第14話⁂Ⅹ君!⁂


 翼は、とうとう耐えられなくなって、亮達からの酷い仕打ちが待っているかもしれないと分って居ながらも、虐めが益々加速して我慢の限界を超えてしまった。


 そして…あれ程バラしたら承知しないと言われていながら、我慢の限界を超えてしまった翼は、とうとう優しい姉美月に相談した。


 3歳違いの姉は、中学3年生の美少女で翼とは異母兄弟でイラン人の血を引く美少女。

 中学校でも隠れ親衛隊が出来るほどの美少女。

 ある日美月は、いつも付かず離れず、影から様子を伺っているオタクっぽい男の子達5~6人が、今日も後ろから付いて来ている事に気付いていた。


 そこで可愛い弟翼の一大事。

 そう思い、いつもだったらこんな連中に付け回されて、うんざりしていたのだけれども、今こそこんな困った男の子達でも、存外、利用価値が有ると思い、早速声を掛けた。


「ねえ!君達一緒にカラオケ付き合ってくれない?」


「ワァ~!嬉しいな~!我が校きっての美人の誉れ高い、美月ちゃんからお誘いを受けるなんて」


「ワァ~!行きますよ!行きますよ!」


 こうして『カラオケボックスニャンニャン』に入った。


「美月ちゃんと、面と向かってカラオケが出来るなんて夢みたいだ!」


「本当だよ!まさか夢でも見てるんじゃないだろうか?」


「ウッフッフッフ~!嬉しい」


 皆でカラオケで盛り上がっている。



 キモオタ達が4~5人ぞろぞろと、振り付けで踊りながらAKB48の『ヘビ-ロ—テ—ション』や少女時代の『Gee』で盛り上げている。


 そして…小一時間くらい経った頃に、美月が今日の最大の目的を話し出した。


「ああああああ!君達実は頼みが有るのよ………実は私の弟がいじめに有っているのよ。それで今度一緒にその現場を見て、コテンパンにやっつけて欲しいのよ!お願い!」


「ああ~良いさ!酷い奴らだね?任せて!」


 ある日の事、翼の跡を付けると、数人の悪ガキたちが現れ、何か………?引きつった顔で翼ともう一人の男の子を睨み付け、何か指示を出している。


 話の内容が聞こえないので、静かにソロ~リソロ~リと近付き、聞き耳を立ててみた。


 すると……

「オイ!言ったもの持って来たか?」


「アッ!ハッハイ!持って来たよ!」


 そう言ってお金を渡した。


 美月は、ふっとそう言えばママが言っていた事を思い出した。


「最近お金が知らない内に無くなっているのよね?」


「はは~ん?そういう事だったのね?こいつらに恐喝され巻き上げられていたんだ。許せない!」

 すると今度はもう一人の坊やを睨み付けている。


「お前はどうしたんだ。持って来たか?」


「僕ママが怒るから怖くて取って来れなかった」


「何だと~!オイこいつをコテンパンにヤッツケロ!」

 数人の男の子達が、1人の男の子に殴り掛かろうとしている。


 それを見た美月はもう我慢が出来ない。

「もう腹立たしい、我慢できない!皆お願い!」


 そして…美月の親衛隊のオタク達が、ぞろぞろと亮達の前に姿を出した。


「お前達なんて事をするんだ。弱い者虐めをして許さん!」


 今度は、このいじめっ子達を投げ飛ばしていると、後ろから誰か大人の影を発見。

 これは大変、見付かれば学校から小学生を虐めた処分が下されるかもしれないと思い、一目散に逃げたのだ。


 姉の美月はチャッカリ弟の翼だけは、しっかり連れて逃げて来たが………?


「あれ~?翼の友達が居ないじゃないの?」


「本当だ!どうしよう?『Ⅹ』君を連れ戻しに行かないと?」


「駄目だよ。そんな事したら、僕たちの犯行がバレちゃうから」


 逃げ遅れた『Ⅹ』君は、後ろから来た人に助けられたのかと思いきや、その人影は右に曲がり姿は見えなくなった。


「お前達よくもバラしてくれたな?許せない!」


「俺は何もバラしていない。本当だよ」


「じゃ~あの連中は誰だ。言え!」


「僕は何も知らない!」


「言えって言ってるだろう。分からないのか?」


「僕は知らない」


「ああああ!じゃ~翼の差し金か?行ってみろ」


「僕は何にも知らない」


『Ⅹ』君は、本当は翼の家に遊びに行って居るから、姉である事は知っていたが、翼を裏切ったら翼が酷い目に合うと思い辛抱したのだ。


「生意気な~!口を割らないなら、割るまで痛めつけな!」

 こうして徹底的に痛め付けられた『Ⅹ』君は、大変な状態になった。


 お父様、お母様、この子は一生…………。

 諦めて下さい。


「クウウ( ノД`)シクシク…ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


◇◇◇◇◇◇◇◇

 ああああああ!嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!アアアアアアアア!僕は……僕は………?

