第24話⁂幻覚!⁂
それでは、話が前後しますが、美月が中学3年生の時の話で、虐めに遭っていた弟と『Ⅹ』君の話に戻してみましょう。
『Ⅹ』君はあの時逃げ遅れて、同級生のガキ大将亮の差し金で散々な目に合った。
「生意気な~!口を割らないなら、割るまで痛めつけな!」
こうして徹底的に痛め付けられた『Ⅹ』君は、大変な状態になった。
一体どんな状態になってしまったのか…………?
★あの時の現状を再現——————
翼は、とうとう耐えられなくなって、亮達からの酷い仕打ちが待っていると分って居ながらも、虐めが益々加速して我慢の限界を超えてしまい、とうとう姉美月に相談した。
3歳違いの姉は、中学3年生の美少女で翼とは異母兄弟でイラン人の血を引く美少女。
中学校でも隠れ親衛隊が出来るほどの美少女。
ある日美月は、いつも付かず離れず、影から様子を伺っているオタクっぽい男の子達5~6人が、今日も後ろから付いて来ている事に気付いていた。
そこで可愛い弟翼の一大事。
そう思い、いつもだったらこんな連中に付け回されて、うんざりしているのだけれども、今こそこんな困った男の子達でも、存外、利用価値が有ると思い、早速声を掛けた。
「ねえ!君達一緒にカラオケ付き合ってくれない?」
「ワァ~!嬉しいな~!我が校きっての美人の誉れ高い、美月ちゃんからお誘いを受けるなんて、俺達は何て幸せ者なんだ!」
「ワァ~!行きますよ!行きますよ!」
こうして『カラオケボックスニャンニャン』に入り盛り上がり、ホッと一息ついた所で、今日の最大の本題を打ち明けた美月。
「ああああああ!君達、実は頼みが有るのよ………実は私の弟がいじめに有っているのよ。それで今度一緒にその現場を見て、コテンパンにやっつけて欲しいのよ!お願い!」
「ああ~良いさ!酷い奴らだね?任せて!」
ある日の事、オタクっぽい男の子達5~6人を誘って、早速翼の跡を付けると、数人の悪ガキたちが現れ何か………?引きつった顔で翼と、もう一人の男の子を睨み付け、何か指示を出している。
話の内容が聞こえないので、静かにソロ~リソロ~リと近付き、聞き耳を立ててみた。
すると……
「オイ!俺が言ったもの持って来たか?」
「アッ!ハッハイ!持って来たよ!」
そう言ってお金を渡した。
美月は、ふっとそう言えばママが言っていた事を思い出した。
「最近お金が知らない内に無くなっているのよね?」
「はは~ん?そういう事だったのね?翼と『Ⅹ』君は、こいつらに恐喝されていたんだ。許せない!」
すると今度はもう一人の坊やを睨み付けている。
「お前はどうしたんだ。持って来たか?」
「僕ママが怒るから怖くて取って来れなかった」
「何だと~!オイこいつをコテンパンにヤッツケロ!」
亮が指示を出すと数人の男の子達が、1人の男の子に殴り掛かろうとしている。
それを見た美月はもう我慢が出来ない。
「もう腹立たしい、我慢できない!皆お願い!」
そして…美月の親衛隊のオタク達が、ぞろぞろと亮達の前に姿を出した。
「お前達なんて事をするんだ。弱い者虐めをして許さん!」
そう言ったかと思うと、今度は、このいじめっ子達を次から次へと投げ飛ばしている。
すると……その時、後ろから誰か大人の影を発見。
これは大変、見付かれば学校から小学生を虐めた処分が下されるかもしれないと思った美月とオタク達は、一目散に逃げた。
姉の美月はチャッカリ弟の翼だけは、しっかり連れて逃げて来たが………?
「あれ~?翼の友達が居ないじゃないの?」
「本当だ!どうしよう?『Ⅹ』君を連れ戻しに行かないと?」
「駄目だよ。そんな事したら、僕たちの犯行がバレちゃうから」
逃げ遅れた『Ⅹ』君は、後ろから来た人に助けられたのかと思いきや、その人影は右に曲がり姿は見えなくなった。
「お前達よくもバラしてくれたな?許せない!」
「俺は何もバラしていない。本当だよ」
「じゃ~あの連中は誰だ。言え!」
「僕は何も知らない!」
「言えって言ってるだろう。分からないのか?」
「僕は知らない」
「ああああ!じゃ~翼の差し金か?行ってみろ」
「僕は何にも知らない」
『Ⅹ』君は、本当は翼の家に遊びに行って居るから、姉である事は知っていたが、翼を裏切ったら翼が酷い目に合うと思い辛抱したのだ。
「生意気な~!口を割らないなら、割るまで痛めつけな!」
こうして徹底的に【ボコンボコン】痛め付けられた『Ⅹ』君は、大変な状態になった。
余程の暴力を受けたのか、昏睡状態に陥ったのだ。
「お父様、お母様、『Ⅹ』君は、一生このままの昏睡状態です。
残念ですが、諦めて下さい」
「クウウ( ノД`)シクシク…ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
それでも…事件以来3年後、親の願いが届いたのか、運が良い事に『Ⅹ』君は奇跡的に意識が回復した。
そこで意識も回復に向かったので、お医者様から退院許可が下りたので、自宅で療養生活に入った『Ⅹ』君。
だが、喜んだのも束の間、最近は突如狂ったように暴れ出し手に負えない状態になってしまった。
心配になった両親は、慌てて病院で『Ⅹ』君を診察して貰った。
すると…お医者様から、頭部を強打された事による、 頭部外傷後精神病性障害(PDFTBI)と診断された。
この頭部外傷後精神病性障害(PDFTBI)は、頭部外傷後に平均4,5年後と遅れて出現する。
統合失調症に類似した被害的幻覚状態を主とする精神状態が見られるとの事。
『Ⅹ』君にも、様々な幻覚が現れ始めた。
トラ程の巨大な猫が部屋の隅にいて、金色の目をギラリと光らせ牙を剝き出し、餓えた獣の様に果敢に襲い掛かって来る。
大蛇が布団の上にとぐろを巻いて、今にも丸飲みにされそうだ。
ご飯にふりかけを掛けて食べようとしたら、いきなりウジ虫の様ににょろりにょろり這いずり回り、黒い小さな虫がいっぱいご飯の中を這いずり回っている。
知らない人がいつも天井から不気味な目付きで覗いている。
知らない首無し死体が、ベッドの中に入っている。
あたりが一面の花畑になっているが、やがて烏の大群となって襲い掛かって来る。
「ギャッギャ————————ッ!」
「ギャ————————————————!殺される————————ッ!」
「コッコ恐い!ギャッギャ————————ッ!」
暴れ狂う『Ⅹ』君。
親も手の打ちようがなく只々茫然と立ち尽くすだけだった。
この幻覚は思いも寄らない方向に向かう⁈
☆統合失調症
【幻覚や妄想といった精神病症状や意欲が低下し、感情が出にくくなるなどの機能低下、認知機能の低下などを主症状とする精神疾患です。
日本の統合失調症の患者数はおよそ80万人程度といわれており、世界各国の報告によると100人に1人弱がかかるという比較的頻度の高い病気であると考えられています。多くは10歳代後半から30歳代頃に発症するといわれています】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます