第34話 反乱軍のリーダー

「なんでしょうか?」


 しばらくすると暗闇からやってきたタンは、細身でスタイルが良く、目つきがするどい。まるでたかのような目をしていた。


  戦士と呼んでいたので、筋肉質でガタイの大きい人が来ると思っていたから意外だ。目つきは鋭いというよりかは、冷酷れいこくな目と言ってもいいだろうか。相当な修羅場しゅらばをくぐり抜けてきたのだろう。腰にえた短刀がどこか不気味な雰囲気を際立きわだたせていた。



「タン。事態は動いた! みんなを集結させろ!」

「分かりました!」

 タンはどこか嬉しそうに静かにうなずき、暗闇へ消えていった。 待ちわびた時が来たと言わんばかりの表情にみえた。


 今の一言である程度、状況を把握してしまったのかと考えると恐ろしい頭の回転だ。

 ただ単に体が大きいだけなら特に問題なく勝てる。それに比べると華奢きゃしゃな体ではあるが、動きやすそうな体をタンはしていた。

「タンは今の闘技場で一番の人気で一番強いぞ!」

 どこか誇らしげに話し出した。



「わしが闘技場で活躍していた頃、あいつは孤児施設こじしせつあずけられておった。たまたま闘技場の慈善事業じぜんじぎょうがあってな。嫌々参加させられた。行かなきゃトリガーを引くと最終的にはおどされたからな」


 フィガロは笑っていたが、俺たちは笑えなかった。

「わしが行った孤児施設では静かな奴が多くてな。わしもそこ出身だったから気持ちはわかるんだが、悲しくなってな。そう感じていた時に、タンがなぜでわしに殴りかかってきやがった」

「いきなりかよ」


 俺は驚いた。今では少し落ち着いているように見えるが、フィガロはかなり迫力がある。恐らく子供たちが静かだった影響は少なからずフィガロに原因があったと確信していた。


「そうだ。わしは気に入った。殴りかかってきた行為に気に入ったわけじゃない。他の孤児を取りに来たかと思ったからわしを殴ったと感じた。そこがなんか気に入ってな。何度か口説いて養子に向かい入れた。そこからは地獄の特訓をつけてやってよ」


 またフィガロが大声で笑った。ここは笑っていいだろうとオータムは少し笑った。

「それが今では闘技場のリーダーだ!」

「リーダー?」


 メロンは不思議そうに聞いた。闘技場は個人で戦うイメージがあったから、リーダーという響きには違和感があった。フィガロからは「俺の昔を見ているようだ」と誇らしげだ。見た目が全然似ていないところが残念だ。



「そうだ。あいつの両親もトリガーにやられた。そういった奴らが集まったのが闘技場に出ている。つまり国に恨みを持っている奴らが大勢おるんだ。それをまとめているのがタンだ。今か今かと機会をうかがっておる」

「あいつってそんなに強いのかよ?」

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