どうしてしまったんだろう?


「あれ~?どこに来たんだろう?」


 おどろおどろしい雰囲気のどんよりとした、薄暗い曇り空で、小雨が降っている

さらに靄(もや)が掛かり視界がさえぎられ、その河原はより一層地獄の様相を呈している。


 風車がカラカラとまわり荒々しい岩場の合間から、硫黄の臭いが立ちこめる様子は、まさに地獄


 よくよく見ると奥の池は真っ赤に血に染まり、あれは 血の池地獄なのだろうか

荒涼とした無機質な空間が広がる『地獄』


「ここは・・・アアアア~賽の河原~?」

 嗚呼~!何とも不気味な光景!

「僕より小さい子供たちばかり、こんな所で一体何をしているのか………?」


 10歳にも満たない幼子達が、このどんよりとした賽の河原で何かつぶやきながら、延々と石積みをしている。


 そして誰もかれも青白い、それはまるで死人のような暗い無表情な顔で、只延々と怨念めいた歌を口ずさんでいる。

『ひとつ積んでは母のため ふたつ積んでは父のため

歌うその声哀れかし』



「なんだよ~?前に見た事のある景色?あのおねえちゃんの事、僕は本当は恨んでいるんだ!」


 💎🔹✨🔹💎🔹✨🔹💎🔹✨

 ✨🔹✨🔹 ✨🔹🔹✨🔹✨🔹✨


「アアアア————————ッ!」


 ここはどこ?滅茶苦茶キレイ💛

「僕は死んだのかな~?」


 得も言われぬ美しさ*✨⋆✶。・何とも華やかな天女も居て—————

 天女が紫の羽衣を纏い天空を蝶のように舞っている。


 宝石💎が至る所に散りばめられて、もうびっくりしたのなんのって!


 四方八方から眩いぐらいの後光が差して、とても過ごしやすい気候で、天からは色とりどりの華の雨が降り注ぎ、息を呑む程の美しさ。


 地面には「七宝」といって、金、銀、瑠璃(青い宝石)、水晶、白いつやのある貝、赤い真珠、めのうなどが引き詰められ、眩いぐらいの光を放ってこの極楽浄土を照らしあげている。



「ワァ~~すご~い!煌びやかで、こんな世界見た事無い!」


 樹木には、赤や黄色の宝の実が煌びやかに実っている


 一日に六回、曼陀羅華(まんだらけ)の花が空から一面に降りそそぐ。


 赤や黄色や緑の美しい鳥がゆらゆらと天空を舞い、一日に六回、美しく優雅な声でさえずることで教えを説いている。


 宝石が散りばめられた並木や網が、そよ風に揺られて妙なる音を鳴らす。

 それは百千もの音楽が一緒に流れているように何とも美しい響き。




 池には色々な色の蓮の花が咲き、良い香を放っている。

 池の底は黄金の砂で覆われている。


 自然や建物は黄金や七宝で出来ていて、妙なる音楽が流れ、鳥のさえずりや、水や風の音はそのまま説法となり、極楽の人々はそれを聞いて仏を念じる。


「あぁ~何とも心穏やかな~ここが極楽浄土なのか?」


 池の水面には、車輪くらい大きな蓮華の花が咲いている。


 青い花は青く輝き、黄色の花は黄色く輝き、


 赤い花は赤く輝き、白い花は白く輝き、


 美しく、香り高く咲き誇っている。


「ああああ!でも何か…恐ろしいああああああああ!黒い蝶々の大群!何だ!この気味の悪い?」

 その時、ハッキリと今までの黒い影の正体や異常な現象の正体が、くっきりと原形を留め出して来た。


 すると今度は又しても…………。

 至るところに宝の蓮華の花が咲いている。


 一つ一つの蓮華の花には、百千億の花びらがあり、


 白や黒はもちろん、黄色や朱色、紫など、限りない色の輝きを放っている。


 その時、菩薩様の声がした気がした。

「あなたは死んでなんかいません!あなたは死んでなんかいません!」」



 ひゅう————————っ!ヒュ————————ッ!


