第32話⁂真由美の死の経緯!⁂

 若かりし頃の学の母親洋子は、発展家の友達に誘われてディスコに出掛けていた。

 週末の土曜日サタデーナイトに『ディスコ・キャメル』で踊る事が唯一の楽しみ。


 最初はグル-プ交際だったアリと洋子だったのだが、ある日突然アリに誘われて2人きりで出掛けるようになった。

 こうして、学の母洋子はやがて妊娠。


 要するに学と美穂は異母兄妹という事になる。


 この事を学に暴露して、学と美穂を何としても引き裂こうと企てる真由美。

 そして…美穂を追い出して今度こそ、学を私のものに…………。



 例の一件で美穂とは犬猿の仲になってしまい、学も最近はよそよそしいので、中々声を掛けるチャンスを掴めないでいる真由美なのだが、ある日とうとう話す機会に恵まれた。


 それは学が朝の出勤前に、よく立ち寄る喫茶店を思い出したのだ。

 偶然を装い早速待ち伏せして、学を確認して喫茶店に入った真由美は、またもや偶然を装い。

「あぁ~?学じゃ~無いの?」


「ああ!偶然だね」


 こうして学のテ-ブル席の向かい側に図々しく座った真由美。

 2人の間には不穏な空気が流れたが、その時とうとう真由美が突然とんでもない話しを切り出した。


「あのね!学、私が話す事………近所のよしみで話すのだけれども………怒らないで聞いてくれる?あのさ………あの~?学と美穂が………ひょっとして……ひょっとして………兄妹かも知れないって事、学知っていた」


「いや~?真由美、何言っているんだい?バカな事をワッハッハー」


「いや?本当の話よ!」


「また………一体何の根拠があってそんな出鱈目を言うんだい?」


「学のお母さんと美穂のお父さんが、まだ独身時代に付き合っていたって真実を、私は確たる人物から聞いているの。絶対に真実だから!」


 学の顔が見る見る真っ青になり、ショックの余り放心状態のまま一気に外に飛び出してしまった学。

 真由美も会計を済ませて一気に外に飛び出し学の後を追った。


 すると……その時、向かい側に学を発見、なんとしても追い付きたかった真由美は車の往来が激しい事にも気付く余裕がなく、一気に飛び出してしまった。


 キキ――――ッ!キ――――ッ!

 キキ————————ッ!キキキ———ボッカ――ン〷///グッシャ———ン〷//ドッス——ン/〷/〷ドカン


 真由美は即死!


{エエエエ————————ッ!これってどういう事?美穂が死んだ筈なのに一体どうなってるの~?}


 何故真由美が死んだの?

 益々訳が分らなくなって来た?



 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 実はこんな経緯が有った。


 美穂はインフルエンザが悪化して肺炎を併発してしまった為、棟違いの立花医院の病棟に6日間入院した。


 近所という事も有り真由美は、竹馬の友である学の為に、懸命に学と美月をお世話した。

 お陰で、すっかり立花家の信頼を勝ち得た真由美は、美穂とは表向きは大の仲良しとなった。


 だが、姉の最期の言葉が今尚、頭から離れない真由美はとうとう積もりに積もった気持ちを一気に吐き出した。


 姉が学に恋をしている事は、態度で伝わり、言葉で気付かされ、諦めていたが、残念な事に姉は冠攣縮性狭心症の悪化で亡くなった。

 そこで残念な事に愛する姉も亡くなったので、とうとう溢れる思いを抑えきれなくなった真由美なのだが。


 {それなのに、学と美穂が駆け落ち同然で結婚しただと————————ッ!姉を苦しめて、今度は私を………あの女許せない!}


 そんな時に、美穂がインフルエンザの悪化で入院した。

 真由美は、親切を装って立花家の世話を一手に引き受け、立花家の信頼を勝ち取った。


 こうしてすっかり、この家族の懐に飛び込んだ真由美は、最近は美穂とはどこに行くにも一緒なのだ。

 それだけ信頼を勝ち得たという事だ。


 病院の副院長として忙しい学と、幼稚園に通い出した美月を他所に、旅行に出掛けたり、ショッピングに出掛けたり、ランチをしたり。


 そんなある日、2人は最近巷で評判のイタリアンレストランに出掛けた。

 楽しい会話で盛り上がり一息ついた頃に、真由美が急に美穂に尋ねた。


「あのさ~?姉久美子の事で聞きたいのだけれども………急にこんな事言ったら気分を害すと思うのだけれども……死に際に……姉久美子が言っていた言葉なのだけれども『美穂の裏切り者………あれだけ付き合っていない………ウウウウッくッ苦しい!………と言っておきながら……チャッカリ私を騙して………あぁ~っ息苦しい!………付き合っていたのね。許せない!』こう言って姉は亡くなったの………これどういう事?」


「あ~ら~?久美子そんなこと言っていたの~。知らなかったわ?仕方ないのよ……あの時、久美子と私で、学の彼女を突き止めようとしていたのよ………そんな時に、学に声掛けられて……それで付き合うようになったのよ………元々私と学は両思いだったの。そこで久美子に2人の仲を取り持って貰ったのだけど………両方に『脈が無いから諦めなさい』と言って取り次いでくれなかったの………そんな事情が有ったので………私も学もまた邪魔が入って、2人の関係が壊れるのが何よりも怖かったので………久美子と………距離を置く事にしたのよ。まさか久美子が、そんな風に思っていたなんて?」


「それって、まるで姉が一方的だったみたいじゃないの?姉はいつも言っていたわ。学のお母様がいつも、いつも『久美子ちゃんが学のお嫁さんになってくれたら、こんなに嬉しい事はない』ってね。だから姉も『お母様任せてください』って言っていたみたいよ………そして…『美穂の事を凄く反対していた』とも言っていたわ。美穂、あなたが悪いのよ」



「確かに私達は結婚を反対されていた………でも今は両親と仲が良いから……それから…学はちゃんと久美子に『そんな気はない!あくまでも友達の妹』と伝えてあると言っていたわよ………逆恨みされても?」


「ともかく………美穂さえ2人の間に現れなかったら、姉は学と結ばれて死ぬ事もなかったのよ。あなたのせいで姉が死んだのヨ!」


「真由美あんまりよ。酷すぎる!折角の楽しい食事が台無しよ」



「美穂この際だから話すけど……こんな話……本当は話さないつもりだったのだけど………あのね?美穂、私が話す事………近所のよしみで話すのだけれども………怒らないで聞いてくれる?あのさ………あの~?昔美穂のお父さんと学のお母さんが………付き合っていた事知っている?………だから……その…?学と美穂が………ひょっとして………?ひょっとして………?兄妹かも知れないって事なのよ」


「何を言っているのよ。そんな馬鹿な事有る筈ないでしょう」


「確証が有るのよ!」


「エエエエエエ———————————ッ!」



 美穂はそれとなく学に、{私とあなたが異母兄妹だ}と真由美が言っていた事を話した。

 学もそんな話し、出鱈目だと一括していたのだが、話しが話しだけに冗談話で終わらせる訳にもいかず、念のためにDNA鑑定をしてもらった。


 だが、その張本人美穂の父親アリが、既に亡くなっている事からDNA鑑定の結果が出るまで、1ヶ月以上も掛かっている


 一方の真由美は美穂に全てをぶちまけて、姉の最期の言葉がぼんやりとではあるが理解出来たのだが、姉にも落ち度が有る事が見えて来て{両方の言い分を聞かないと真実は見えてこないものだな~}と思い、怒りも半減して気持ちも吹っ切れていた。


 だが、今度は違う気持ちが真由美を支配する。

 もう前のように学に会えないと思うと、一気に寂しさが押し寄せて来たのだ。


{頭に来たので咄嗟に、美穂に学と美穂は異母兄妹だと言ってしまったが、美穂も私の言った言葉を全く信用していないようで、相変わらず仲良くやっている学と美穂。今度こそ学に話して信用してもらうしかない。第一兄妹で一緒に生活するって、完全にアウトでしょう!近親相姦でしょう。これは絶対に別れるべき!そして今度こそ学を絶対に私のものに!}


 こうしてあの朝、学の行き付けの喫茶店で待ち伏せして、あのような悲惨な事故に遭ってしまった真由美。


 学と美穂は余りにも急な出来事に、真由美の死に動揺を隠せない。

 更には、真由美の言っていた言葉が日に日に美穂の中で不安と共に大きくなり、ついに美穂はそんな事は絶対に無いとは分かっているのだが、学と一緒に生活は出来ないと思い別居に踏み切った。


 それはどういう事かと言うと、一緒に居れば若い学が求めて来るのは必至。

 運が悪い事に、問題の張本人父親のアリは、既に肺癌で他界していたので聞くに聞けず、不安を感じながら長期の里帰りを決行したのだ。


 いよいよ色んな謎が解ける時が近づいてくる。











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