第23話⁂茂の死!⁂
茂の余りのしつこさにとうとう、堪忍袋の緒が切れた麗子は、我慢が出来ずに咄嗟に暴言を吐いてしまった。
それは、やっと授かった息子に家族共々大喜びしていたのも束の間。
麗子は産後の肥立ちが悪く心身共に疲れ切って、スッカリ体調を崩してしまったのだ。
それなのに、お構いなしに訳の分からない事を言って付きまとうので、とうとうブチ切れてしまった。
「会いたい。また会ってくれ!」
「いい加減にしなさいよ!もうあなたなんか大嫌い!私の半径10m以内に絶対に現れないで!あなたの顔なんか死んでも見たくない!」
麗子は、怒りを露わに立ち去る。
すると……その時、麗子の背中にナイフがグサリと刺さった。
その場に倒れる麗子。
辺りは血の海と化した。
ナイフを刺した犯人それは茂。
それでは一体何故このような暴挙に出たのか…………?
それはどういう事かと言うと…………。
茂は、麗子はもう結婚してしまったのだから諦めなくてはと、頭の中では分かっているのだが、それ以上に会いたい気持ちの方が何十倍も勝ってしまい、制御不能になり感情のコントロ-ルを完全に失ってしまっている。
会いたい気持ちを抑える事など、絶対に出来ない。
仕事にも身が入らず、只々夢遊病者の様に、麗子を追い求めることしか出来なくなってしまったのだ。
それなのに、自分がこんなに苦しんでいるのに、無視をする麗子が許せなくて、とうとう、もうこうなったら刃物で脅してでも、又以前の麗子ちゃんに引き戻そうと、刃物を所持していたのだ。
{今度冷たい態度を取ったら、その時はこの刃物で脅かしてでも、又以前のような付き合いに持って行こう…………どうせその内に、また元の麗子に戻りあの屈託のない笑顔で、向かい入れてくれるに違いない!}
「いい加減にしなさいよ!もうあなたなんか大嫌い!私の半径10m以内に絶対に現れないで!あなたの顔なんか死んでも見たくない!」
それなのに、自分の想像も付かない言葉を口走った麗子ちゃんに、今まで抑えていた怒りが爆発して、完全に感情のコントロールを失い、咄嗟に麗子を刃物で刺してしまった。
麗子はバタリと倒れて、見る見る辺りは血の海となった。
咄嗟に近くに居た通行人が救急車を呼んでくれたので、麗子は何とか命を救われた。
茂は、早速現場に直行した警察官に取り押さえられ、刑務所に監禁された。
心配された麗子ではあったが、しばらく入院しただけで済み、あいにく大事には至らず、回復して家に戻った。
それでも…家族の心配はいかばかりだった事か…………。
やっと家族にも平和が戻ったのも束の間、なんと茂が刑務所で監視員の目を盗んで、タオルを紐にしてドアノブに引っ掛け首吊り自殺を図ったのだ。
そして…手当の甲斐もなく31歳でこの世を去った。
拓郎と麗子は、一時は大親友だった茂を自分たちのせいで失い、失意のどん底に突き落とされている。
「俺達の配慮の無さで……あんな優しい男を死に追いやってしまった・・・・クウウ( ノД`)…」
「私が悪いのよ。疲れていたのでついつい邪険に扱ってしまって…………クウウ( ノД`)シクシク…」
◇◇◇◇◇◇◇◇
拓也と美月は、古びた所々穴の開いた手紙💌を読み終えた。
「愛とは時には残酷なものね!可哀想に…………ああああ!それでも…拓也のおばあちゃんも、イラン人の血が流れてるってどういう事?余りにも偶然過ぎるでしょう?」
「本当だな~?ひょっとしたら俺達兄妹……?だけど……美月のおばあちゃんは、造園業を営んでいた家のお嬢さんで純日本人だろう?………片や俺のおばあちゃんは養護施設育ちの、日本人の父親とイラン人の女性の間に授かったハ-フだし、全くの別人だよ!」
「だけど………同じ異世界?夢の世界?の正体………絶対に卓也と私には……何か共通する何かが有るに決まっている………?でも私?幼い頃に………何か………聞かされた???アァ~思い出せない?」
「そうだね!きっと何かが隠されているから……同じ異世界?夢の世界?を俺と美月2人が一緒に体現出来たんだよ。無理をせずに徐々に解き明かしていこう?」
そして…この古びた手紙の中に綴られていた、茂は実はこの現世でも重要な代わりを持っている。
◇◇◇◇◇◇◇◇
現在、拓也と密かに交際している美月なのだが?
