第22話⁂茂の思い!⁂
ある日、どうして麗子ちゃんの顔が見たくなった茂は、〔菱本酒造〕本社事務所に又しても会いに行った。
{あの日はあいにく会えなかったけれども、今度は事務所に居てくれると嬉しいな?}
茂は、本当は日本酒よりビール派なのだが、わざわざ麗子に会いたいばかりに考えた苦肉の策。
{お客として酒の注文に赴けば、又以前の様に笑顔で話し掛けてくれるに違いない!}
そう思い〔菱本酒造〕本社事務所に向かった茂。
すると……嬉しい事に夢にまで見た麗子が、事務所にいるではないか、茂が早速笑顔で手を振った。
「やあ!久しぶりだね」
すると……もうお腹も目立っている麗子ではあるが、一層幸せ光で美しさが増している麗子が茂に気付いた。
だが「いらっしゃいませ!」と笑顔は向けてくれたが、まるで茂を避けるかのような態度で、茂に気付くなりそそくさと事務所から出て行ってしまった。
{どうしてだよ~?やっと会えたのに~}
冷たくされればされるほど、愛は不安と共に一気に膨れ上がり、茂の心の中の全てを支配して行く。
全く困った男だ。もう既にあの時結論が出ていると言うのに…………。
「麗子ちゃん僕は麗子ちゃんを、一生幸せに出来る自信が有るんだ。だからあんな麗子ちゃんを、守る事も出来ない男なんか諦めてくれ!そして…そして俺と付き合ってくれ………!そうじゃないと拓郎も麗子ちゃんも、我が社から出て行って貰うからな!」
麗子は茂に、二者択一を迫られ窮地に立たされた。
早速出張から帰って来た拓郎に、茂の腹の内を伝えた。
すると……拓郎からも二者択一を迫られた麗子。
「麗子は、もう行き場が無いから、茂と結婚するしかないと思っているのか?それとも俺とこの〔ヤマダ模型〕を辞めて、どんな生活が待っているかも知れないが、それでも俺に付いて来てくれる気持ちが有るのか?どっちだ?」
「当然じゃないの!拓郎とどんな事が有っても生きて行くつもりよ」
そして…2人で出した結論を茂に伝えた。
「茂さんと結婚するつもりは無い。私達は〔ヤマダ模型〕を出て行きます」
そうはっきりと伝えたのに…………。
それなのに、もう結婚してしまった麗子を、追い求めてどうなると言うのか———
◇◇◇◇◇◇◇◇
諦めが悪いと言うか、何というか⁈
まあ~茂の性格が災いしているのかも知れない。
茂は好きな事には徹底的に没頭する、類まれな優秀な一面もあるので、両親も少々甘やかせ過ぎたのかも知れない。
それは、どういう事かと言うと、小学校から理系がダントツに得意だった茂の為に、『勉強の為だから欲しい』と茂が言えば何でも買い与えていた。
また社会人になってからも、我が社の人気製品をいくつか生み出している、この会社には無くてはならない存在の息子茂が、突然ふらりと2~3日会社を休み出掛けても、文句の一つも言えない状態。
「製品のヒントを探す為に、海外に出掛けたり地方の珍しい玩具屋さんに出掛けたりしているんだ」
そう言われれば一言も言い返すことが出来ない両親は、会社の発展に貢献している息子を信じて疑わないのだ。
厳しく律することが出来ない両親。
こうして、とんでもない事件が起きる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
{アア~!以前はしょっちゅう3人で、一緒に遊びに行ったり出掛けたりしていたのに、今は顔を見る事もままならない………それどころか、まるで変態でも見る様な目付きで、避けられるってどういう事ヨ?}
茂は好きな事には徹底的に没頭する性格、それは女性に対してもそうなのだ。
一人っ子という事も有り、我がままで外見も性格もオタク気質のどこから見ても、只の巨漢のデブでキモイ外見の茂を、相手にする女性などそうはいない。
そんな所に、全く違った環境で育った茂と拓郎と美少女麗子の3人は、ひょんな事から、徐々に助けたり助けられたりしている内に親しくなり、切っても切れない大親友になった。
只の巨漢のデブでキモイ外見のせいで茂は、麗子ちゃんと知り合うまで一度も、女の子に相手にされた事が無かった。
そんな劣等感の塊の茂。
{あんなに綺麗な麗子ちゃんだから、俺なんて相手にする筈がない!}
最初は手の届かない存在と思い、ただ遠くから見守っているだけで幸せだったのだが、いつしか、なれとは恐ろしいもので、いつも笑顔で話し掛けてくれる麗子ちゃんを、至極当然の事と思うようになり、更には{ひょっとしたら僕を男として受け入れてくれるかもしれない?}
全く都合のいい妄想を巡らせるようになってしまった茂。
{あれだけ俺に笑顔を振りまいてくれるって事は脈ありって事?男は拓郎と俺だけという事は、二分の一の確率で俺にもチャンスが有るって事だ!}
全くもって都合のいい妄想でしかないのだが…………?
更 に茂は、自分の事はさて置き、いつしか理想が格段に跳ね上がり、そろそろ年頃の茂を心配して親が縁談を進めるのだが、麗子ちゃんよりブスな娘は全く眼中には無く、自分の伴侶として見向きもしない有り様。
◇◇◇◇◇◇◇◇
{どうしてだよ~?やっと会えたのに~?}
冷たくされればされるほど、愛は不安と共に一気に膨れ上がり、茂の心の中の全てを支配して行く。
茂は好きな事には徹底的に没頭するタイプ。
それは、女性を選ぶ時にもいかんなく発揮されている。
こうして、麗子に嫌われてしまった不安と恐怖で夜も眠れない状態が続き、冷静な判断が出来なくなった茂は、麗子の事しか頭の中になくなり麗子の行く先々に現れるようになった。
余りのしつこさに堪忍袋の緒が切れた麗子は、とうとう我慢が出来ずに咄嗟に暴言を吐いてしまった。
「もうあなたなんか大嫌い!私の半径10m以内に絶対に現れないで!あなたの顔なんか死んでも見たくない!」
麗子がこんな考え無しの暴言を吐いたのには訳が有る。
それは、やっと授かった息子なのだが、産後の肥立ちが悪く体調を崩しているのだ。
それなのに、お構いなしに訳の分からない事を言って付きまとうので、とうとうブチ切れてしまった。
「会いたい。また会ってくれ!」
「いい加減にしなさいよ!もうあなたなんか大嫌い!私の半径10m以内に絶対に現れないで!あなたの顔なんか死んでも見たくない!」
麗子は、怒りを露わに立ち去る。
すると……その時、麗子の背中にナイフがグサリと刺さった。
その場に倒れる麗子。
辺りは血の海と化した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます