第7話⁂悪夢⁈⁂


 転生だけでは済まない、諸々の過去の恐ろしい呪縛に囚われて、転生憑依してしまった美月。


 転生より転生憑依の方が、より怨念が強い。

【★死んで違う肉体を得る=転生★動物などが精神的・肉体的に人間に乗り移る=憑依】


{私は、お腹が空いて夜中に起きて、盗み食いがクセになって居たのね。ある日とうとう義母に見付かり散々虐待を受け、原形を留めない程の暴力に遭い、死んでしまったの……そして……この賽の河原に辿り着いたの}


 美月は、義母真由美から壮絶な虐待を受けて、賽の河原に辿り着いた。

 そして……地蔵菩薩様から転生憑依のお力を授かり、現世に引き戻された。



 ◇▲◇

 義母の真由美は、父学に離婚され刑務所に入っていたが、模範囚だったため、5年の刑期を終えて出所していた。


 当然の如く、慰謝料も極僅かばかりの雀の涙ほどで、息子の親権も父親の学に渡った。

 だがあいにく、実家がお金持ちだった為、立花家が住んでいたN市から小一時間位の、村上市に親所有の物件の空家を貰い、罪人である事を隠すために名前も〔立花真由美〕から〔木村智子〕に変更して生活している。


 そこに今尚、恨み冷めやらぬ美月が、蛇に転生憑依して住み着いている。


{あの憎き義母、元真由美〔現在智子〕をこのマムシの猛毒で殺してやりたい。嗚呼~憎い!憎い!憎い!}


 そして…智子が寝静まった頃を見計らって、智子の寝室に潜り込み、暫くの間とぐろを巻いて様子を伺っているが、あの時の苦しみ辛さが蘇り、いっその事絞め殺してやろうか、それとも……一気にこの猛毒で地獄に突き落としてやろうか、算段中。



 だが……?ある夜、美月は何とも奇妙な夢を見た。

 それは義母の元真由美〔現在智子〕らしき女性が何とも悲惨な目に合っている姿を、夢の中で見てしまった。


 何故あのようなとんでもない夢を見てしまったのだろうか………。


 ⑤大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)に落とされ、 罪深い亡者智子が激しく𠮟り責められ、地獄の苦しみを味わいながら大声を発して泣き叫び、命乞いをしている、何ともおぞましくも恐ろしい夢を見たのだ。

 


 ★五戒を破ったものが堕ちるとされる。大叫喚。

「五戒」は、以下の5つ。

 殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語(うそ)の罪がある人が行く地獄。


 今まさに、一番罪が軽く地獄の中でも最も浅いところにある等活地獄(とうかつじごく)で、殺生を行った罪で智子らしき女が、同じ罪人に肉を引き千切られ、血しぶきが四方八方から噴き出し飛び散って、もがき苦しんで絶叫を上げている。


「ギャ――――――――ッ!」


 このままでは、引き千切られ骨の髄までしゃぶられると思ったのか、今度は智子が相手の罪人の、肉を刃物で思いっ切り引き裂き、目ん玉を刃物でグッサし引き抜いている。


 すると……今度は又もや罪人が間髪入れずに、智子の口を鋭い刃物で思いっ切りつんざいて、目元まで口が引き裂かれて、恐ろしい妖怪そのものになってしまっている。


「ギャッギャ――――――――ッ!グググ クックルシイ!タタタ タスケテ――――――――ッ!」


 身体からは内蔵が飛び出て、絶え間なく血しぶきが辺りに飛び散り、骨になるまで殺し合っているが、死者なので又修復して元の身体に戻るの繰り返し、無限大に苦しみが増している。


 すると今度は、②黒縄地獄(こくじょうじごく)に引きずり込まれている。

 ここは、殺生や窃盗を犯した者が入れられる地獄。

 等活地獄の苦しみは10倍になる。


 今智子は、熱した鉄板で焼かれては、巨大な包丁で恐ろしい鬼に、ズタズタに切り裂かれ、大釜で煮こまれるている。


「グワッグワ――――――――ッ!ヤッヤメテクダサイ————ッ!ゥウワァ————————ッ!」


 身体は原形を留めないほど、粉々に打ち砕かれて、身体は切り刻まれ、得体の知れない物体になりながらも、プルルップルルッ逃げ惑っている。

 この苦しみを1,000年は続けなければない。


 ③衆合地獄では人の子供を陵辱したとして、体をひっくり返されてめくられ、高熱のどろどろ煮えたぎった銅を肛門から流し込まれて、内蔵がとろ~んと溶けて、余りの痛さに気を失っているにも拘らず④叫喚地獄(きょうかんじごく)に投げ込まれている。

 ここは飲酒をした罪人が入れられる地獄だが、智子は酒が飲めないのでスル―。


 いよいよ最後の⑤大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)に引きずり込まれている。

 ここは妄言をしたものが落とされる地獄で、熱した鋭い針を使われ、目や口、舌を幾度も刺されたり抜かれて、目は全く見えなくなり、恐ろしさの余り、恐怖で逃げ惑う智子。


「ギャッギャ――――――――ッ!グワーッグワ――――――――ッ!タタタスケテ――――――――ッ!」


 口は刃物でつんざき、舌は引き出されて絨毯の様に巨大に広がり、熱した鋭い針で隙間なく刺され、更には鉄の熊手を引きずり回されている。


「キャ――――――――ッ!」

 もう声も出せないくらいに身体が消耗して死ぬ寸前の智子。

 なんとここは8,000年も続く。



 こんな状態にもかかわらず、更に、叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、大釜から余りの熱さに、もだえ苦しみ這い上がろうとすると、恐ろしい鬼がギュッと大釜に押し込み、目や鼻は溶けただれて茶色に溶けてドロドロ、それを鬼がガブリと口に放り込んでムシャムシャ食べている。


 やっとこの苦しみから解き放たれ死ねると思ったら大間違い。

 既に死んでいるので、また修復して更に酷い苦しみが待っているのだ。


 余りの苦しさに大絶叫を上げ叫び続けている智子。


「ギャッギャ――――――――ッ!グッグググ――――――――ッ!ククッ苦しい――――――――ッ!」


 絶え間なく大絶叫があちこちから聞こえて来る。

 まさに地獄絵図とはこの事だ。


 美月は夢の中で呟いている。

「フンいい気味だ!」


 その時、夢から覚めた。


{エエエエエエ―――――――――ッ!義母智子は死んでなんかいない。生きてるって―の!}


 今の夢は一体何だったのか?

 のちのち夢の正体が判明する。

 これは美月の復讐心が生み出した悪夢?

 それとも……美月の心が生み出した非現実的世界なのか?





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