとか四人でテーブルに着けたが、最悪な雰囲気だ。高原さんも困った顔をしている。
本城さんが
「ご馳走様、九条君またベンチで二人で食べようね。またね」
浅川さんを見てふんっという顔して離れて行った。
「なに、あの人途中からいきなり来てあの態度」
「ご馳走様。私も席に戻ります」
高原さんも戻ってしまった。
「ふふっ、やっと二人きりで食べれるね」
「もう、食べ終わちゃったけど」
「いいじゃない。少しここにいよ」
結局予鈴が鳴るまで学食に居たが、会話は頭に入ってこなかった。
放課後、流石に昼休みの時の雰囲気を感じ取ったのか浅川さんは、先に帰って行った。
しかし、このチョコの山どうしよう。
困った顔をしていると
「はい、これ使って」
「あっ、助かる」
高原さんが紙袋を出してくれた。
「九条君帰ろう」
「ああ帰るか」
帰ると言っても図書室に行く。俺は何気なく今日の復習をしようと教科書を取り出すと
「ねえ、九条君。これ」
淡い水色の袋を俺に渡した。
「開けて」
中には個包装にされたチョコが素敵にラッピングされていた。ピンクのリボンが可愛い。
「ありがとう」
「手作りしたの。多分口に合うと思うんだけど」
「口を合せるよ」
「ふふっ、ありがとう」
「そこの人達。ここは図書室です。温室にしないで下さい」
図書委員に言われてしまった。
「「済みません」」
目を合わせると
「今日は帰ろうか」
「うん」
校門を出ると
「九条君。どこか寄って行く。家反対方向だから」
「そうだな。でももう暗いし、送って行くよ」
「ありがとう」
九条君に家まで送って貰った。別れ際にキスしたけど、少し不安な気持ちが残った。
浅川さんといい、本城さんといい、あの積極的な行動が心配。
彼が私を裏切るなんてないと思うけど、間違いはありそう。心配だな。
浅川ひいろ視点
全く今日という日は。せっかく手作りでバレンタインチョコ作ったというのに。今日は九条君にチョコを渡してお昼を二人で食べて告白して一挙にあれまで持って行こうとしたのだけど。
あの本城って子が入ってこなかったら、高原さんだけだったら何とかなったのに。まあ、いいわ。まだ、春休みもある。二年までには何とか第一歩を踏み出してみる。
本城薫視点
なに、あの浅川って女は。今日は九条君に手作りのバレンタインチョコを渡してお昼を食べてお話をしようと思っていたのに。
高原さんだけなら何とかなると思っていたのだけど、あの女は面倒そうだ。何とかしないと。でも春休みがある。二年生になる前には、ある程度のポジション固めしとかないと。
九条慎之介視点
今日は参ったな。バレンタインチョコなんて高原さんがくれるくれないか位にしか思っていなかったら浅川さん、本城さん、それにクラスの子五人から貰った。まあクラスの子は義理チョコだと思うけど……。面倒だな。
高原さんからのチョコは嬉しいけど。
家に着くと
「ただいま」
ダダダダッ。
「お兄様、お帰りなさい」
じっと妹が俺を見る。
「その袋は?」
「ああチョコレートだ」
「えっ、お兄様、バレンタインチョコをそんなに。モテるんですね」
「俺にも分からん」
「チョコを持て余すなら、私が貰ってあげます」
「そうだな。でも一通り見てからにするよ。でないとお礼も言えないから」
「何を言っているんです。お礼は三月十四日のホワイトデーです。そこまでは迂闊に心を口に出してはいけません」
「そうなのか?」
「えっ、お兄様そんな事も知らないのですか」
「知らない。ホワイトデーって何するんだ?」
「お兄様、これから少しお話しましょうか」
「その前に玄関上がらせてくれ」
―――――
これは大変な事になりました。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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