第7話 俺の夏休み、私の夏休み
俺の夏休み
夏休みの宿題も終わった翌日高原さんとプール。そして今日から家の用事だ。
父さんの所には、色々な人が来る。挨拶だけの時も有れば仕事の事やトラブルの仲裁などだ。
俺は中学までは挨拶に来る人だけに父さんと一緒に挨拶をしていた。次期二十五代目当主として顔を覚えて貰う為だ。
だが、今年からは挨拶に来る人だけでなく、仕事で来る人達の時でも同席するように言われている。
仕事を覚える為だ。実際に仕事をする訳ではないが当主としてどんな仕事があるのか、父さんは九条家二十四代当主としてどんな判断をするのかを学ぶためだ。
来訪する人間は俺の愛想を取ろうとする。俺の後ろに九条家を見ているからだ。まあそれは仕方ない。この家を抜きにしたらただの高校生だ。
だが、父さんは俺を紹介する事は無い。来訪者が俺をどう見るかどう判断するかを見て楽しんでいる様だった。
当たり前だ。今まで見なかった若造がいきなり当主の隣少し奥で普通に座っているのだから。
だが、来訪者側から俺は誰だなんて聞く野暮な人間はいない。ここに来れるだけでもそれなりの身分、人となりを持っている人達だ。分をわきまえている。
そしてこういう事をしている間にも我が家の恒例がある。我が家の休暇だ。つまり旅行。一週間、緊急を要する事を除いては外部からの連絡は遮断される。
京都南西部にある我が家の別邸で過ごす。父さんと母さん。そして妹の雅と俺だ。
ただ、お手伝いにセキュリティ、運搬、連絡係を入れると二十人近くが、別邸の近くの家と言っても大した建物だが、そこで暮らす。
何をする訳ではない。父さんと母さんは普段できない事をしている。二人で散歩や書斎で本を読む。偶には昼から酒も飲んでいる。
俺と雅と両親が関わるのは朝昼夜の食事の時だ。これは全員でする。その日に遭った事等も話す。普段では考えられない光景だ。
俺と雅も自由に過ごす。散歩もいい本を読むのもいい、もちろん夜更かしだって誰からも言われない。ただ妹も俺もゲームとかは一切やらない。
妹は詩を作ったりピアノを弾いたりバイオリンを弾いたりとそっちの世界が好きなようだ。女性としていい趣味だと思う。
俺はここでしか出来ない鍛錬をしている。自然相手はいい汗をかける。
こんな我が家のはたから見ると不思議な旅行(休み)も今日で終わり明日には家に戻る。戻れば夏休みは残り一週間だ。また父さんの側で座り話を聞く楽しい?夏休みが戻る。
夕食の時、父さんが
「慎之介、家に帰ったら一日自由時間をやろう。必要だろうからな」
ばれているのかよ。全く。まあ仕方ない事だが。
「ありがとうございます。日付は自由にさせて貰って良いですか」
父さんは、脇に居るセキュリティに目配せすると必ず父さんの側に居なければいけない日を教えてくれた。
私の夏休み
九条君と何とも素敵なプールデートが終わった翌日、お父様から今年の家族旅行は来週月曜から一週間いつもの保養地に出かけると言われた。
家族旅行と言ってもお父様、お母様それに私の三人だけだ。上か下の兄弟でもいれば随分違うのだろうけど。
それでも仕事ばかりしているお父様が一日中側に居てくれるのは嬉しい。思い切り甘えられる。
お母様はそんな私の行動には一切口を出さない。すべてはお父様であり私、言い換えれば高原産業の次期社長を見ている。それがあの人の処世術だ。
でも私には優しいお母様だ。それにお手伝いさんもセキュリティの人も来るから保養地にある別邸は結構大きい。
保養地は海のすぐそばにある。私の部屋からは海が広く見える。本を読んだり音楽を聴いたりしている。
浜辺での遊びはしない。肌が有れるからやめている。でも九条君が一緒だったら…………。えっ、私何考えているんだろう。
楽しい家族旅行も終わり家に帰って来た当日、自分の部屋でベッドに寝転がりながらゴロゴロしていると
ブルル。ブルル。
スマホが震えた。あっ、九条君だ。直ぐに出る。
「はい、高原です」
「九条です。一日だけ都合付けれます。会いますか?」
「はい」
「じゃあ、明後日。場所と時間は任せるよ」
「じゃあ、九条君の家」
「はあ?!いやそれはまだ早いというか」
「じゃあ、時間経てばいいの?」
「そういう問題じゃなくてだな」
「ふふっ、分かってるわ冗談よ。学校の駅からそちら側へ二つ行った駅の所にショッピングモールがあるでしょう。そこの駅の改札で午前十時でどうかな?」
「分かった」
あの女何考えているんだ。普通相手の家に行くなんて過激な事だろう。全く!
九条君どうしてあそこまで家に行く事拒否するのかな。普通喜ぶでしょう。私に魅力ない訳じゃないと思うし。まさか男好き。いやいやそれは無さそう。
約束の日
「おはよう九条君」
「ああおはよ」
「さてどこ行こうか」
「決めてんじゃないのか」
「デートは男がリードするものよ」
「ちょっと……分かったよ」
あれ、九条と高原さんだ。へーっ、仲良さそう。あの二人付き合っているんだ。これは面白いネタが出来たぞ。
「水島君何見見ているの。行くよ」
「あ、ああ」
俺は学校の女友達とショッピングモールに来ていた。夏休みの宿題も終わっているので、ゲーセンやカラオケを楽しむ為だ。
女っ気が無さそうな振りして。まあ学校始まったらじっくり聞くか。
―――――
夏休み最後に見られてしまいましたね。どうなる事やら。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます