シロヤマの島

第39話 白くて寒い島に到着

 そんなわけで三日間の船旅が終わって、シロヤマの島に到着。船から降りて、地図を見よう。縦に細長い島って感じだな。この大きい山は島の中央にあると。てか。どこも雪が積もってるな。靴を雪用に変えておいて正解だったぜ。息が白い。この空だ。もう夜だろうし、どこか宿で泊ろう。灯りがあるとこに行けば問題ないはずだよな。


「……」


 で。町に行ってみたわけだけど、この季節だと人が少ない。困ったな。情報収集がしづらい。宿と普通の店との見分けが基本付かないのも問題だな。どうするか。地道に確認するしかねえんだろうな。


「あ」


 って考えてたら普通に宿っぽい言葉があった。紙と木で出来た灯りに書いてあるしな。「宿泊」って。よーし。開けるか。


「おう。いらっしゃい」


 中はやっぱり明るいし、暖かい。棒をくわえている、厳ついおじさんが言ってくれたのも大きいとは思う。船から降りて、ろくに人と接してなかったからな。


「そのナリだとあれか。大陸から来たのか。珍しいな」


 ヒューロのコートを着てるし、顔とかも全然違うからそうなるよな。


「ここで泊るつもりか」

「はい。出来ますか」

「ああ。この時期だと空きが多いからな。余裕だ」


 良かった。とりあえず寒さで凍えることなく寝られる。


「おーい。カリン。急遽、お客さんに鍋料理を出してくれ。ああ。新しい客が来た」


 おじさん、台所に入ったな。カリンって人が作ってるのか。あ。よく見たら、テーブルっぽい席がいくつもあるし、ここで宿泊客が食べるんだな。


「しばらくしたら来るから待ってろ」


 温かい茶だ。いただこう。ああ。身体に染みる。外が寒かったから余計に。


「こんなところまで来るとは思わなかったよ。なんでだ」


 大陸出身でもここまで来る人は滅多にいないってことか。いてもシルバーヴォルクの夫婦とか少数だろうしな。


「友人が星天諸島について教えてくれたので興味を持ったから……ですかね」

「ほほお。友人か。名は」

「ええ。術師のマーリン」


 目、大きく開いたな。そんでぽろっと棒を口から落としたな。


「まありん。伝説のお方の名と同じだな」

「伝説ですか」


 マーリン、お前何したんだ。いや悪いことをするような奴じゃないってのは理解してる。超越した魔術の力でなんやかんやしたんだろうなってのも予想はできる。けどよ。伝説って。

いやまあ。俺の知ってるマーリンと目の前の男が知るまありん、同じとも限らねえしな。発音が訛ってるから余計に。


「ああ。見た目は金髪赤目の長耳族の若々しい女性だそうだぜ。天変地異を引き起こせる超越者とも。上の世界から遣わした者とも。会ったことはねえけど、話を聞いてる限り、かなりの別嬪さんだと聞いてる」


 多分同じなんだろうなと思う。言い過ぎじゃねとか。誇張し過ぎじゃねとか。そういう気持ちはあるけど、準備と時間があったら、ヤバイことを平然とこなせるからな。ヒューロ王国の歴史でもあり得ないっていう、とんでも魔術師だしな。


「お前さんの知るまありんは」

「重なってはいますね。ただ互いの知る者が同じ……とも限りませんけど」

「そうか。まあ。そもそもまありんが何処から来たのかまでは知らんしな。お前さんはどっからだ」

「ヒューロ王国です。グスター大陸の西にある島から来ました」


 時が悪かったな。おじさんが茶を噴いた。汚ねえ。


「げ。すまん。ついやっちまった」


 ふきふきと拭いたな。こっちは気にしてねえんだけどな。そういう反応するの、慣れてきたし。


「そんな遠くから来てるとは思わなかった。ここはデカいけど、辺鄙なとこだから、娯楽というものはねえぜ。それでもいいってなら、堪能すればいいさ」


 娯楽とかは気にしない。見るもの。感じるもの。全部がヒューロにないしな。出来る限り、色々と手記に書いて、故郷に帰ろう。

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