第20話 バレンタインデーはもうすぐ
来週はバレンタインデー。九条君には当然チョコを渡す。もちろん手作り。
少し前までは、彼の前には私しか見えなかった。でも最近浅川さんが彼に積極的に近づいて来ている。席が隣という事も有るのだろうけど。
当然彼女も九条君にチョコを渡す。
あの時変に気取らなくてあげてしまえば良かったのかもしれない。そうすればこんな思いしなくて済むかもしれなかった。
今も浅川さんが彼に話しかけている。
「ねえ、九条君、今日の放課後、ちょっと付き合ってくれない?」
「いや、ちょっと用事が有るんだ」
「ふーん。それって時間かかるの」
今日は高原さんが告白される日それも放課後。もう高原さんの朝の挙動で九条君の事は分かっている。
「分からないけど。そんなにかからないと思う」
「なら、教室で待っている」
「外だからここで待って居られても」
「じゃあ、校門の所は?」
しつこいな。どういう事になるか分からないし。
「とにかく今日は駄目だ」
「そっか。分かった」
チラッと高原さんを見るとホッとした顔をしている。まあ、いいわ。
放課後、高原さんが教室を出ると九条君も教室を出た。ちょっと付いて行ってみようかな。
少し距離を置いて彼の行く方へ歩く。あっ、体育館の裏だ。彼は裏まで出ないで見ている。
じっと見ているとあっ、九条君が動いた。どうしたんだろう。
少しすると二人の男の子が体育館裏から出て来た。両方とも歩くのがやっとだ。何か悔しそうな顔をしている。何か有ったのかな。ちょっと、裏が見える側まで行くと
えっ、二人が抱合ってキスをしている。そんなとこまで進んでいたのあの二人。こっちに来る直ぐに帰らないと。
……………………。
場面は高原さんが告白される場面に戻って
俺は体育館裏が見える所で見ていると
「俺は、二年C組の時任一郎。前から高原さんを見て好きになりました。付き合って下さい」
「お断りします」
「付き合っている人いるんですか」
「いません。でも心に決めた人がいます」
「誰ですか。そいつと勝負する」
「何を言い出すのかと思えば勝負なんて。そもそも私はあなたを知りません」
「だったら俺を知って下さい。友達からでいいです。付き合って下さい」
「お断りしたはずです」
「時任、もういいじゃねえか。やっちまおうぜ。そうすればお前の事も良く知って貰えるよ」
「そうだな」
これは不味い。
「おい、ちょっと待てよ」
「なんだ、お前は」
「誰でも良いだろう。その人が嫌がっているじゃないか」
「お前か心に決めた人ってのは、盗み見してやがって」
「おいこいつ一年生だぜ」
「やっちまうか」
高原さんに告白していない奴が殴って来た。何でこいつら単純なんだろう。
殴って来た腕をそのまま避けて思い切り腹に膝蹴りを入れた。かがんだところで右ひじで頭の後ろを突くと簡単に倒れた。
高原さんに告白した方が、いきなり蹴りを入れて来た。そのままかわすと体制を整える前に股に蹴りを入れてやった。随分効いた様だ。
「まだやりますか。先輩達」
「く、くそ覚えてろよ」
「忘れます」
股に蹴りを入れられた方が倒れた奴を抱えて逃げて行った。
高原さんが俺の胸に飛び込んで来た。
「大丈夫だったか?」
「怖かった。九条君ありがとう」
一度俺の胸に顔を付けると今度はじっと上目遣いに俺を見て、目を閉じた。
いいかな。唇を合せた。少しの間そうしていると彼女の方から唇を離して
「もう一度私の家に来て。今からでも良いから」
「いや駄目だよ。今度にしよう。家まで送って行くから」
「分かった」
もう一度唇を要求して来た。
もういい。彼言葉足りないけど一生守ってくれるって言ってくれている。でももう一度確かめたい。
「じゃあ、今度の日曜日必ず来て」
「……分かった」
なんか深刻な雰囲気。大丈夫かな?
結局、高原さんを家まで送って行って……。唇はきちんと拭いて。
しかし、告白とか言われても今更付き合ってなんておかしいし、何言えばいいんだ。分からん。
一生守るって言ったけどそれって……やっぱりそうだよな。父さんに相談するか。でも彼女の気持ちもしっかりと確認しないと。
俺は家に帰ると例によって
ダダダダダッ!
「お兄様お帰りなさい。あっ!」
「どうした?」
「ふふふっ、いつもよりとても女性の匂いがします。まさかお兄様!」
「なんだ?」
「いえ、お兄様の恋路に干渉するほど雅は馬鹿ではありません」
ダダダダダッ!
「お母様~。お兄様が~」
あっという間にダイニングに行ってしまった。
何だあいつ?
手洗いとうがいをしてダイニングに行くと俺を見た母さんが
「ふふふっ、本当ね。雅の言った通りだわ。慎之介がそんな事出来るなんて、母さん嬉しいですよ」
「母さんどういう意味?」
「そのままの意味よ」
「…………」
次の朝、教室に入り席に着くといつもの様に高原さんが来た。
「九条君。おはようございます」
「おはよう高原さん」
今日は髪の毛を触らない。今日はイベントがなさそうだ。
「九条君、今日のお昼休み学食で一緒に食べませんか?」
「いいけど」
珍しいな。どうしたんだ。
「ねえ、聞いた」
「うん」
「高原さん、九条君を誘ったよ」
「いよいよ、お披露目するのかな」
「まあ、そろそろいいんじゃない」
「そうだね」
おい女子何を言っているか分からないぞ。
えっ、高原さんが九条君を学食に誘った?!どういう事。昨日だって二人でキスをしていたし。不味いなちょっと急がないと。
―――――
高原さん、少し積極になったようです。浅川さんどうでますかね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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