第12話 クリスマスイブは近いのに遠い


俺が学校の校門を通ると一人の女の子が声を掛けて来た。

「九条君、ちょっといいかな」

「えっと、本城さんだよね」

「嬉しいな。名前覚えていてくれたんだ。今日のお昼一緒に食べない?」

「うーん、ちょっと分からない」

俺は高原との約束で席まで行かないと簡単に返事が出来ない。


「私と昼食取るの嫌なの?」

「そんな事はないけど」

「いつなら分かるの?」

「一限目の後」

「分かったじゃあね」

 そのまま教室の方へ走って行ってしまった。



 下駄箱で上履きに履き替えて教室に入ると高原さんは登校していなかった。珍しい事も有るものだ。


 自分の席について鞄を机の上に置くと


「ねえ、高原さん。二年生に声掛けられて校舎裏のベンチの方に行ったわよ」

なに!くそっ、朝駆けかよ。


 俺は鞄をそのままに校舎裏のベンチに行くと二人の男子と高原さんがいた。

「高原さん。好きです。付き合って下さい」

「お断りします」

「付き合っている人がいるんですか?」

「いませんが、私はあなたの事知りません。名前も言わずに付き合ってという人は信じられません」


「ほら言っただろ。こういう女はやっちまえばいいんだよ。ビデオ取っておけば何も言えないって」


高原さんの手を掴んで近くの小屋に連れ込もうとしている。

「止めて下さい!」

「直ぐに気持ち良くなるって」


不味い。俺は駆け出すと

「おい、止めろ」

「誰だてめえは。ちっ、一年生じゃねえか。邪魔するんじゃない」

「そうはいかない。その人は俺の彼女だ。手を早く離せ」

「彼女だと。この人は付き合っている奴なんていないと言ってたぜ。嘘つくな」

「っ!」


くそ、こんな時に。仕方ない。

「恥ずかしがり屋だからそう言っただけだ」


俺は高原さんを掴んでいる手を握ると手首から裏返した。

「いてっ!」


 男は高原さんから手を離したが、そのまま殴りかかって来た。仕方なく拳を避けて腕を引きそのまま足払いをすると思い切り顔から地面に突っ込んだ。


 もう一人の男も殴りかかって来たが、拳を出した腕を利用してそのまま投げた。ちょっと痛そう。



「先生こっちです」

 誰かが先生を呼んでくれたらしい。


高原がいきなり抱き着いて来た。

「おい」

「やっと告白してくれた」

「いや、あれは方便というか。とにかくちょっと違う」

「えっ、違うの?」


 先生が二人を連れて行ってくれたが、俺と高原も職員室に呼ばれた。朝から全く。


「九条どういう事か説明して貰おう」


 仕方なく、高原さんが朝二年生に連れて行かれた事を聞いて駆けつけたら、彼女が乱暴されそうだったので止めたと説明したが、


「お前のした事は、高原を守ろうとして殴りかかられたので、殴り返したという事か?」

「いや、俺は殴ってはいません。ちょっと引っ張っただけです」

疑いの目を向けている。


「後でもう一度聞くかもしれないが、今は教室に戻れ」

「あの高原さんは?」

「一応保健室で掴まれた腕を見て貰っている」


 俺は、保健室を除くと保健の先生が高原さんの手首にシップをしていた。


「高原さん大丈夫か?」

「あっ、九条君。大した事ない。ちょっと痛いからシップして貰ったところ」


「さっ、もう良いわ。ナイト(騎士)も来たみたいだだから、私は外します。二人でごゆっくり」

「ナイト?」




 保健の先生に冗談を言われた後、俺達は教室に戻った。丁度一限目が終わった所の様だ。


「あっ、帰って来た」

「高原さん。大丈夫だった」

いつも賑やかな子達だ。


「はい、何も問題ないです。先生を呼んでくれたのは、皆さんだったのですか」

「うん、高原さんが二年生に連れて行かれる所見たって話していたら、九条君が凄い勢いで教室出て行ったから、追いかけて行ったらあの場面でしょ。だから直ぐに先生を呼びに行ったの」

「そうでしたか。本当にありがとうございました」

 高原さんが思い切り頭を下げてお礼を言っている。


「しかし、九条君かっこよかったわね。見たよ。上級生を簡単にあしらうなんて」

「いいなあ、私も九条君みたいな彼氏欲しいな」

「遅いわ。九条君は高原さんだから」


もう今日は好きに言わせる事にした。


そう言えば一限目の休みだというのに本城さん来なかったな。




 今日は昼休みも放課後もお声は掛からなかったようだ。朝からあれだからな。

俺はいつもの様に図書室に行こうとすると


「九条君、ちょっといい」

「良いけど」


まあ、仕方なくお互い鞄を持って下校する事になった。校門を出て並んで歩きながら

「九条君、また助けられたね」

「いいよ。そんな事」

「ねえ、クリスマスイブどうするの?」

「どうするって?何も決めてないけど」

「そう」

何寂しそうな目をしてんだよ。


「誰かと会うの」

「そんな人いないよ」

「いないの?本当に!」

「何が言いたい」

「別に」


 何で誘ってくれないの。毎週デートしているのにクリスマスイブ会わないなんて、そんな事おかしいよ。

 やっぱり私から言うしかないのかな。でも、こういう事はやっぱり男の人からだよね。


―――――


進まない二人です。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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