第10話 ちょっと豪華な宿の食事

 店がたくさんあるとこで麺系もらって、ちょっと歩いて入れそうな宿に到着。木で出来た建物ばかり並んでて、違いはさっぱり分からねえけど、文字とか暖簾とかでどうにか。


「こんな暑い時期によくもまあ」

「でも秋じゃないし」


 2人の女性の台詞からして、本格的に混む時期じゃないっぽいな。人が少ないらしい。


「秋に何かあるのですか?」


 秋ぐらいに神様が集合して宴会するとか、そんな感じだよな。念のため聞くけど。


「そうそう。神様がこちらに来て、盛大に宴会を行うのさ」

「色んなとこから人がわんさか来るの」


 本当に秋になるとたくさんの人が来るのか。のんびりするという意味じゃ、タイミング良かったのかもしれねえ。暑いけど。


「良かったら氷菓子でも食うかね」


 それは助かる。日差しが強い中、歩いてきたし、冷たいものが欲しかった。もらっとこう。


「はい。いただきます」

「それじゃ用意するからね」


 パッと行って、パッと帰って来たな。すげえこじゃれた感じのガラスの器だな。彫ってるし。やっぱ氷菓子だから触ると冷たい。見た目は黄色だな。小さいスプーンを使って食おう。これオレンジと似てるけど……後から苦味があるな。でもそんなに残るってわけじゃねえ。甘いっちゃ甘いけど、これぺろりと平らげちゃう奴だ。てかもうなくなったしな。


「どうだい? 味は。初めて作った奴だからさ。感想欲しいんだ」


 黒髪の女性、ひょっこりと顔出してきたな。てか……初めて作ったのか。


「美味しかったですよ。ごちそうさまでした」


 めっちゃ嬉しそうだな!


「そう? いやーやっぱミウチじゃない人からそう言われると嬉しいわー」


 既に他の人も食ってたのか。知ってる人だと傷つけないように言うだろうしな。俺の周りだと容赦ねえコメント出す人ばっかだけど。


「お礼に良い部屋、案内するから」


 そこまでしなくても……もういねえし! ただ食べただけなんだけど。ピークじゃねえから、人がそこまで来なくてとか、そんな感じなんだろうな。


「1階に小さいお風呂があるから、そこで疲れを取ってね」


 で。1人部屋じゃねえだろって感じのとこに案内された。寝る部屋と食べるとこが分かれてる。大きさが全てじゃねえのは分かってはいるけど……こういうの知らねえからな。つか。こんな暑いのに風呂入るのか? ちょっと無理だな。綺麗にする程度にしておこう。まあそんな感じで1階の小さい風呂があるとこで洗って、のんびりとメモしてたのを見てたら夕方になってた。叩く音聞こえる。


「入ってもよろしいでしょうか」


 この感じ……昼に出迎えてくれた女性の人じゃねえな。おばちゃんって感じしねえ。俺と同じぐらいの歳だ。多分。


「はい。どうぞ」


 やっぱそうだった。黒髪を纏めてる俺と同じぐらいの女性だ。きっちりと着てるけど、まくってるな。犬の耳みたいなのと普通の耳どっちもあるけど……これどっちで聞いてんだろうな?


「食事を持ってきました」


 低いテーブルがあるとこで食う感じだな。うわーめっちゃ置くな。出来立てだから湯気出てる。でっか。赤い魚を焼いた奴がある。ヒューロじゃ見かけないタイプだなこれ。魚の見た目が。いや俺の知識不足なだけかもしれねえけどさ。


「楽しんでくださいませ」


 色々と聞きたかったんだけど、行っちゃった。立って戸締りするんじゃなくて、座ったままやるのって変わってる気がする。さあて。食うか。


「恵みの神よ。今日も与えてくださってありがとうございます」


 とりあえずこの赤くてデカい魚からだな。箸使い始めてからだいぶ経つけど……これボロボロ崩れる奴だよな。上手く取れるか不安だ。よし。どうにか口に入れた。あっさりめだ。塩だけなのか。ちまちま食うスタンスだけど……大勢で食ってたらあっという間に無くなる奴だ。分かる。


 他のも食おう。知ってる野菜と知らねえ野菜があるな。オレンジのあれは人参だろ。いやそれしか分からねえ。穴が開いてるのとか、黒っぽい細長いのとか。あーでも煮たんだろうなってのは分かる。ほぼ勘だけど。これ醤油も使ってる。あとは分からねえ。でも柔らかくて美味い。


 次に行こう。味噌汁だな。確かカオルさんが言うには大豆が材料なんだよな。あとちょっと辛めのはずなんだけど、ここの味噌汁にはないっぽいな。赤い唐辛子がない。辛くないだけでホッとす……骨? あ。これ魚だ。どういう作り方してんだろうな。スープと似た感じか? 汁系だし。


 そんでこれ揚げ物だよな。緑の葉っぱ。エビ。紫の野菜。あと穴が開いてる何か。塩を付けて食えって感じか。やっぱ揚げ物はいい。美味いのすぐ分かる。あとこういうのってビールとか酒が欲しくなる。ないのがちょっと残念だな。


「はー……」


 いやー食った食った。これであとは寝るだけだ。明日は登ってあそこまで行くつもりだからな。

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