「あああああああああああ————————!あんなに綺麗だったのに・・・あれ~

元の場所、賽の河原に戻った!一体どういう事なんだろう?・・・・でも、なんか可哀想だな~?」

     

 おどろおどろしい雰囲気のどんよりとした、薄暗い曇り空で、小雨が降っている。

 さらに、もやが掛かり視界がさえぎられ、その河原はより一層地獄の様相を呈している。


 風車がカラカラと回り荒々しい岩場の合間から、硫黄の臭いが噴き出す様子は、まさに「地獄」である。


 嗚呼~!何とも不気味な光景!

 子供たちは、こんな所で一体何をしているのかって?



 幼子供が、母親と死に別れたのち賽の河原に集まって


 しきみ(毒性の強い葉っぱ)のような小さな手を合わせて


 1つ積み上げては父親の為と


 2つ積み上げては母親の為と


 3つ積み上げては西を向いて生まれ故郷の兄弟の為と


 可哀想に幼子は泣きながら日の出から日の入りまでの間に、大きな石を運んできて塚を築いて、小さな石を拾って塔を築いている。


 手足は石で擦れて身体中が血だらけになりがら、父さんに会いたい母さんに会いたいと、延々泣き叫んでいる。


「あぁ~可哀想に・・・」 


 なんとも恐ろしいデッカイ角と鋭い牙をむき出した地獄の鬼が、何ともギラギラした目で子供達を睨みつけて「お前達が積む塔は歪んでいてみっともない。これではご利益も無いだろう。さっさとこれを積み直して成仏を願え」と叱っている。


 そして…金棒を振り上げて塔をぐちゃぐちゃに全て壊しまわっている。


「全く怒れる!」


 可哀想に幼い子供は倒れこんで泣き崩れている。


「酷い話だ!」


 母のお腹にいる10ヶ月の間、様々な苦痛を母に与えて居るにも拘らず、3年5年7年のわずかな期間で、先に死に父や母を悲しませた事は、特に重い罪。


 お乳が出ない時は出るように胸をきつく叩き、それでもお乳が出て来ない。

 胸を叩くその音は、地獄の底で鳴り響く阿修羅の打ち鳴らす、鼓の音に聞こえる程。

母は我慢して痛さを堪えている。


 父の涙は火の雨になってその体に降り懸かり、母の涙は氷になってその心身を乱し悩ませる。

 このような罪がある為に、幼子たちは賽の河原で成仏できずに、長い苦しみを受ける。


 流れのある賽の河原で、現世で嘆いている父母の思いが届いて、その影が河原に映れば、懐かしい父さん母さんにお腹が空いて、お乳が恋しくて、這い寄ると影は瞬く間に消えて、やがて水は炎となって燃えあがり、体を焼き焦がして死んでしまうことは数え切れない。


 賢い子供は美しい花を摘もうと、大きな木の上に登るが、足を踏み外して辺りのいばらの棘に体を刺され、全身血まみれになりながら、ようやく花を折り取って仏の前にささげる。

 そして…花を仏さまに差し出して、すこしの間責め苦を逃れようとする。


 その中でも這って歩く子供達は、胞衣(胎盤)を頭に被ったままで、花を折る事も出来ないので、河原に捨てられている枯れた花を、口に咥える姿は不憫である。


 仏の前に這って行き地蔵菩薩にささげ、錫杖(しゃくじょう)や法衣〔仏様の衣装〕にすがり付いて、助けて下さいと願いい求めるのである。


日夜、子供たちは地蔵菩薩様に「お救い下さい」と…………。


「賽の河原は本当に大変な所だな~!…………アアアアアア!今度は何だ?僕は死んでなんかいない筈?死んでなんかいない筈?…………それなのに……なんだ………?だが?全てお見通しのデッカイ地球くらいのピカピカ光る目が見える。ああああああああ!グルグルグル回る!ああああああああ!黒い塊これは一体?」


 とんでもない現象が起きている!

 このとんでもない現象の渦中にいる人物それは・・・


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る