第26話⁂母美穂の恋模様!⁂


 学の両親は御家存続の為に、市長のお嬢様久美子ちゃんとの結婚を望んでいる。

 市長の息子と学が親友という事も有り、幼い頃から兄と連れ立って久美子も頻繫に立花家に遊びに来ていた。


 だから彼女と言うにははばかれるが、一緒にいる事の多い学と久美子は高校生の頃から一部の高校生から、公認カップルと思われていた。


 学の気持ちとは裏腹に、一方的に久美子が学に接近していただけの事なのだが。


「学それどういう事?高校時代から付き合っているのに、今更『別れよう』だなんて、あんまりよ。ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


「俺とお前は幼馴染みで、家も近所でお前の兄と俺が同級生だったので、子供の頃から、お前は兄と連れ立ってよく家に遊びに来ていた。そして…何でも話せる仲だった。お前が美穂ちゃんと大の仲良しで、家に連れて来た事が有る……俺は美穂に一瞬で恋をしてしまった。そしてお前に手紙を渡してくれと頼んだ……だがいつまでたっても返事は無かった……後で分かったのだが、お前が美穂に手紙を渡していなかったんだろう?酷いじゃないか?そして……そして、美穂も本当はお前に『学の事好きだから、私の事どう思っているか……?それとなく聞き出してくれない?』と頼まれていたのに両方に『脈が無いから諦めなさい』と言って俺を失恋の痛手から救うふりをして取り入って来た訳だ……酷すぎだろう!」


 こうして地元の名士で新潟県のN市の市長を務める、由緒正しいお家柄のお嬢様で美穂の同級生清水久美子とは、縁が遠のき自然消滅した。


 学にして見れば、やっと煩わしい久美子が付き纏わなくてホッと一息。

 友達の妹だから無下にも出来ず、又親からは久美ちゃんを大切にしなさい。と口が酸っぱく成る程言われていたので、仕方なく相手をしていただけの事。


 高校生の頃から一部の友達から公認カップルと思われていたが、元々恋人同士でも何でも無かった為、あっさりしたものだ。


 だが、それは学の方はそうかもしれないが、親をも巻き込んでやっとの事付き合えた、医大生で知的なイケメンを失った久美子の喪失感は、並々ならぬものが有った。



 ある日の事、久美子は血相を変えて怒り狂ったように、美穂を怒鳴り散らしている。


「美穂、まさかあなた、学と付き合っているんじゃないでしょうね?酷いわ!」


「いいえ。付き合っていません!だって久美子が、学さんと兄が友達だから兄弟の様に仲良くしていると言ったので、あの時私久美子に『私あなたのお友達の学さんの事、気になって居るので、私との間取り持って頂戴!』って頼んだじゃないの。そしたら『学に美穂の事どう思う?って聞いたけど、全く脈無し!』って言ったから泣く泣く諦めたのよ!」


「ああ!そうだったの~?ごめんなさいね…………実は私も学が好きなのよ………でも?振られちゃったのよ………だから………だから?美穂のせいかと思って?」


「どういう事ヨ?学さんは、私なんか好きじゃないんでしょう?どうしてそんな変な事言うの。言ってよ!」


「ああああ!って事は学に他に好きな人が出来たって事ね。早速学の好きな人が誰か突き止めましょうよ」


「ウッフッフッフ~!それ面白いわね」


 2人は早速、学の後を付けて彼女の正体をチェックし始めた。

 そんな時に、後ろから付けて来た憧れの女の子、美穂の事に気付いた学は、反対に今度はこっちが。美穂ちゃんの正体を探りたくなった。


 {最近にわかに、俺の目の前に美穂ちゃんが現れるが、俺が脈無しって事は、俺の友達でも狙って俺を付け回しているのかも知れない?それか…他に彼氏でもいるかも知れない?}と思い物陰に隠れた。


 すると……学が物陰に隠れた途端立ち止まり””キョロキョロ””し出した。


「一体どうなっているんだよ?………そうだ。こんな時こそ勇気を持って話しかけてみよう!」


 そして…勇気を振り絞り美穂に話しかけた学。


「こんにちわ!美穂ちゃん」


 すると……その時、美穂が余りの事に驚き、顔が見る見る真っ赤になりドギマギしている。

 咄嗟に、目の前に憧れの男性が現れて嬉しいのと、緊張で言葉が出ない美穂。


 こうして色々話していく内に、久美子が間を取り持ったフリをして、2人の思いをもみ消していた事が分かった。

 そこで2人は話し合い、久美子から距離を置くことにした。


 この時既に医大生の学と社会人の美穂。

 やっと疑いも晴れて、相思相愛の学と美穂の2人は付き合い出した。

 こうして愛を育んでいった。


 それでは何故、母の美穂が殺害されなくてはならなかったのか?

 そこには恐ろしいカラクリが…………。


 過去の複雑な恋模様の末、やっと辿り着くことが出来た2人は、喜びもひとしお、苦労の末やっと掴んだ幸せ、2人はこの幸せが壊れるのが何より怖いのだ。


 その為、幸せの真っ只中に居る2人は{またこの恋が壊れるかも知れない!}と思う強迫観念に苛まれ、余計に深い絆で結ばれている。



 そんな強い絆で結ばれた学と美穂なのだが、一方の久美子は、元々若年層に多い、軽い冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)の持病が有ったのだが、学と美穂の交際を人づてに知り、相当のショックを受けた。


{美穂どういう事ヨ?学の彼女探しをするんじゃなかったの………?一体どういう事?どれだけ連絡しても、学も美穂も全く音信不通………その挙句、私が一番恐れていた学と美穂の交際、他の人だったらまだしも美穂と交際しているだなんて………美穂には到底叶わない!ああああ!許せない!}


 久美子がこんなにも苦しんでいるのに、2人は両親の反対を押し切り、駆け落ち同然で結婚した。


 そこに追い打ちをかける様に、結婚して娘の美月が生まれたと聞き、凄いストレスでふさぎ込む日が続き、久美子は様態が悪化して若干26歳で亡くなった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 久美子には2つ下の妹真由美(のちの智子)がいた。

 又真由美も久美子同様に兄に連れ立って、たまには一緒に学の家に来て遊んでいた。


 だが、幾分年も違うので偶に連れ立って遊ぶ程度っだったが、真由美も実は、密かにイケメンで知的な学に思いを寄せていた。


 そんな時に、美穂がインフルエンザの悪化で入院した。

 学の家が幾ら隣町と言えども近所の為、お嬢様育ちの真由美は家で花嫁修業の身の上なので時間が有り余っている。


 若い女性の考える事、それは何と言っても異性の事が第一。

 インフルエンザと言ってもバカに出来ない。

 年間1万人もの人々が亡くなっている現状化。


 {姉の死亡原因が、病気とは分かっていても、ひょっとしたら、あれほど学に恋焦がれていた学と大親友美穂の結婚に、原因があるのかもしれない?}


 姉思いの真由美はそう思い、図々しく美月ちゃんの子守代わりと銘打って、頻繫に立花家に居座るようになった。


 それには真由美の思惑が有っての事なのだが、これが、後々とんでもない事になって行く。

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