第11話 二人は考える


済みません。投稿が遅れました。


――――――


高原綾香の場合


 どうしたんだろう。私。あんなことしちゃって。


 九条君と別れた後、自分の部屋で鏡を見ながら右手の人差し指を唇に持って行った。

優しかった。決して無理な事はしないでそっと唇だけを合せてくれた。


 私の方から唇を離したのは、あのまましていたらそのまま彼に寄りかかりそうになったからだ。


 やっぱり私あの人の事を……。でも友達と彼女の違いって?


 今のままでも…………。彼女になるって。あれもするのかな。いやムリムリムリ。


でももし私より魅力的な人が彼の前に現れたら。駄目。絶対駄目。


もうすぐクリスマス。何とかならないかな。でもどっちを望んでいるの。私?


 そうだ、琴乃に相談してみよう。あの子は中学の時から彼がいるし、確かしているはず。ならばこの状況分かってくれるはず。


『琴乃、私』

『あら、綾香珍しいわね。あなたから連絡してくるなんて』

『ねえ、相談に乗ってくれない?』

『えっ、相談。綾香が?』

『ちょっと困ったことが有って。明日会えないかな?』

『良いわよ』

『じゃあ、明日午後四時にショッピングモールのある駅で』

『良いわよ』




 私は早瀬川琴乃(はやせがわことの)と会う事にした。

彼女と会うのは中学卒業以来。中学時代彼女とはよく遊んだ。ショートカットに丸い顔で男の子から人気があった。今彼女は高校が違う為、前の様には会っていない。

今日は本当に久々だった。改札で待っていると


「綾香、待ったあ」

紺色のブレザーに白いシャツ、それに赤のリボンを首元に着けている。チェック柄のスカートを少し短めにして履いて軽くお化粧しているのが分かる。


「ううん、今来たところ。ファミレスでも行こう」

「了解」



「で、何相談って?」

「実は、…………」

私は九条君との出会いから昨日までの事を掻い摘んで話した。


「へーっ、綾香がねえ。しかしらしいな。付き合ってもいないのに毎週デートして手を繋ぎ、キスまでしているのに告白もしてない、されていない。お互いお友達って」


「自分でも分からないのよ。なんであんなことしたのか」


「さすが、頭の中が勉強の事だけの綾香らしい」

「茶化さないで教えてよ。どうすればいいの?」


「そうねえ。結構重症だね」

「重症?」

「そう重症。頭の中では友達と思っていても心の中では彼。会うとドキドキするなんて。もう告白なんて今更意味ないかもしれないね。

 でも二人の気持ちは告白というイベント待ち。特に綾香はね。彼に言えばいいんじゃない。告白してよって」


「そんな事言える訳ないでしょ。もし九条君が私の事何も考えていなかったら恥をかくだけじゃない」

「そんな事無いと思うけどな。じゃあ、綾香から言えば、好きです。愛してます。付き合って下さいって」

「無理よ。それに愛しているなんて自分でも分からない」


「もうだから重症なの。好きだけでキスするの?」

「しちゃった」


「じゃあ、もう告白しなさいよ。付き合って下さいって」

「でも付き合って下さいって言っても何をすればいいか分からない」

「あれしかないでしょう」

「あれって」

「せ・っく・す」

「えーっ!」

「ちょっ、ちょっと声大きい」

周りの人が一斉にこちらを見た。思わず下を向いてしまった。


「じゃあ私が一緒に行って言ってあげようか。綾香はあなたと付き合いたいって」

「駄目!」


「もうすぐクリスマスでしょ。綾香は何か考えているの?」

「別に」

「クリスマスに会いたくないの?」

「会いたい」

「それじゃあ、そこで彼が告白できるような雰囲気に持って行くしかないわね」


 結局決め手は欠けたまま時間切れになってしまった。彼女はバイトが有るらしい。





九条慎之介の場合


 俺は高原さんを送って行った後、家に帰った。

そのままリビングに顔を出すと


「あっ、お兄様お帰…………。ぷっ、ぷっぷっぷっ!」

「どうした雅?」


「ねえお兄様、そのお顔で帰っていらしたのですか?」

「そうだが」

「洗面所でお顔御覧なった方が良いと思います」


 何言っているんだ。俺は鞄を置いて洗面所に行った。


「あーっ!」


 唇に薄く口紅が付いている。参った。これで電車に乗って帰って来たのか。不味い誰かに見られていないだろうな。


 急いで拭いてから鞄を持って自室に入った。



 ふーっ、賑やかな一日だったな。しかし、あいつどういうつもりなんだ。キスなんかさせて。えっ、さ・せ・て!


 やられた。そういう事か。でもそこまで考えていない様な。でもキスまでしようとして来たんだから俺の事。でももう好きだと言ってる。友達でもキスってするのかな?


 俺はあいつを……。いや分からない。好きだがそれ以上の感情が無い。やっぱり友達の範囲か。

もし付き合う様になったら。デートして、手を繋いで、キスをして……。もうみんなやっているじゃないか。じゃあ最後は、い、いやいや。もし間違いが有ったらあの子がそのまま俺の…………。

 そんなんで父さんが俺の妻として認めるはずがない。


 こんな中途半端な気持ちじゃ、やっぱり駄目だよな。このままなのかな。


 もし、あいつに俺より好きな奴が現れたら…………。駄目だ。絶対駄目だ。


 もうすぐクリスマスだ。何か有るかな。でも俺何を望んでいるんだ?


―――――


二人共どうしようもない状況ですね。どうなる事やら。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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