第27話 世界の地図
感傷的な気分は瞬時になくなった。ただ、この旅は楽しくなっていた。
今の世界に旅行する人はほとんどない。博士が「図書館にいけ」とメッセージを残さなかったら、わざわざ自分から他の地区に出かけることもなかっただろう。
11区から出なくても、特に不自由な思いはすることはないと思い込んでいる。それに他地区の情報はどこからも入ってこない。
つまり、他地区は11地区と同じだろうという心理状態になっている。
世界は20区に分けられている。俺たちが住んでいるのは11区だ。国の中心である1区から20区まで渦巻くように区域が分かれている。国の中心から考えると11区と20区は面しており、外側にあるのが20区。つまり、11区には海はなく、山と平地が広がっている。
目指しているのは20区にある町だ。20区は海に面しており、俺は初めて海を見ることになる。小さい頃には、行ったことがあるらしいが思い出せない。もちろん、言葉は1つしかないと聞いているので、そんなに違う区に移動することに抵抗はなかった。
「オータム、運転疲れないか? 疲れたら言ってくれよな?」
運転は苦手なので、途中からオータムに運転を任せた。道はまっすぐではあるが、道路は塗装整備をあまりされていない。同じような道をひたすらまっすぐ突き進んでいった。
先程まで、はしゃいでいた2人は後部座席で寝息を立てて寝ていた。
メロンもアンコもここ最近は相当疲れただろうから、起こさないように助手席から毛布を掛けてあげた。
助手席から後部座席に寝ている2人に毛布を掛ける際には、道路がでこぼこのせいで車内は揺れた。そのせいでメロンの顔と接近してしまった。もし、起きていたら怒られていたのではないか。
「タバコ吸ってもいいかい?」
「好きに吸えばいいだろ」
オータムはタバコを吸おうと運転席側の窓を開けるつもりが
車内には外から甲高い音と強烈な風が吹き込まれた。そのせいでアンコは起きてしまった。
「タバコはだめですよ。別の車で吸ってください!」
寝起きのアンコは真剣なまなざしをバックミラー越しに向けた。
「次の休憩場所でとまろうよ。お腹空いたー!」
メロンもその風に起こされたみたいだ。
「あ。ご飯屋さん見えましたよ!」
アンコが休憩スポットにあるご飯屋を発見した。店の前には『鶏ちゃん焼き』と書かれた
「トリちゃん焼き?」
メロンが不思議そうに文字を読んだ。
「ケイちゃん焼きって読むんですよ」
アンコが自分に住んでいた町の郷土料理だと教えてくれた。
「よし。行こうぜ」
ケイちゃん焼きはアンコが住んでいた3区の
「めっちゃ、うまそうだぜ!」
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