第16話⁂祖父母の恋愛の行方⁈⁂


「ウッフッフッフ~!拓也さん謎の手紙が見付かったってどういう事」


「携帯で話していても埒が明かないので、いつ会えるかな?」


「じゃ~今度の日曜日」


 早速その日はやって来た。

 この2人拓也と美月は、いつしか密かに愛を育んでいた。


「おじいちゃんの手紙を発見したんだ。若かりし頃のおじいちゃんとおばあちゃんの手紙、そこに一連の夢の正体が有ったんだよ。あれは、おじいちゃんとおばあちゃんのお話だった。恋愛成就出来なかった怨念みたいなものが?俺達に乗り移ったのかも知れない」


「それどういう事?」


「手紙が倉庫から見つかったんだよ。異世界?夢の世界の正体が知りたくて必死になりその原因を追究して居たら、俺の夢の中にあまりにも酷似した場面が出て来るので読んでみたんだ。だけどもう50年以上前の手紙だから所々穴が開いていて、食い違っている所もあると思うよ」


 おじいちゃんの名前☆菱本拓郎。

 孫の拓也は、おじいちゃんの拓郎の『拓』を貰い拓也と命名。


 💌手紙の中の再現


 新潟県小千谷市にある造り酒屋〔菱本酒造〕1852年創業。

 原料や品質にこだわった質の高い商品を提供するこの〔菱本酒造〕は長きに渡り愛され続けて来た名高い酒蔵である。


 そこの跡取り息子拓郎は、その時20歳の大学生、家の手伝いで丁度桜の見頃を迎えた悠久山公園は、約2500本もの桜が咲き誇り❀*・⋆🌸


 公園内には長岡の先人の石碑等があり、行楽客で溢れかえっている。


〔菱本酒造〕の跡取り息子の菱本拓郎は、父親に配達を頼まれ、何とも美しく艶やかに咲き誇る桜を横目に家路を急いでいると🌸。*いきなり””フラフラ~””と車を横切る人影が………?


””キキ――――ッ!キ――――ッ!””

 慌ててブレ-キを踏んだ拓郎。


 するとその時、高校生くらいの少女がふらふら~!とその場でよろけながら倒れた。

 ビックリした拓郎は咄嗟に支えて事なきを得たのだが。


*_____*

「あれ~?夢の中の世界では確か、12歳だった筈だが?」


「本当よね?」


「ああああ!手紙が、もう穴が開いて年齢が分からなくなっている!」


「まあ~仕方ないわよ~読み進めましょう」

こうして又読み進めた2人


*_____*


「君は、一体どうしてこんな危ない真似をするんだい?」


 するとその少女麗子は拓郎の腕の中で泣き伏した。


「私は……私は……逃げて来たのです。助けてください!」


「エエエエエエ―――ッ!一体何処から逃げて来たんだい?」


 麗子はゆっくりと立ち上がり、顏を上げて拓也に顏を向けた。

 春先だと言うのに薄手のワンピ-ス姿にサンダル履きで、如何にも隙を見付けて咄嗟に逃げて来た感が否めない格好だ。


 よくよく見ると慌て過ぎて、ころんだのか?

 ワンピ-スとサンダルが所々汚れているではないか?


