第6話 二人でプールなんで?


 私は自分の部屋で悩んでいる。

 はぁーっ。なんで私あんなの事言っちゃっただろう。

 

 まあ買い物はいいよ。友達だと思っているから。でも今日買ったワンピ着て水着それもビキニよ。彼氏だったら分かるけど、あいつそんなんじゃないし。


 中学位までは男友達も何人かいたけど、みんな女の子の友達の友達って事で私の直接の友達じゃない。


 そう、たまたまなのよ。図書室に行くと何故かあいつが窓際の席に向って外見ているか寝ているか本を読んでいる。偶に復習しているけど。


 気になって声を掛けたらそのまま何故かずるずると…………今になっている。


 好きとか嫌いとかの感情じゃないけど、直接男友達なんていた事無いから接し方が分かっていないのかな。

 でもあいつだってなんだかんだ言っても私に付き合ってくれている。あいつが私の事好き?

 いやあ、ありえないでしょ。あの態度じゃ。じゃあなんで?


 とにかく八月二日に決めてしまった。あいつと一緒にプールそれもビキニ。どうしよう男の人に肌見せるなんて。

 そうだ。ラッシュガード来てればいいんだ。足は見えるけど仕方ない。よしそれで行こう。




 俺は自室で悩んでいる。

 はあーっ、なんであんな事引き受けたんだろう。俺が女の子とプールそれも二人で!


 俺にとって今世紀最大の謎だぞ。何処でこうなった。


 俺が図書室で静かな時間を過ごしていると突然やって来て声を掛けて来た。始め無視したが、仕方なく相手するうちにあの訳の分からないボディガード役だ。


 なんで引っ張られているんだろう。好きとか嫌いとかいう感情なんてない。友達と言って良いかすら怪しい。


 なのにやたら俺に絡んでくる。俺が好きなのか。まさかな。あんな態度取っておいてそれは無い。


 しかしこんな程度の関係の二人がプールだと。女の子の水着なんて。まして俺が選んだことになっているビキニ。…………駄目だ。頭がついて行かない。


 そもそも中学まで女の子の友達と行っても男友達の友達だ。直接友達になった事なんてない。だから…………だからか距離感とやらが分からないのは。いやいや俺は突き放しているぞ。あっちが俺に…………やっぱり分からねえ。




そして八月二日。


 俺は指定された駅、学校から三つ目の駅の改札内側で待っていると高原さんが改札の向こうからやって来た。


 可愛いフリルの付いた淡いベージュのワンピース選んだ洋服だ。茶色のかかとの有るサンダル、縁広の白い帽子に大きめのバッグを持っている。いつもの様に腰まである長い髪が輝いている。


まじっ、可愛いじゃねえか。


「九条君、お待たせ」

「ああ、まだ十分前だ。め、めちゃ可愛いな。良く似合っている」

「ふふっ、そう。ありがとう。君が選んだんだものね」

なんだこの先制パンチみたいな言い方は。


 ふふっ可愛いって、顔赤くして言っている。ちょっといいかも。


「じゃあ、行きましょうか」


 俺達が来たのは電車で一本で行ける一時間と少し乗った所にあるテーマパークだ。俺達が住んでいる所から海水浴に行くには少し不便だ。だからこういうのが有る。


入場券を買って中に入ると

「私はこっち、九条君はそっちね。着替えたら待っていて」

「ああ」


 男なんて洋服脱いでアンダーと海水パンツを履けば終わりだ。あと防水小物入れで完了。五分と掛からず、更衣室の外で待つこと十五分。女性は長いまだ出てこない。


 やっと出て来た。うっ、これは!

