第35話 十二志士のお話 前半
どこに入れてたのか分からねえけど巻物出してきたな。前に出して。動物が鎧被ってるけど……どういうことだ。
「十二の獣の戦士。それがジュウニシシさ。戦が頻繁に起き、天下統一の争いを繰り広げられていた列島が舞台となる」
左から右へ行く事で話が進んで行く形か。列島。つまりは星降る夜よりも前の時代だな。
「武人達を鍛え上げ、統一の道に至る。その中で異端者がおった。やり方が新しい時代のものだっただけではなかった。外道だった」
いや。俺はやらねえけど、戦争ってそんなものじゃね?
「まあ戦だから仕方ない部分はあるがな」
普通に読まれてた。
「功績がすさまじかった。その一方で弱き者をいたぶって遊んでいた。体罰を行い」
女性が指してるところを見る。絵だからまだマシだけど、痛々しいな。棒でバンバン叩いてるよな。今気づいた。全部動物の絵だ。これってありか?
「空想の物語だからな。そういうものさ」
女性が笑う。えー……そんなもんでいいのか?
「あとは食物を強奪したり。ギリギリまで働かせたり。強い者が上に立ち、弱い者がボロボロになるまで働く。歪な形だが豊かな国だった。そして戦が上手いこともあってか、領土を広げていった」
本当に広げているような感じだ。人っぽいとこに真っ黒く塗って、脅威を表現してるわけだよな。多分。住民っぽいの怯えてるわけだし。
「そいつは異名として魔王と名付けられた。で。こっからだね。魔王は列島を統一するだけではなく、世界も侵略しようともくろんでいた。こんな奴が外に出したらどうなる。それこそこの世の終わりだ。そう思った虐げられている人々は優しくて強い戦士を求めていた」
すぐに分かった。だから言ってみる。
「それがジュウニシシ」
女性が嬉しそうに笑う。
「そういうことだ。だが戦士は本来国のために戦う者。普段はそう簡単に結成するなんてことはなかったはずだった」
「それでも結成した」
「ああ。とはいえ最初から十二の戦士が結成していたわけではない。牛の戦士。ネの戦士。同郷という奴でな。好敵手という関係だった。力で戦う者と知恵で戦う者。とある機会があったことで共に手を組んだ」
ネは……ネズミなんだ。小さいな。そんで牛の角っぽくて大柄な男が牛の戦士。手を組んで戦っているな。
「魔王の配下の一人。マイラと呼ばれる鞭使いの戦士だ。かなり厄介でな。まあお前さんの方が理解出来ると思うが」
えーっと。仮面を被ってるおじさんの手元に鞭。長いのをコントロールして、痛めていくスタイルってとこか。間合いがバカ広いし、やり方次第で攻撃と防御が出来る。正直俺はやりたくねえ。
「当初は牛の戦士だけが戦っていた。だが力で倒せるものではなかった。その時だった。ネの戦士が駆けつけてきた。従者の呼びかけに応じたのだよ。好敵手であるお前が死んでしまったら、次に誰と切磋琢磨すればよいのだと。互いに認めているからこそ、応じた。そっからがまあ凄いと言う話さ。司令官としてネの戦士が入って来たんだからね」
おー撃破してる。なんか鞭でグルグル巻きにされてるように思えるのは……気のせいか?
「猿の戦士。猪の戦士。犬の戦士。彼らは大災害で力を合わせ、民を救った経緯がある」
船に乗って人を助ける絵がそれなのか。
「きっかけがあったからこそ、手を組むようになった。だが十二の戦士が集まるまで数年はかかる」
三人程度で組んで行動してる絵がちらほらとあるな。でも物理的に遠くて、そう簡単に組めませんって……現実味あるな。情報伝達の速度を考えるとかなりかかることぐらい分かるし。語ってる女性、楽しそうにしてるな。
「こっから面白くなるからよーく聞くんだね」
むしろこっから本番だった! マジか!
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