第10話⁂虚構の世界⁈⁂


〔菱本酒造〕の跡取り息子菱本拓也に、配達帰りに助けられた美少女立花美月だったのだが、やっとの事助けられて一息ついたのも束の間。


 ……いきなり————

 ボッカ――ン〷😰〷 グッシャ———ン🤮〷🥴〷//ドッス——ン🤕//〷//


 いきなり黒のワゴン車がぶつかって来て、この謎の男、目出し帽の男に連れられ、車はひたすら関東に向かっている。


「お願い助けて――――――――ッ!」


「お嬢ちゃん僕は?僕は?人間では無い!」


「エエエエエエ―――ッ!」


「ウッフッフッフ~!」


「じゃ~?人間じゃ~無かったら何なのよ?」

恐る恐る聞くと。


「僕はこの世のものでは無いんだよ!ウッフッフ~!」


 そして…チラリと美月に顔を向けた。

 すると……その時、目が【ピカ———ッ!】と金色に光った。


「キャ――――――――ッ!」



 目出し帽の男に危険性を感じ、恐怖心で足がすくみブルブル震え出した美月。


 するとその目出し帽の男は、そ~っと頭をなでてくれた。

 だが、その撫でてくれた手は、到底血の通った人間とは程遠い、それはまるで氷で作ったロボットの様に冷たかった。


 何か………人間ではない……鉄で出来た手のような…………。


 こうしてやがて、美月は関東地方の埼玉県の一角に有る、倉庫に連れて行かれた。


「ここは一体どこ?私は……私は……どうなるの~?」


 その時、目出し帽の男の目をハッキリと見ることが出来た。

 何か………目の淵が真っ赤に光沢を帯びて……一体何者なのか?

 皮膚を引きむしられ血で、光り輝いているような…………。


 すると……そこに高級車に乗った男が現れ、美月は倉庫の中に無理矢理引きずり込まれた。

 その時、高級車から降りて来たボス的存在の、鋭い目つきで威圧感の有る男が、合図を送ると、手下らしき男が、目出し帽の男を強引に鉄格子の中に押し入れ、ガチャリと鍵を掛けた。


「お嬢ちゃん、なぜ逃げたんだね?折角の上玉に逃げられては商売上がったりじゃないか。ウッフッフッフ~!今度こんなマネをしたら只じゃ~済まないからね!オイ……暫くの間牢屋にぶち込んでおきな!」


 こうして目出し帽の男の、隣の牢屋に隔離された美月なのだが、誰も居なくなった途端にその目出し帽の男が、美月に話しかけて来た。


「僕はこの鍵を開ける事が出来る。君の鍵も開けてやれるけど条件交換しよう。開けてあげるから僕を匿ってくれる事は出来る?」


「出来ない事もないけど?」


 こうして開けてもらい人目に付かない様に、夜中に抜け出し以前住んでいた実家に連れて行った。

 美月は幽霊なので、本当は自由自在にあの牢屋から出る事は出来たのだが、一体この男は何者?


 好奇心が勝ち、この男を匿う事にしたのだ。


 それはこの現世に、こんな突拍子もない生き物が、存在する事に疑問を感じたからに他ならない。


 こうして以前住んでいた家の屋根裏部屋で、匿ってやる事にした。

 やっとの事逃げ出すことが出来たのだが、そう言えばあの時助けてくれた男の人はどうなったのか?


 その時、ふっとあの〔菱本酒造〕の跡取り息子菱本拓也の事を思い出した。


 {車が衝突して確か、意識を失っていたが………ひょっとしてもう死んでいるかも知れない?}


「ねえ~〔菱本酒造〕って知っている?」

 心配になり、その目出し帽の男に、知らなくて当然と思いながらも、もしかして………?という事も有るので訪ねてみた。


「ああ~知っているよ!」


 こうして地図を書いてもらい、家の屋根裏部屋にその目出し帽の男を置き去りにして出掛けた。

 地図を辿り辿り青い鳥になり、丁度見頃の赤や黄色にお化粧を施した、美しい山々を眺めながら悠々と空を飛んでいると。

「嗚呼!有った!」


 早速〔菱本酒造〕に飛び込んだ美月。

 そこに従業員らしき人を発見。


「あの~この家の跡取り息子さんはご在宅ですか?以前、こちらの拓也さんと言う方に、助けてもらった事が有る者ですが?」


「アァ~…………残念ですが……お亡くなりになりました」


「エエエエエエ―――ッ!ひょっとして1年前の衝突事故でですか?」


「いいえ・・・病気でお亡くなりになりました。白血病です」


「あんなに優しい人が………ウウウウッ;つД`)」



 美月の目からは、涙がとめどなく溢れる。

 そして…あの優しい拓也に会って、あの時言えなかったお礼を言おうと極楽浄土に向かった。

 

 

 ▲▽

 美しい極楽浄土でしばしの休憩。


 天からは華の雨が降り、素晴らしい音楽が流れて。


 花や樹木澄み切った池までが金、銀、瑠璃(青い宝石)、水晶、白いつやのある貝、赤い真珠、めのうなどの宝石で、赤や黄色に青、更には金銀で装飾されてキラキラ輝いている。


 しばしの休憩も終わり、拓也を探し出そうとこの絢爛豪華な極楽浄土を隅から隅まで探し回っている。

 まさかあんな善良な拓也が地獄に落ちる訳など無いだろうと、クタクタになるまで探し回ったが、どこを探しても見当たらない。


 そこで仕方なく、まさかとは思うが、今度は地獄に向かった。


 すると……なんと……とんでもない事に……あんなに善良な拓也が、今まさに大釜の中でぐつぐつ煮込まれて、鬼に頭からガブリと食べられて跡形もなくなったかと思うと、「不味い」そう言うと内臓だけペッと口から放り出し、大釜目掛けて吐き出した。


 すると……またくもモワモワ~と拓也の身体が再生されて。

「タッタスケテクレ――――――――ッ!」


 絶叫で叫んで、またくも鬼に金の金棒で煮えたぎる大釜に押し込まれている。


「エエエエエエ―――ッ!一体どういう事?あんなに優しくて、親切な卓也が何故?地獄に居るの?」


 するとその時「ゴッゴゴゴゴ————————ッ!」


 物凄い爆音と共に、台風の目の様な渦に巻き込まれ、凄い凄い勢いで現世に引き戻された。


「アッ!私は夢を見ていたのかしら?」


 目を開けると、ベッドで眠り続けていた美月を心配そうに覗き込む、優しい父親の学と美しい母親の美穂がそこには居た。


「エエエエエエ―――————————ッ!今までの体験は全て夢の世界の出来事なの?」


 どれが現実で…………どれが虚構の世界なのか…………。














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