 百六十三センチの体に洋服の上からでは分からなかった豊満なバストがビキニでぎりぎり隠れている。

 腰は括れていてお尻も形のいい大きさだ。そしてモデル並みにすらっとした足。それにラッシュガード、あれ何で手で持っているんだ。


「九条君どうかな」

「あ、ああ似合っているよ。だからラッシュガード早く着てくれ」

「あーっ、顔が真っ赤だよ。ふふふっ、私ってそんなに魅力的?」

こいつ絶対俺を弄っている。その為に来たのか。


「わ、分かったから。お前が十分魅力的だって事は分かったから着てくれ」

顔を背けながら言うと


「ふーん、私の事そういう風に思っていたんだ」

チラッと見るともうラッシュガードは着ていた。


「い、いや今のは…………」

「いいよ。九条君」

今度は上目遣いで見て来やがった。


「い、行くぞ」

「うん」


いきなり手を繋いで来た。

「おい、これ」

「いいじゃない。こういう所なんだから」

「よくねえだろう。誰かに見られたらどうするんだよ」

「知合いなんていないよ。大丈夫」


くそっ、完全マウントされている。何とかしないと。


「あそこが空いている。座ろうぜ」


 大きな流れるプールの端の方にパラソル付きのテーブルと椅子が有った。


 テーブルに防水小物入れを置いてある椅子に座る。身長差でどうしても高原さんの胸に目が行ってしまう。


「九条君、そんなに見たいの私の胸。責任取ってくれるなら良いよ」

「な、何言っているんだ」

「ふふっ、冗談よ」



「なあ、何か冷たい物買って来るか」

「うん、オレンジスカッシュが良い」

「分かった」


 ふーっ、参ったな。最初からこれじゃ。今日はどうなるんだ。


  売店は入口の側に有ったので、少し待たせたと思ってテーブルに戻ると

 はーっ、やっぱりな。あの容姿じゃなあ。


「可愛いお姉ちゃん一人。俺達と遊ばない?」

「連れがいます」

「良いじゃないかそんなの。俺達のが面白いよ。絶対」


あーあっ、定番かよ。仕方ない。


「お待たせ。買って来たぜ」

「あっ、九条君」

「なんだ、一人かよ。こんなやつより俺達のが良いって」


 高原さんの肩を掴もうとしたのでトレイを置くと直ぐに掴む前にその手首を掴んで外側に曲げた。


「うげっ、痛えじゃねえか」

「人のデートを邪魔するなよ。相手してやってもいいんだぜ。でもその前に監視員がこっちに来るけどこのまま握っておくか」

更に腕を捻ると


「わっ、分かった。もう来ねえよ」


 男二人が去っていくと監視員と目が合ってニコッとされると監視員はそのまま戻って行った。


「悪い、ちょっと混んでいて」


高原さんは立ち上がると俺の胸に飛び込んで来た。

「怖かったです」


うっ、強烈な二つのお山が俺の鳩尾辺りに押し付けられている。

「でも、嬉しかった。九条君やっぱりこれはデートなんだ」

「なあ、先に離れてくれ。周りの目も有るし」

「えっ?!」


 高原さんが周りを見ると皆ニコニコしてこっちを見ている。真っ赤な顔をしながら自分も椅子に戻ると

「ありがと」

強いし少しイケメンだし、背が高いし優しいし……。


 それから俺達は、流れるプールで浮輪を借りて高原さんを乗せて遊んだり、定番ウォータースライダーで……ピッタリ体がくっつけ……られて。でもそれを二回やって。


 何か高原さんへの見方が少し変わって来たかな。可愛くて優しくて頼って来てくれてスタイル良いし……。


 午後四時位まで思い切り遊んだ俺達は電車で帰ったが、高原さんがずっと俺の肩に寄りかかって寝ていた。


待合せた駅に着くと

「九条君、今日はありがとう。デートしたね」

「ああ、デートだったな」

「ねえ、夏休み中にもう一度会えない?」

「それは……。分かった。いつになるか分からないが連絡するよ。でも会える約束は出来ないぞ」

「うん、それでもいい。じゃあまた」

「ああ、またな」


 私は九条君が乗っていた電車を見ながら、初めての感覚に襲われていた。何なんだろうこれって。



 参ったなあ。なんなんだ、この感覚。

 

―――――


二人共恋愛初心者のようです。



次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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