第9話⁂黒い巨大な影!⁂
私、立花美月は賽の河原の模範生であったことから、問題児武丸共々出来の悪い親達の成敗として、地蔵菩薩様に現世に蘇らされた。
だが、一緒に現世に蘇らされた筈の武丸は現世にはいない。
一体何処にいるのか?
こうして武丸の消息が分からぬまま、義母智子の家の屋根裏で復讐する為に住み着いて、義母智子を、もっとも非道で残酷な殺し方であの世に送り込んでやろうと、策略を練っている美月。
あの日私は……武丸の消息を突き止めるために、武丸の写真、特徴、年齢を記入したチラシを作り、ビラ配りをしようと新潟駅前に向かった。
だが、そんな事はさて置き、大切な今尚面影を偲んで人知れず涙する瞼の母が、あの日、目の前に現れた。
{これは一大事!}
そして…後をつけた。
{私は……幸福の象徴「青い鳥」になり必死になって若かりし頃の両親を追ったわ}
だけど……あんなにもお似合いの幸せそうなカップルの行く先々に現れる、大きな黒い影、それは段々と巨大化して2人を飲み込もうとしている。
それは怨念が作り出した恨みの塊。
歪んだ醜い黒い影の正体。
{アアアアアア!ああああああああ!嗚呼!嗚呼!嗚呼!一瞬怨念の塊である黒い影の中におばあちゃんが見えた・・・エエエエエエ————————ッ!なんで~?あんな優しかったおばあちゃんが何故?でも……?でも……?何故おばあちゃんが、母親の美穂に恨みを持たなければならないの?}
すると……今度は……?
{エエエエエエ―――————————ッ!}
見覚えのある女性の黒い影が一瞬、バ————————ッ!と一気に巨大化したかと思うと””ボ―――ン!””と爆音を鳴り響かせ爆発した。
{だがハッキリと憎き義母智子によく似た顏が?でも……あれは義母智子ではない、別の女性でよく知っている女性……?嗚呼?誰だ?思い出せない?だが、見覚えのある顔?}
生物が透視能力を持てるのであれば、土の中で暮らす生き物とか、コウモリやフクロウや夜行性の動物などが透視能力を持つようになると思われている。
けれど、現実には、光が使えない場面では、聴覚や超音波が利用されている。
早速コウモリに転生して透視して見た。
{エエエエエエ―――ッ!何々?おばあちゃんが母美穂に抱く恨みの正体は?}
それは代々新潟県T町に内科・小児科を開業するたった一人の跡継ぎ、その息子学を奪った女、それが母親の美穂なのだ。
母親美穂の家族は、父親がイラン人で母親が日本人の、美穂と弟が2人の5人家族。
父はイランからやって来た非正規滞在者、遥々イランから好景気に沸く1970年代後半日本に出稼ぎにやってきた人物で、この時まだ若干18歳。
非正規労働者として若干18歳ながらも、故郷で待つ家族の為に昼夜を問わず「3K労働」に従事するアリ。
【「3K労働」とは、若年労働者が敬遠する「きつい」「汚い」「危険」な労働を、頭文字をとって3K。 建設・土木、ゴミ処理などの肉体労働や、警察官や看護師、介護士など勤務・労働条件の厳しい職業を指す】
1970年代のアメリカ社会を背景に、「行き場のない青春のエネルギー」をディスコで踊ることで晴らす惰性の生活を送っていたジョン・トラボルタ演ずる青年トニーが、ディスコで出会った女ステファニーの生き方に心を開かれ、新しい生活へ目覚めて大人へ脱皮していくさまを描く。週末ごとに行くディスコが主な舞台の映画。
裕福な住人も多い華やかな都会的なマンハッタンと、ブルックリン橋を渡ったらすぐの位置にある、労働者の街であるブルックリンとが対比して描かれており、単なる娯楽映画ではなく当時のアメリカの格差社会を風刺した映画でもある。
この映画の「トラボルタ」の風貌や決めポーズ、映画に使われたディスコ・ミュージックが世界的に人気になり、ディスコ文化を取り巻くファッションやサブカルチャーといった世界の若者文化に大きな影響を与えた。
映画のサウンドトラック『サタデー・ナイト・フィーバー』は驚異的な売上を記録した。
日本ではこの映画の影響でディスコ・ダンスで踊り、熱狂することを指す「フィーバーする」という言葉(和製英語)が生まれた。
そのくらいこの時代の若者たちは、ディスコで踊り、熱狂してフィーバーしていたのだ。
夜な夜な、この『ディスコ・キャメル』に現れる美しい少年?青年?は、この界隈では、余りの美しさとダンステクニックに、若い女性たちの間では、チョットした有名人。
イラン人のアリは、多数の民族の美しい顔立ちの遺伝子を受け継いだ、何とも端正で美しい美少年。