この世界が二分してしまう正体は何なのか…………?
美月は、生存しているのか?
それとも……。
美しい少女立花美月は、実は心無い義母の毒牙に掛かり、若干7歳で命を奪われてしまっていたのか?
徐々にそれは紐解かれて行く。
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賽の河原地蔵和讃
🌚🌌🔹🔹🔹🔹🔹
きみょうちょうらい 世の中の
定めがたきは 無常なり
親に先立つ 有様に
諸事の哀れを とどめたり
一つや二つや三つや四つ
十よりうちの幼子が
母の乳房を放れては
賽の河原に集まりて
昼の三時の間には
大石運びて塚をつく
夜の三時の間には
小石を拾ひて塔を積む
一重積んでは父の為
二重積んでは母の為
三重積んでは西を向き
しきみ程なる掌を合せ
郷里の兄弟我ためと
あら痛はしや幼子は
泣々石を運ぶなり
手足は石に擦れだだれ
指より出づる血の滴
体を朱に染めなして
父上こひし母恋しと
ただ父母の事ばかり
云うてはそのまま打伏して
さも苦しげになげくなり
あら怖しや獄卒が
鏡照日のまなこにて
幼き者を睨みつけ
汝らがつむ塔は
歪みがちにて見苦しし
斯ては功徳になり難し
疾々これを積直し
成仏願へと呵りつつ
鉄の榜苔を振揚げて
塔を残らず打散らす
あら痛しや幼な子は
又打伏して泣叫び
呵責に隙ぞ無かりける
罪は我人あるなれど
ことに子供の罪科は
母の胎内十月のうち
苦痛さまざま生まれ出で
三年五年七年を
わずか一期に先立つて
父母に歎きをかくる事
第一重き罪ぞかし
母の乳房に取りついて
乳の出でざる其の時は
せまりて胸を打叩く
母はこれを忍べども
などて報の無かるべき
胸を叩くその音は
奈落の底に鳴響く
修羅の鼓と聞ゆるなり
父の涙は火の雨と
なりて其身に降かかり
母の涙は氷となりて
その身を閉づるなげきこそ
子故の闇の呵責なり
斯る罪科のある故に
賽の河原に迷来て
長き苦患を受くるとよ
河原の中に流れあり
娑婆にて嘆く父母の
一念とどきて影写れば
なう懐しの父母や
飢を救ひてたび給へと
乳房を慕ふて這寄れば
影は忽ち消え失せて
水は炎と燃えあがり
その身を焦して倒れつつ
絶入る事は数知らず
中にも賢き子供は
色能き花を手折きて
地蔵菩薩にたてまつり
ざん時呵責を免れんと
咲き乱れたる大木に
登るとすれど情なや
幼き者のことなれば
踏み流しては彼此の
おどろの棘に身を刺され
すべて鮮血に染まりつつ
ようやく花を手折り来て
仏の前に奉る
中に這出る子供等は
胞衣を頭に被りつつ
花折ることも叶はねば
河原に捨てたる枯花を
口にくはへて痛はしや
仏の前に這行きて
地蔵菩薩に奉り
しゃじゃく法衣に取付いて
助け給へと願ふなり
生死流転を離れなば
六趣輪回の苦みは
ただ是のみに限らねど
長夜の眠り深ければ
夢の驚くこともなし
ただねがはくば地蔵尊
迷ひを導き給へかし
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