第30話⁂真由美の策略!⁂


 学の母親洋子はお寺の箱入り娘で、そのお寺は、荘厳な由緒正しいお寺らしく人里離れた場所に有る為、洋子は全くの世間知らずで初心な女性だった。


 発展家の友達に誘われて「サタデーナイト」に出掛けて『ディスコ・キャメル』でフィバ―するのが唯一の楽しみ。


 そこに夜な夜な現れる美しい少年?青年?は、この界隈では、余りの美しさとダンステクニックに、若い女性たちの間では、チョットした有名人。


 イラン人のアリは、多数の民族の美しい顔立ちの遺伝子を受け継いだ、何とも端正で美しい美少年。

 辛い仕事のうさはらしの為に夜な夜なやって来るのだ。


 抜群のダンスセンスのアリの事を『ディスコ・キャメル』の王子、プリンス、キングと巷の女性たちは噂で持ちっきりだ。

 そんな魅力的な男に、夢中にならない女性が居ましょうか。


 そんな時に、アリに声を掛けられたのが、学の母親洋子なのだ。

 その時既に縁談話が決まっていた洋子は、友達も一緒だからと安心してあちこちに繰り出し、束の間の時間を楽しんでいた。


 そんな時に、アリに誘われて2人きりで出掛ける事が増えて行った。

 洋子にしてみれば、親の決めた縁談話を断る事も出来ずに、結婚の日にちも決まっていた。


 本当は、幾らお医者様と言えども、ずんぐりとした誠なんか大嫌いなのだ。

 唯一アリとの一時だけが、真実に思えた。


 こうして妊娠、その時既に学の父と結婚話が進んでいて、どうも学はアリの子供ではないかと言う話なのだ。

 

 父親の誠には、似ても似つかないイケメンぶりの学。

 誠は純日本的な顔なのに、一体誰に似たのか?


 それでも…父親の誠も、よくもそんな赤の他人の子供を宿した娘と結婚したものだが、実は誠は幼い頃におたふく風邪に掛かり、無精子症の可能性があると先代の父親に診断されていたのだ。


 その為、何とも幸運な事に渡りに、船とはこの事。

 何処の馬の骨とも分からない子供を貰い受けて、病院の跡継ぎにする位なら良家のお嬢様で、血筋も申し分のない家の子供で、尚且つ片方の血は受け継いでいるのだから、まんざら赤の他人という事でもない。


 それから…学の父誠も、他に好きな女がいるのだ。

 親の反対に遭い結婚出来なかったが、今もその関係は密かに続いている。


 どうせ親が、自分達の虚栄心を満たす為に一方的に決めた縁談話。

 世間体を何よりも重視する、どこに出しても恥ずかしくない、お家柄と上等な身上書のお嬢様。


 両親の体裁と虚栄心を十分に満足させるに足りる、立派なお家柄のお嬢様。

こうして誠は、両親の決めたお嬢様洋子と愛情と言うより、世間体重視の結婚をした。



 この話を知っていた久美子は、一体何処でこんな話を耳にしたのか、

実は……久美子の父親はN市の市長。


 N市役所には市民相談窓口が設置されているのだが、そんなある日、N市でも有数のお寺のお嬢さんであり、〔立花内科・小児科小児科〕にもうすぐ嫁ぐ、誰しもが知っている地元の名士のお嬢様が、市民相談窓口に相談に現れた。


 洋子にして見れば世間知らずの人見知りで内気な女性の為、{こんな内気な私の事等誰も知らないだろう}と思って、こんな公の市民相談窓口だというのに相談にやって来たのだ。


 こんな事を誰に言えましょう。それだけ切羽詰まっての事なのだ。

 {こんな話を両親に打ち明けたら大変な事、結婚の日取りも決まっているのに、他人の子供を妊娠したかも知れない事を、話したら半殺しの目に合う}と思い、この窓口に駆け込んできたのだ。


 久美子の父親でありN市長は、地元の名士であるお嬢様の事で、尚且つ、お隣さんになる人物の事なので、係の親しい関係者からチラリと聞いていたのである。


 当然守秘義務があるので、絶対に口外してはならないのであるが、それでも、これからお付き合いをしなくてはならない大切なご近所さんの事なので、コッソリと妻にだけは打ち明けていた。


 それを、運が悪い事に、こっそり聞いてしまったのが久美子なのだ。

 そして…美穂の父親アリと学の母親洋子が、結婚前に学を身籠り学を出産したらしいという事。

 要するに学と美穂は異母兄妹という事になる。


 これを学に暴露しようと思ったのだ。

 そして…美穂を追い出して今度こそ、学を私の者に…………。












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