第14話 クリスマスイブ


 ふふっ、やっと言わせたわ。これでお父様に会わす事が出来るかも。でも彼の事全然知らないし。一度家に遊びに行きたいな。


 そう言えばクリスマスイブどうしよう。もうあの子達のお誘いは断ったけど、九条君はどうするつもりなんだろう。やっぱり私から。でも彼から誘われたい。


 スマホが震えた。あっ、九条君からだ。

『はい、高原です』

『九条です。クリスマスイブの事なんですけど』

遂に誘いが来た!


『俺、Bクラスの本城さんて子に誘われているんですが』

『えっ、そうなんですか』


『それで、……俺そういうの嫌いなんで高原さんとイブするからって理由で断りたいんですけど良いですかね』

なにそれ、変な理由付けて。まあいいわ。


『仕方ないですね。良いですよ。私の名前を出しても。でもその後は』

『その後?ああ、高原さん俺と一緒にイブ過ごしませんか』

やったー、やったー、やったー!


『仕方ないですね。良いですよ』

『じゃあ、土曜日学校終わったら』

『はい♡』

うん?なんか高原さんの声の後ろにハートマークが見えた様な。電話だから気の所為か。


 やっと、誘えた。でっ、どうすればいいんだ?水島に聞くか。まだ二日あるどうにかなるだろう。



翌朝登校すると高原さんがとてもいい笑顔で

「九条君おはようございます」

「おはよう高原さん」

俺まで恥ずかしくなった。



「ほら、やっぱり無理だったのよ」

「まあ、仕方ないわね」

「でも高原さんのあの嬉しそうな顔、九条君に誘われたのかな」

「「そうだねー」」


おい女子、人を詮索するな。



昼休み、高原さんが昼食を食べ終わった後、本を読みだしたのを確認してから

「水島、ちょっといいか」

「ああいいけど」


「なあ、教えてくれ。イブって何するんだ?」

「おま、お前。本当にそれマジで言っているの?」

「俺知らないから。中学まではそんな事していないし」

「まじかよう。高校生だぞ。XTuberとかSNSで見た事ないのかよ?」

「していない」

「しょうがねえな。その代わりイブの結果教えろよ」

「まあそれはほどほどで」

「いいか、まずイブってのは…………」


 しっかりと水島に教えて貰った。だが、今から予約出来る所って言われても。プレゼントは何とかなる。父さんの力借りれば簡単だろうが、それじゃあな。


 高校一年生十六才という事もあるのか、水島に教えて貰った様な店に電話したが全く空いていなかった。


 どうするかな。カラオケはなあ。そもそも行った事無いし。レストランでも予約した方が簡単だよな。でも学校の帰りじゃ制服だし。仕方ない。




 土曜日、イブの当日だ。朝から教室の中が賑やかだ。あっという間に授業が終わり、放課後になった。


 女子達はキャーキャー言って教室を出て行った。男子達も約束があるのか、そそくさと教室を後にする。

その中で何人かがゆっくりと教室を出る。約束無いのかな?


「高原さん、行きましょうか」

「はい」


俺達はなるべく目立たない様に他の生徒が下校した後を狙って学校を後にした。


「九条君、何処に連れて行ってくれるの?」

「ついて来て下さい」

どこ行くのかな?でも楽しみ。



「ここです。済みません。ここしか空いてなくって」

「ここって?!」


連れて来られたのは、ハイグレードのレストランの個室。

「学生らしくなかったですかね」

「ううん、良いけど。でもここ予約するの大変だったんじゃ」

「まあ、ちょっと」

父さんに頼んだなんて言えない。


「二人だけなんでちょっと広いですけど、簡単なクリスマスランチを頼んであります。こういうの全然知らなくって」

「い、いいのよ。ええ」

凄い。私はカラオケの一室か、どこかの喫茶店程度を考えていたんだけど。


コンコン。

「九条様失礼します。お食事をお出しして宜しいでしょうか?」

「いい?高原さん」

「え、ええいいです」


 アペリチーフから始まりお魚とお肉の主菜。そして最後は紅茶とケーキ。

高校生のイブって感じじゃないけど。


「九条君、こういう所慣れているの?」

「えっ、何でですか」

「だって、お店の方への対応とか食事の仕方とか。十六才の高校生って感じじゃないけど」

「ああ、親から連れて来られているんで。ここも実言うと父さんに頼んで。でも高原さんも慣れていましたよね」

「ええ、私も両親にこういう所連れて来られるので」

「そうなんですか」



「あの、これプレゼントです」

「えっ、私に?」

「はい」


渡されたのは少し縦長のケース。

「開けていいかな?」


「お願いします」


ケースの蓋を開けると

「えっ、これって。ネックレス」

「はい、良く分からないので。そういうので良いかなと思って」

九条君って世間知らず?


「付けてくれる?」

「良いですよ」


 俺は高原さんの後ろに回ってネックレスの留め金をロックした。首筋がとても魅力的だ。参ったな。


「とてもよく似合っています」

「ありがとう」

参ったなあ、こんなプレゼント貰うなんて。私のプレゼントあげにくいけど



「あの、九条君。私のプレゼント。貰った物より全然チープだけど」


 そう言って渡されたのは、可愛い包みに入ったハンカチだった。俺のイニシャルが入っている。

「とっても嬉しいです。ずっと使います」

「ありがとう」


「ねえ、九条君の家に行っても良いかな」

「えっ、俺の家ですか。何もないですよ」

「ただ行ってみたくなって」


どういうつもりで言っているんだろう。良いけど。

「じゃあ、明日来る?」

「えっ、明日。いいの?」

「構わないけど」


結局そこのレストランは三時間位居た。もう五時近くなる。

「ねえ、もう暗いから送って」

「いいですよ」


 学校から二つ隣の駅で降りる。もうこの時期この時間は結構暗くなる。そのまま十分位、手を繋ぎながら歩いていると高原さんの家に着いた。周りの家と比べても結構大きい。


 また、俺の顔をじっと見上げている。えっ、まさか。あっ、背伸びして目を閉じた。良いか、この前しているし。


 彼女の肩を優しく抱いてゆっくりと唇を合せた。少しだけそうしていると手を背中に回して来た。


 唇を離して

「九条君今日はありがとう。明日行くね」

「うん」


 高原さんはニコッとすると玄門をくぐり玄関に入って行った。ネックレス付けたままだけど大丈夫かな?


―――――


高原さんの気持ちがはっきりしましたね。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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