辛い仕事のうさはらしの為に夜な夜なやって来るのだ。
抜群のダンスセンスのアリの事を『ディスコ・キャメル』の王子、プリンス、キングと巷の女性たちは噂で持ちっきりだ。
そんな魅力的な男に、夢中にならない女性が居ましょうか。
母親順子の方が、先にイラン人の父親アリに夢中になった。
そして…母親順子の度重なるアタックで徐々に付き合い出し、やがて恋に落ちた2人。
母親の順子は日本人で、造園会社を営む家庭のお嬢さん。
この時既に23歳でアリより5歳年上。
モテ男アリも、よく承諾したものだが、そこにはイランの貧しい経済事情が有る。
アリにしてみれば、幾ら絶世の美男子で、ダンスが上手いからと言っても非正規滞在者の身の上、経済大国の日本人のお嬢様に見初められて、結婚出来る事が何よりもの希望。
途上国のイランで貧乏生活を強いられている家族の為にも、逆玉に乗る事は何よりもの夢。
【イラン人にイケメン・美女が多いルーツにはイランという国が中東に位置していることがポイント。
有名な四大文明のうちエジプト・メソポタミア・インダス文明のラインの中心には中東の国々が存在していた。
中東は各文明の要所となり、民族同士のさかんな交流があった。
そして、多数の民族の美しい顔立ちの遺伝子が受け継がれてきたのだ】
こうして愛を育んだ2人だったのだが、両親は大反対。
それでも…親の反対を押し切り結婚に踏み切った2人。
やがて、両親に誠心誠意尽くしてくれるその姿を見るにつけ、とうとう両親の方も折れて、結婚の条件を出したのだ。
「造園の仕事に向いていれば結婚しても良い!」
こうして両親に認められて婿養子に入り、造園業を営んでいるのだ。
一方の学の両親はそんな訳には行かない。
それはどういう事かと言うと、このT町は、近年高齢化が加速して人口の減少傾向にある町。
学の家族は、代々このT町に『立花内科・小児科医院』を経営するお医者様一家。
美穂の方はと言うと、両親が「高等看護学院を卒業してからでもいいんじゃないの?」と勧めたにも拘らず、看護学校を卒業するなり18歳から看護師としてこの『立花内科・小児科病院』に勤務し出したのだ。
それは、造園業を営む両親の並々ならぬ仕事への熱意を見るにつけ{自分も職人のような鍛錬された看護師になりたい}
その熱い思いから一刻も早く看護師になり、現場で働き一人前になりたいと切に願っての事なのだ。
こうして『立花内科・小児科病院』に勤務し出した美穂なのだが、早速この家の医大生学に見初められて、駆け落ち同然で結婚した。
それは、至極当然の事、イラン人と日本人のハ-フという事も有り一際目立つ美人。
そんな美しい女性に恋をしない男性が居ましょうか。
学は、その時、既に付き合っている女性が居て結婚の話まで出ていた。
その女性の家系は、代々地元の名士で超が付くほどのお金持ち、こんな過疎化が著しい田舎町の病院など、いつどうなるか分かったものではない。
その為にも、そのお譲さんとの結婚に強い期待を抱いている両親なのだ。
だが、親の意図する考えとは裏腹に2人の意思は固い。
余りの猛反対ぶりに2人は、とうとう駆け落ちをしてしまったのだ。
それに怒り心頭の『立花内科・小児科医院』の学の両親。
いくら病院経営のお金持ちと言えども、なんといってもこんな田舎町。高度成長の波に乗り、若者は浮かれ気分で大都会東京を目指している時代。
地方の開業医など、いつどうなるか分かったものではないのだ。
そこで地元の名士と強いパイプで結ばれたいと、頓に願っているのに…………。
「全くあんな女のせいで、病院が倒産の憂き目に遭ってしまった。許せない!許せない!許せない!」
一方の学と付き合っていた女性の方も強い恨みを抱いている。
「アアアアア!よくも私から学を奪ったわね…許せない!!!ウッフッフッフ~!今に見ていらっしゃい!只じゃ済まないから!」
母親美穂を殺害したのは一体誰なのか?
【新来外国人は一般的に、1970年代末から増加が本格化し、80年代後半あたりから急増した。1980年代後半は、日本にとって空前のバブル景気で、送り出し国の多くは発展途上国であったという構図がある。好景気に沸く日本は労働力不足に見舞われていた。一方の途上国にとって日本は魅力的な出稼ぎ国として映った。違法ながら、短期滞在など資格外の外国人労働者を雇い入れる業者が居た。そんな中、外国人は「3K労働」に従事する者も多かった】
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