 またそれ以上に驚いたのは、余りにも整ったその造形美に、只々呆気にとられる拓郎。

 まさに神がもたらした神秘。


 透き通るような白い肌とうるんだ瞳、更には美しい栗毛色の長い髪を肩まで伸ばした、17歳の息をのむほどの美しい少女が、そこに立って居たのだ。


「そんな事・・・そんな事・・・言えない!」


「ともかく僕の車に乗って!」


 暫く車を走らせていると、のどかな田園地帯に出た。


「もう安心だよ。今日は我が家にでも泊まるといいよ。親に頼んでみるからさ~!……それより一体何があったんだい?」


「…………」


 すると————

 ボッカ――ン〷😰〷 グッシャ———ン🤮〷🥴〷//ドッス——ン🤕//〷//

いきなりトラックがぶつかって来た。


 拓郎は脳振盪を起こして気を失っている。


 時代は1960年代の事。

 その頃子供達に絶大な人気を誇った、ウルトラマンの着ぐるみを被った謎の男が、麗子を車から奪い去り、トラックに乗せて一目散に逃げた。


 美少女麗子は、余りの衝撃に軽い脳震盪は起こしているが、あいにく負傷はしておらず不幸中の幸い。


 この謎の男ウルトラマンの着ぐるみを被った謎の男に、連れられ車はひたすら関東に向かっている。


 目を覚ました美少女は「お願い助けて――――――――ッ!」


「お嬢ちゃん僕は?僕は?人間では無い!ウルトラマンだよ。カッコいいだろう?」


「エエエエエエ―――ッ!」


「ウッフッフッフ~!」


 そして…チラリと少女に顔を向けた。


 すると……その時、目が””ピカ———ッ!””と金色に光った。


「キャ――――――――ッ!その着ぐるみのせいね?」


 するとそのウルトラマンの着ぐるみを着た男は、そ~っと頭をなでてくれた。


「僕は今大学1年の山田だよ。君と高校が一緒だった1学年上の…」


「ああ!私と一緒の養護施設の太郎の友達の山田君、分かったわ」


「だから怖がらなくていいんだよ?」


 そして…頭をなでてくれたのだが、その撫でてくれた手は、到底血の通った人間とは程遠い、それはまるで氷で作ったロボットの様に冷たかった。


{アアアアアア!着ぐるみのせいで冷たかったんだ?}


 こうしてやがて、麗子は関東地方の埼玉県の一角に有る、倉庫に連れて行かれた。


「ここは一体どこ?私は……私は……どうなるの~?」


「ごめん!友達に頼まれたんだ!俺さ~?気が弱いのでよく絡まれるんだ………そんな時、助けてくれたのがチンピラ達なんだよ。用心棒のような友達が出来て安心していたんだが………とんでもない奴らなんだよ。ヤクザとも関係が有るらしく、そこでマリア愛児園の友達太郎と仲が良いという事で、マリア愛児園から逃げた麗子ちゃんとも顔見知りだろうと言われて、引き戻して来いと頼まれたんだ。そこで『逃げた麗子ちゃんを連れて来ないと只じゃ済まないからな~!』と脅されて致し方なくやった行為なんだ………俺も奴らに絡まれたら怖いので仕方なく、言うこと聞いているんだ。言うこと聞かないと殴り蹴りされて、半殺しの目に合うんだ………何故こんな着ぐるみを着たかって?だってバレたら格好悪いだろう?顔隠す為さ」


 その時、山田君の目をハッキリと見ることが出来た。

 何か………目の淵が真っ赤に光沢を帯びて、皮膚を引きむしられ血で、光り輝いているような…………。


{アァ~?ひょっとして暴力を振るわれたせいで顔がただれているんだ?}


 すると……そこに高級車に乗った男が現れ、麗子は倉庫の中に無理矢理引きずり込まれた。


 その時、高級車から降りて来たボス的存在の、鋭い目付きで威圧感の有る男が、合図を送ると、手下らしき男が、山田君を強引に鉄格子の中に押し入れ、ガチャリと鍵を掛けた。


「お嬢ちゃん、なぜ逃げたんだね?折角の上玉に逃げられては商売上がったりじゃないか。ウッフッフッフ~!今度こんなマネをしたら只じゃ~済まないからね!オイ……暫くの間牢屋にぶち込んでおきな!」


 こうして山田君の、隣の牢屋に隔離された麗子なのだが、誰も居なくなった途端に山田君が、麗子に話しかけて来た。


「僕はこの鍵を開ける事が出来る。君の鍵も開けてやれるけど条件交換しよう。開けてあげるから僕を暫く匿ってくれる事は出来る?」


「出来ない事もないけど?」


 こうして開けて貰い人目に付かない様に、夜中に抜け出し早速拓郎に電話をかけた。



 それではどうして少女は、この様な物騒な事になる羽目になったのか?


 実はこの少女は、日本人の特命大使の男性と、イラン人の女性との間に出来た少女なのだ。

 石油などの貿易の為、日本人がイランに渡っていたからである。

 そんな夫婦であったが、国家公務員の父の栄転で夫婦共々日本に帰って来たのだ。


 ある日家族で、久しぶりにイランに里帰りしたのだが、運の悪い事に飛行機事故で敢え無く両親は亡くなり、この少女と他数人は無事助かった。


 こうして少女は祖父母宅に引き取られたのだが、高齢の為祖父母も相次いで死亡。

 天涯孤独となった美少女は、遠縁の協力の元、養護施設に預けられる事になった。


 だが、運の悪い事に預けられたこの養護施設マリア愛児園は、とんでもない養護施設だった。


 実は唯一の親戚が、突如としてこんなお荷物を背負わされて困惑気味。

 そんな冷遇に耐えきれなくなった麗子は、家に居場所を失って家出癖が付いてしまった。


 そんな時に、マリア愛児園の関係者から声を掛けられた遠縁が、マリア愛児園に入所させたのだ。




 だが、とんでもない事に、このマリア愛児園では、恵まれない子供たちの救済と銘打って、裏ではとんでもない悪事を働いていた。


 どうも営利目的で、子供達を闇から闇に売り飛ばしているらしい。


 人身取引に基づいて行われる犯罪には、強制労働、強制結婚、性的搾取など様々なものがある。

 当然この美少女はこれだけの美貌、性的搾目的でヤクザに売り飛ばされ掛かっていたのだ。


 それを救い出したのが誰有ろう菱本拓郎なのである。


 あの日、衝突事故で意識を失っていると、後ろから来た車に救われて命拾いした拓郎は、その少女の余りにも切羽詰まった態度に咄嗟に電話番号を渡して置いた。


 あの時、既に拓郎はこの少女麗子の為に人生を犠牲にしても守り抜こうと、心の中で強く誓っていた。

 余りの美しさに一瞬で恋をしてしまったのだ。


 弱冠17歳の美少女を年齢を偽り、いかがわしい仕事に就かせようとする、ヤクザから救い出す手立てはあるのか?


 こうして甘く切ないラブスト—リ―が始まる。

 これからどうなって行くのか………?












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