第34話 山奥の小屋でお話を。
次の日、天帝様が言ってた山奥のオウシュウに行ってみることにした。数時間かかったけど、無事に到着した。町に比べりゃ静かだな。小鳥のさえずりしか聞こえねえ。入り口に地図があるわけだけど。建物多い。そんで面積がやたらと広い。そんなに複雑じゃねえから多分問題なく建物のとこまで行けると。
「あっという間に着いたな」
歩いてみたら、思ったよりも時間がかからなかった。感覚ズレ始めてるかもしれねえ。敷地の中は賑わってるな。岩で出来た灯りを綺麗にしている最中か。あっちは説教してるくさいな。そんで切り開いたって感じはしない。大木の手入れも凄いな。あんな太いのがいくつもある。
「おー珍しいな。大陸からの旅人が来るとは」
主っぽいな。この女性。多分恰好からして宗教絡みだろうな。確かオボウサンって奴の。てか。そんなに旅人が来る場所じゃねえのか。
「おばちゃん。ちゃうって。この間来たやろ」
そう思ったら違ってたよ! 小さい角を持ってる鬼の子供、箒を引きずって急いで修正しに来た感満載だ。
「あ、そやったそやった」
良かった。忘れてはいなかったっぽい。
「確かジンドリガッセンのシルボルやな」
シルバーヴォルクの略だよな。間違いなく。
「シルバーヴォルクの人、来てたんですか」
「おう。よう発音出来るな。私には無理や」
なんか2人とも感心しちゃってるんだけど。
「大陸でも西寄りですからね。だからか発音しやすいのかもしれません」
「なるほど。場所によりけりっちゅーわけか。ところで暇やったりする?」
いきなりだな。
「暇ですが」
「ちょいと付き合ってくれ」
で。女性に付いて行った。森の奥ってわけじゃない。ちょっと離れたところの小道にある小屋。ガラガラと開けて、お邪魔しますって感じで入ったけど……よく分からないとこだな。畳の部屋なのは理解してる。ど真ん中に火とやかん。座布団2つ。靴を脱いで上がって。
「座ってくれ」
指示に従って、座布団のとこに座った。女性の人も座って、作業し始めたな。お湯を入れてお茶を作ったのは理解したけど、シャカシャカ混ぜるのは何だろう。てか。これ明らかに貴族専用のものなんじゃ。俺には分かる。
「固くする必要はないで」
「ああ。はい。いただきます」
暖かい。そんで色が黄緑色の濃い感じだ。口に入れ……にっが。お茶ってここまで苦く出来るもんだったっけ。
「あっはっは。前のお客さんもそうやった。食べながらどうぞ」
さっと出してくれた。小さい皿の上に薄い紙。その上に丸い茶色の菓子だな。薄い木の板で食えってことか。あ。普通に甘い。なるほど。そりゃ食べながらって言うよな。
「ちょっとした昔話をしようかね」
唐突だな。
「昔もオボウサンがいたんよ。真面目に修行をやって。民のためにやって。まあ模範的やったね。当時にしちゃ」
何かヤな予感。
「え」
「あの時は物騒な物を持って戦ったり、酒呑んだりしてる輩もおったからね。まあそんな話は放っておいて」
さらっととんでもないこと言いやがったぞ。てか。放置するのかよ。
「とある夜。ある者たちが忍び込んできたんや。まだ子供の鬼族。けど悪知恵が働く奴やったという話やで」
悪戯しに来たのか?
「泥棒目的で入って来たらしいわ。ここには色々な物が保管されとるからな。それ目的やろ」
俺の心、読んでねえか?
「で。まあここのオボウサンも流石に気付く。こらーって怒って、全員捕まえて、尻をぺんぺん叩いた。まあオボウサンやからな。罰としてずっとここで働くというものを下した。因みにその子孫は今もここで働いとるで」
「それ本当ですか?」
「さあ」
おい。この様子じゃ嘘臭いだろ。いいのか。こういうとこで働いてる人って、そういうのやったらアウトだろ。
「あれ以降、資料がどっかに行ってしもうたからな。どれが本当かなんて判別しようがないわ」
星降る夜。マジで色々影響があるんだな。納得する。
「それはしょうがないですね」
「せやろ。流石にこれやとつまらんか。あ。そうや。ジュウニシシについて語ろうか。こっちの方が多分興味あるやろ」
ジュウニシシ。どういう意味だろう。とりあえずこの人の話を聞こう。
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