第34話⁂徐々に紐解かれる真実⁈⁂

  美月は、母美穂が留守の時にやって来る真由美が、肌に合わない。

 どこか話し辛い居心地の悪さ、更には食べ物は合わないし、我慢の限界の美月。


  そこで美月は、父の学に言った。

「ママがいない時は、真由美おばさんよりも、お手伝いのマキさんにして欲しい」

 学は仕方なく真由美に打ち明けた。


 すると……打ち明けた2日後に事件が起きた。


 以前からしこりのあった真由美と美月の2人なのだが…………。


{もう兄にはお嫁さんと子供も居て、こんなこぶ付きの出戻りの私には、離婚して家に帰ってはみたが居場所が無い。それでも……最後の切り札「学と美穂が兄妹らしい」この事を学に打ち明けて美穂を追い出す事……だって兄妹で夫婦生活は送れないでしょう?折角、居場所のない私が、理想の男性学と結婚出来る寸前まで近づいたのに、この美月が私を快く思っていない……更には大切な人、学に、もう来なくていいとまで言われてしまった……折角学との時間が持てて、幸せに浸っていたのに、この美月が気に食わない!}


 頭に来た真由美は「もうどうにでもなれ!」

 やけくそになり、憎たらしいこのガキを懲らしめてやろうと思い、2階の美月の部屋 の端っこにある階段付近にバナナの皮を塗り付け、バナナの皮を落としておいた。


 それをうっかり踏み付け、足を踏み外して豪邸の階段から踊り場まで落ちてしまった美月は、踊り場に悠然と立つ南部鉄器の勇馬の置物に激突して、生死の境を彷徨っている。

 そして…真由美は罰が当たのか、不慮に事故であっけなくこの世を去った。


 一方の激突の衝撃で昏睡状態になった美月は、賽の河原と極楽浄土と地獄を体現する事になったのだが、なんとインフルエンザが重症化して危篤状態で入院中の、母美穂らしき女性と偶然にも極楽浄土で会った。


 母美穂は、何とも美しい天女となって悠々と天空を浮遊しているではないか?


 母美穂もインフルエンザが重症化して肺炎を併発、昏睡状態で死の淵を彷徨って居るのだが、とうとう三途の川を渡って極楽浄土を体現している。

 だから………母美穂と美月は、同じ極楽浄土で出会い、極楽浄土を体現出来たのだ。


『父の学と母の美穂が実の兄妹なのか?』という事はもう少し後で判明する。


 ◇◇◇◇◇◇◇

 👼美月は、昏睡状態の時に極楽浄土や賽の河原、地獄、その他にも色んな幻覚?夢?を見ていた。

 美月がいつも母の美穂に聞いていた、父学との馴れ初め。


 ★幻覚?夢?の中での出来事。

 ある日美月は、不思議な体験をした。

 あれは確か、美月がふっと新潟県庁所在地新潟市の新潟駅前に、用が有って出掛けた時だ。


 その時、一際目を引く美しい18歳~20歳ぐらいの女性が横切った。


「エエエエエエ―――ッ!」


 美月は、一瞬余りの衝撃で心臓が止まるかと思うほど驚いた。

 それはどういう事かと言うと、余りにも自分に生き写しの、また生前の母美穂を彷彿とさせるその姿に驚き、只々その姿を目で追っている美月だった。


 本当は真由美が死んだのだが、事故のせいもあり幻覚が現れて混濁状態の美月は、母の美穂が死んでもいないのに、幼くして母美穂が死んだと思っている。


 でもそれには、母の恐ろしい裏の顔が隠されているので、浄化する意味でも幻覚として現れたのかも知れない。


 {嗚呼!そうだ!唯一無二の大切な、母かも知れない女性に折角会うことが出来たのに、これを逃したらもう二度と会うことが出来ない。後悔しない為にも後を付けよう}


 幼くして別れた、今尚夢にまで見るあの恋しい母を、たとえそれが全くの赤の他人だとしても、このチャンスを逃したらもう二度とこんなチャンスは巡ってこないと思い、必死で跡を追ったのだ。


 すると……新潟駅南口近くの、お洒落なヨーロピアン風街路灯が立ち並ぶ一角に、どこか懐かしい見覚えのある若い男性を発見?

 と思いきや、父とは全くの別の男性が、街路灯の前に立っているではないか………。

「夢が入れ替わっているキャ————————ッ!コッ恐い!何なの~!これは」


 その時自分に生き写しの、若かりし頃の母を彷彿とさせるその女性が、若かりし頃の父とは全くの別の男性に笑顔で話し掛けている。


 やがて2人は、さも嬉しそうにお洒落な街路灯が立ち並ぶ街並みを歩き出した。


 CDショップから流れる美しい旋律に乗せられ遠巻きに、付け狙っていると2人は、駅前のターミナル付近の駐車場から、あの当時若者に人気のトヨタ・スープラ(A80)に乗って走り出した。



 すると……2人を乗せた車は、1時間チョットで若いカップルに人気のスポット、恋人岬に到着した。


 日本海フィッシャーマンズケープの恋人岬は、カモメが空を舞い、青く澄んだ空と日本海に囲まれた断崖の岬。


 佐渡弥彦米山国定公園のなかでも、福浦海岸を一望できる景勝地で、晴れた日には遠く佐渡を望み、日本海に沈む夕日の中で2人は愛の南京錠を掛けて、永遠の愛を誓った。


 ここに設置されている柵にふたりでカギをつけると、将来幸せに結ばれるといわれている恋愛成就のスポット。

「ああああ!アアアアアアアア!酷い!パパが居ながら他の男性とも、永遠の愛を誓っていたのね!」


 すると……この2人の行動を陰から付け狙っている人影が……?

 鋭い恨みのこもった瞳。

 一体誰なのか?


 それは………それは………父の学だった。



 実は……美穂には結婚前から付き合っていた男性がいた。


 それでも母の美穂は学を選んで、幸せな家庭を築いていたが、独身時代から付き合っていた男と切れていなかったのだ。


 こうしてその男と離れることが出来ずに、家を出て父親の学と別居生活を送っていた。

 それでも…美穂を愛している学は、男の所に行ってしまった美穂を必死に連れ戻しに行っていた。


 だが、頑としてとして戻る気持ちが無いのでもうどうにもならない。

 帰って来る当てのない美穂の事で、美月にいつまでも噓を付き通せないと思い、諦めさせるためにも不慮の事故で亡くなったと、美月に言い聞かせていた。


 要するに、母は死んだのではなく、男を作って家を出ていたのだ。

 そして…若い男と一緒になるつもりだったのだが、金銭的に困窮してしまい父学の元に戻って来てしまった美穂。



 そして、黒い影の正体それは、母に捨てられた男が美穂を追いかけて家にやって来て、暴れ出し刃物をふりかざして母を殺して、自分も一緒に死のうとして大惨事になってしまったからだ。


「フン!あなたみたいな甲斐性無し、うんざりよ!サヨウナラ!」


「よくも………よくも…………俺に………あんなに甘い言葉を囁いておきながら、お金が底を付けばアッサリおさらばかよ………それでも…美穂愛している。一緒に死んでくれ!」

「誰があなたなんかと。帰って!カエッテ!帰ってよ——————ッ!」


「何を————ッ!許せない!死ね—————ッ!」


 これが大きな黒い大きな影の正体だったのだ。


 あの時は美穂が刺され、家の中が血の海と化し酷い惨劇となった。

 あの時の血の海が、黒い大きな影となって美月の昏睡状態の夢の中に幻覚として現れていたのだ。


 いよいよ全てが暴かれる時がやって来た。

 そこには想像を絶する真実が…………。
























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