第8話⁂極楽浄土!⁂


 私、立花美月は7歳で死後の世界、賽の河原に辿り着いたの。

 そしてせっせと河原の石積みにせいを出し、鬼さんの妨害にもめげずに石を積み続けて、とうとう地蔵菩薩様のお導きで三途の川を渡らせて貰える日が来た。


 アアアアア!それでもひょっとして地獄に突き落とされたらどうしよう?でも極楽浄土に住むことが出来たらこんな幸せな話はない!


 希望と不安で押し潰されそうな美月。


 その時に4歳の武丸と言う坊やも一緒に渡れる事になった。

 武丸はまん丸に太っていて現世でも、この身体に匹敵する食いしん坊さんだったらしい。

 何でも目の前に有ると食べたくなる子供だったらしく、夏場にクーラ-が効いていない部屋にうっかり昼食の残り物が、テーブルに出してあったのを食べて、敢え無く命を落としてしまった。



 おばあちゃんの家が隣に有るので、その日は、お泊りして来ると言っていたので、うっかり出して置いたら、食いしん坊の武丸が匂いに誘われ、こっそり帰って来て食べてしまった。


 昼食の残り物が腐り、ブドウ球菌が発生して食中毒で死んだのだ。


 こんな感じで、幼いせいもあるが、やることなす事どんくさい。

 放っておいたら絶対虐めの標的だわ?


 私は、もう三途の川を渡れる日にちが決まっていたので、武丸の石積みをず~っと手伝ったわ。


 何で手伝ったかって………?

 まあ~?可愛い所もあるのよ。


 …それと?現世で何か………?

 武丸に償いのようなものが…有ったような………?


 ぷよぷよ太っていて愛嬌があり、ついつい笑顔になっちゃうのよね。ウッフッフッフ~!

 だから私は付きっ切りで手伝ったの。


 そして、とうとう鬼さんの妨害にも打ち勝ち、石を積み上げることが出来たの。



 待ちに待った三途の川を渡る日がやって来た。

 私と武丸は三途の川の入り口で待っていたの。


 すると……地蔵菩薩様が現れて、私達は三途の川を渡る為の代金六文を払い、赤い太鼓橋を渡って極楽浄土に着いたわ。



 💎🔹✨🔹💎🔹✨🔹💎🔹✨

 嗚呼~!それは何とも煌びやかで得も言われぬ美しさ。

 宝石💎が至る所に散りばめられて、もうびっくりしたのなんのって!


 四方八方から眩いぐらいの後光が差して、とても過ごしやすい気候で、天からは色とりどりの華の雨が降り注ぎ、息を呑む程の美しさだったわ。


 地面には「七宝」といって、金、銀、瑠璃(青い宝石)、水晶、

白いつやのある貝、赤い真珠、めのうなどが引き詰められ、眩いぐらいの光を放ってこの極楽浄土を照らしあげている。



「ワァ~~すご~い!煌びやかで、こんな世界見た事無い!」



 池には 至る所に宝の睡蓮(すいれん)が咲いている。一つ一つの宝の睡蓮は、三十六億の光を放っている。


 金、銀、瑠璃、水晶、赤い真珠の樹木には、赤や黄色の宝の実が煌びやかに実っている


 だが一瞬・・・枯れ木になった気がした・・・美月。

 {変だわね?こ~んなにきれいな財宝の山が枯れ木になる訳が無いのに?…きっと勘違いだわ?}



 一日に六回、曼陀羅華(まんだらけ)の花が空から一面に降りそそぐ。


 赤や黄色や緑の美しい鳥がゆらゆらと天空を舞い、一日に六回、美しく優雅な声でさえずることで教えを説いている。


〔水鳥・孔雀・オウム・九官鳥、共命(仮想)の鳥など〕


 宝石が散りばめられた並木や網が、そよ風に揺られて妙なる音を鳴らす。

 それは百千もの音楽が一緒に流れているように何とも美しい響き。


 極楽浄土の人々は自然に仏を思い、法を思い、僧を思う気持ちが起こるのだ。…



 だが、その時その煌びやかな華の雨の中に…………黒い蝶なのか?

 ………コウモリなのか?

 不気味な大群が押し寄せて来た。


「武丸この美しい極楽浄土に、あの不気味な大群怪しいでしょう?」


「おねえちゃん何言ってるんだい?何も居ないよ?」


 地蔵菩薩様に尋ねても。

「な~んにも見えないよ。美月は頑張って武丸の手伝いもやったから疲れているのだよ!」


 その時、極楽浄土の入り口付近に、鋭い悪意に満ちた巨大な目がピカリと光った気がした。

「地蔵菩薩様、絶対に見えますって?」


「ワッハッハーワッハッハー可笑しな娘だな~、何も見えないよ!」


「本当だよおねえちゃん変だよ?」


「私が変なのかな~?」


 まあ~皆がそういうのだから仕方なく、またもや極楽浄土巡りを開始した。



 今度は極楽浄土にある宝の池にやって来た。

「七宝の池」というらしい。


 池の底には砂金や宝の砂が敷かれ、七色に光り輝いている。

 更には…「八功徳水」という、八つの功徳のある水があふれ出ている。


 池の中には、葉の大きさが車輪ほどの美しい蓮華が咲いている。


 赤色の蓮華の華は赤色の輝きを🌸*🌸*🌸


 黄色の蓮華の華は黄色の輝きを❀


 青色の蓮華の華は青色の輝きを❀💎🔸💎🔸💎


 白色の蓮華の華は白色の輝きを放ち❀

清らかで芳しい香りを放っている。


 白や黒はもちろん、黄色や朱色、紫など、

限りない色の輝きを放っている。


 宝の蓮華の花は、三十六百千億の光を放って、その一つ一つの光から、三十六百千億の紫金の仏さまがお目見えする。


 その一仏一仏が、それぞれ百千の光明を放って、大宇宙の限りない人々のために、

妙なる法を説きに行かれる。


 それが、大日如来や薬師如来、地球の私たちのもとに来られたのは、お釈迦さま。


“極楽世界”とは、一大仏道修行の道場で、いたれりつくせりの待遇も、仏道修行に専念できるようにとの、仏様のお考えなのである。


 こんな荘厳かつ何とも煌びやかな極楽浄土に、留まれるのかと思いきや、私と武丸は現世に突き落とされ転生してしまった。


{ちょっと待ってよ地蔵菩薩様?絶対に何か不吉なものが見えたのよ!まったく~!}


「あれ~?武丸も一緒に現世に来ている筈だが?」


 武丸はどこに行ってしまったのか?

 あの極楽浄土では何が起こっているのか?

イヤ?ひょっとして?あれはまやかしの極楽浄土だったのだろうか?


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