第11話 〇?②

 建物内に大音量のアナウンスが流れた。すぐさま防護服ぼうごふくの集団は作業をやめ、部屋から出ていく。


 横を見ると、メロンの目は天井を見るかのように上を向き、脳内の記憶きおくを整理し、思い出しているようだった。


 ここに着くまでの順路に食堂があったことを思い出して、食堂に向かうメロンの右手をつかんで、必死に静止させた。


「どうなっているんだ? 工場は閉鎖へいさしていたんじゃなかったのかよ?」


 当然、俺は疑問に思っていた。オータムも静かに相槌あいづちを打った後、「行くしかないか」と半分諦はんぶんあきらめにも似たため息とともに言葉が出てきた。

 メロンはなぜかうれしそうにしていた。


 俺はもう一度、1階をのぞきこむと白い防護服の人が黒い防護服の人に銃で撃たれるのを見た。あまり驚きの光景に思わず目を伏せてしまった。


 白い防護服が赤くなっていく。当たり前だが、中に入っているのは、人間だと確信した。


 横にいるメロンに伝えようとしたが、やめた。動揺どうようさせても良いことはないと判断したからだ。



 食堂は1階にあり、中の様子は食堂入り口の小窓からのぞき込むことができる。中にいる人達は防護服を脱ぐことなく、席順がきまっているのだろうか、スムーズに席についた。そして、口のあたりだけを開けた。


「異様な光景だぜ。気味が悪いな! あれが食事なのかよ?」


 防護服の人の前に置いている大きなボールのような器にストローだけがはえており、それを吸っているようだ。


 防護服を着た数十人ほどの恐らく人間は、一斉に席に座り、ストローを通じて流動食を食べているようだ。固形物はあのジュースで使うストローで入るはずがない。


 現実世界とは思えない光景が目の前にはあった。さすがのメロンも口をぽかんと開けていた。よく防護服を見ると、首に何かをまかれており、それは赤く点滅していた。



【食事の時間が終了しました。皆さん元の場所に戻ってください】

 


 アナウンスに従うように、人々は静かに席を立ち、こちらに向かってくる。俺たちは急いで先程いた2階に移動した。



「どういうこと。昔のお金が作られているって事? 何に使うのよ?」

「謎だ。わざわざ人を立ち入られないようにして、何がしたいんだい?」

「しかも防護服を着た人が大勢いたぜ。あの人達はなんだったんだよ。あれがオズワルトか?」



 3人ともが質問を出し合い、誰も質問に対しての回答をしないまま、時間だけが過ぎた。

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