第3話⁂賽の河原!⁂
「アアアアアア~!こんな所に辿り着いた。これが賽の河原、まさに地獄の入り口………」
おどろおどろしい雰囲気のどんよりとした、薄暗い曇り空で、小雨が降っている。
さらにもやが掛かり視界がさえぎられ、その河原はより一層地獄の様相を呈している。
風車がカラカラと回り荒々しい岩場の合間から、硫黄の臭いが噴き出す様子は、まさに「地獄」である。
よくよく見ると奥の池は真っ赤に血に染まり、あれは 血の池地獄なのだろうか、荒涼とした無機質な空間が広がる『地獄』
嗚呼~!何とも不気味な光景!
子供たちは、こんな所で一体何をしているのかって?
10歳にも満たない幼子達が、このどんよりとした賽の河原で、涙にくれ何かつぶやきながら、延々と石積みをしている。
そして誰もかれも青白い、それはまるで死人のような暗い無表情な顔で、只延々と怨念めいた歌を口ずさんでいる。
『ひとつ積んでは母のため ふたつ積んでは父のため
歌うその声哀れかし』
◇◇◇◇◇◇◇◇
哀れにも、親より先に死んでしまった1~4歳の10歳にも満たない幼子が、賽の河原に集まって、指から血を流し、体を血まみれにしながら、その場に崩れ、突っ伏して泣き叫び、只々涙にくれながら延々と石を運び石を積んでいる。
「お父ちゃーん、お母ちゃーん、助けてーどうして助けてくれないのー」
「お父ちゃんに会いたい!お母ちゃんに会いたい!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
日の出から日の入りまでの間に大きな石を運んできて延々と塚を築いている。
日の入りから日の出までの間に小さな石を拾って延々と塔を築いている。
1つ積み上げては父の為
2つ積み上げては母の為
生まれ故郷の兄弟の為
すると……なんとも恐ろしい頭からにょっきり角が生え、グサリと牙の生えた口をした地獄の鬼が、ギラギラした目で子供達を睨みつけて「成仏を願え!」と叱り付けている。
「なんだ————!これは!お前達が積んだ塔は歪んでいてみっともないだろう。これではご利益が無い。さっさとこれを積み直せ!」
恐ろしい姿で金棒を振り回して、厳しくとがめながら粉々に、塔を全て壊しまわるので、可哀想に幼子は倒れこんで泣き叫んでいる。
何とも哀れや可哀想に…………。
「地蔵和讃(じぞうわさん)」とは?
【地蔵菩薩の威徳を表現した(歌のようなもの)その中に「賽の河原地蔵和讃(さいのかわらじぞうわさん)」というものがある。】
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賽の河原地蔵和讃
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これはこの世のことならず
死出の山路の裾野なる
賽の河原のものがたり
この世に生まれ甲斐もなく
親に先立つありさまは
諸事の哀れをとどめたり
二つ三つや六つや七つ
十にもたらぬ幼児(おさなご)が
賽の河原に集まりて
苦しみ受くるぞ悲しけれ
娑婆(しゃば)とちがいて幼児が
雨露しのぐ住家さえ
なければ涙の絶え間なし
河原に明け暮れ野宿して
西に向いて父恋し
東を見ては母恋し
恋し恋しと泣く声は
この世の声とはこと変わり
悲しき骨身を透(とお)すなり
ここに集まる幼児は
小石小石を持ち運び
これにて回向(えこう)の塔を積む
手足石にて擦れただれ
指より出ずる血の滴(しずく)
身体を朱(あけ)に染めなして
一重積んでは幼児が
紅葉(もみじ)のような手を合わせ
父上菩提(ぼだい)と伏し拝む
二重積んでは手を合わし
母上菩提回向する
三重積んでは古里(ふるさと)に
残る兄弟わがためと
礼拝回向ぞしおらしや
昼はおのおの遊べども
日も入相(いりあい)のそのころに
冥途(めいど)の鬼があらわれて
幼きものの傍により
やれ汝らなにをする
娑婆と思うて甘えるな
ここは冥途の旅なるぞや
娑婆に残りし父母は
今日七日(なのか)や二七日(ふたなのか)
四十九日(しじゅうくにち)や百箇日
追善供養のその暇に
ただ明け暮れに汝らの
形見に残せし手遊びや
太鼓人形かざぐるま
着物を見ては泣き嘆き
達者な子どもを見るにつけ
なぜにわが子は死んだかと
酷(むご)やあわれや不憫やと
親の嘆きは汝らの
責苦を受くる種となり
かならず我を恨むなと
言いつつ金棒振り上げて
積んだる塔を押し崩し
汝らが積むこの塔は
歪(ゆがみ)がちにて見苦しし
かくては功徳になりがたし
とくとくこれを積み直し
成仏願えと責めかける
やれ恐ろしやと幼児は
南や北やにしひがし
こけつまろびつ逃げ回る
なおも獄卒金棒を
振りかざしつつ無慙(むざん)にも
あまたの幼児にらみつけ
すでに打たんとする陰に
幼児その場に手を合わせ
熱き涙を流しつつ
ゆるし給(たま)えと伏し拝む
おりしも西の谷間より
能化(のうけ)の地獄大菩薩
動(ゆる)ぎ出でさせ給いつつ
幼きものの傍により
なにを嘆くか嬰児(みどりご)よ
汝らいのち短くて
冥途の旅に来たるなり
娑婆と冥途は程遠し
いつまで親を慕うとも
娑婆の親には会えぬぞよ
今日よりのちは我をこそ
冥途の親と思うべし
幼きものを御衣(みころも)の
袖(そで)や袂(たもと)にだき入れて
憐れの給うぞありがたや
いまだに歩まぬ嬰児を
錫杖(しゃくじょう)の柄にとりつかせ
忍辱(にんにく)慈悲の御肌(みはだえ)に
泣く幼児を抱きあげ
助け給うぞありがたや
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【平安時代最初に念仏を広めたとされる『空也上人』が書いたと言われている】
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