第12話 お土産を持ってかえる?

 よく観察していると 監視員かんしいんがいるのが分かる。約10人に1人の割合で監視しているようだ。


 奴らは作業をちゃんとしているかどうか、手にはバインダーを持ち、何やら紙に書いていた。チェックシートがあるらしく一人一人に確認しながら、作業をしているようだった。


 なぜ監視員か分かったかというと奴らだけ防護服の色が違う。黒色だ。俺はもしかしたら白い防護服の人達は囚人しゅうじんではないかと感じていた。


先程の白い防護服が銃で撃たれた光景が頭をよぎる。



 ふと横見るとメロンがうずうずして、何かを言い出しそうに見えた。嫌な予感を察知さっちした俺はメロンに対して、首を横に振り、いだいている思いを考えなおすように注意した。


 だが、何を勘違いしたのか、メロンは首を縦に振った。


「誰かさらっちゃおうよ! 出発の時言ったでしょ。何か手がかり持って帰るって! あの小さい人をさらおう。多分、女の子」


 メロンは自分より小さい人を指さした。やはり嫌な予感は的中していた。


 俺は焦って「そんなの無理だよな」とオータムに同意を求めた。オータムは少し考えた後、「その方法しか情報を得られないか。……もう少し観察しよう」と答えを先延さきのばしにした。


 しばらく作業している様子を見ていると人によって防護服の首元につけられた首輪の大きさによって、監視している人数や監視している人の警戒感が全く違っていた。


 太い大きな首輪を付けられている人達のグループには数人で見回りをしており重労働じゅうろうどうをしているが、細い首輪を付けたグループは軽い労働や手薄な監視をしているように見えた。


 メロンが狙った小さい人は細い首輪を付けていた。それを見たオータムは少し考えた後、いけるかもしれないと頷いた。


「相手は人間だから、どうにかなるさ。作戦を練るから少しそこにいてくれ。周りを見てくるよ」


 俺とメロンを残して周りの状況を見に行った。その間、俺は持ってきた爆竹を使えばどうにかなるのではないだろうかと思い、ポケットから取り出した爆竹ばくちくを見ていた。


 メロンが俺の方を見て「だめだよ」と首を横に振った後、俺の背中を強く叩いた。強く叩かれたが、緊張の為かあまり痛みを感じなかった。



「びびらないのかよ。あいかわらず度胸あるよな」

 銃で撃たれていた白い防護服が頭をよぎっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る