魔法界を救う(2)

 洋介とサクラは、魔法の練習を始めてから、2級魔法士、1級魔法士、特級魔法士と順調にランクを上げて行き、残り1ヶ月で特A魔法士の資格を取得する。そのための練習が始まった。


 そんな中、この魔法空間はいつもでも季節は春の陽気のまんま。外はもうすぐ夏だというのに、ここに来ると季節感がなくなる。ただ、この空間は自由に季節を変えることができ、要するにこの季節が魔法の練習に適していた。


 洋介は、グランドの真ん中の芝生の上で、魔法の練習の合間の休憩を取っていると。その近くではサクラが休憩時間を取らずに魔法の練習をしている。

「サクラちゃん、練習もいいけど、休憩も大事だからな!?」

「わかってるって、練習の邪魔しないでくれる……!?」

「なんなだ、あの態度!? 最近、あんな調子だけど、大丈夫か!? ねぇ、風ちゃん、そう思わないか?」

 風花は、洋介の隣でちょこんと座り、サクラの方を見ながら。

「私に振らないでよね、私には恋愛相談の機能はありませんので」

「はぁ!? 風ちゃん、そういう言い方やめてくれる!? 使い魔がAIみたいなことを言わないの。それに、なんで恋愛の話になるんだ?」

「……」

「無視かい……!? そういえば、最近、青ちゃんの姿が見えないけど、あいついつも何やってんだ? 何か趣味とあるのか!?」

 

 その時、洋介の背後に現れた、3Dホログラムの青の魔法石は、洋介に声をかけた。

「私の趣味!?」

 洋介は、その声にちょっと驚き、後ろを振り向くと。

「青ちゃん、やめてくれる!? 突然後ろから現れるの」

「はぁ!? それ、洋ちゃんが言うかなー、洋ちゃんの真似をしただけですけど」

「私の真似!?」

「そうだ、美術館巡りとか、どうかな?」

「何いきなり……!? いいんじゃないの、ちょっと待った」

「大丈夫、私、こう見えても姿消せるんで」

「えっ!? そうなの?」

「そうだよ、あっ、言っときますけど、監視はしてませんので……何その疑いの目は?」

「別に、疑ってはないけど、私、そんな目してた?」

「してました、ねぇ、風ちゃん?」

「してた」

「あっそ、そっちがそういう態度なら」


 その時、洋介たちに背を向けて、魔法の練習をしていたサクラが後ろを振り向き。

「そこの3人、気が散るから、向こうでやってくれる!?」

 この発言に、滅多にサクラに意見を言わない3Dホログラムの青の魔法石だったが。

「サクラさん、1ついいかな? そのくらいの集中力ではまだまだですね。洋ちゃんのように、少し余裕を持ちなさい。それに、休憩はちゃんと取りなさい、いいわね!?」

「はい、わかりました」


 サクラは魔法の練習をやめ、スポーツドリンクを飲み、芝の上に座り休憩をしている。

 その光景を見ていた洋介は、ふと本当に私が魔法管理責任者に相応しいのか、本当に私で大丈夫なのか、そんなことを考えていると。

 それを見透かされたか、3Dホログラムの青の魔法石は、魔法管理責任者はあなたをおいて他にはいないと言い。

 従業員たちみんなは、洋ちゃんを鑑定士としても人間としても尊敬している。確かに、どこか頼りなく、からかいたくなるキャラでもあり、この人で本当に大丈夫、ってところもあるけど。

 何があってもみんなを守るという信念を持ち。自分が信じた道を突き進む覚悟、人を思う気持ち、洞察力、人を導くリーダーに必要な資質を持っている。そして、自分の弱さを知り、生きようとする執念を忘れない。だから私は、あなたに黄金の杖を託し。そして、サクラさんは、あなたを支えるために必死であなたに遅れをとらないように頑張っていると言った。


 そんなことを聞かされた洋介は、よくわからないが、私はリーダーになる自信はない、人の上に立つ器でもんない。しかし、守りたい想いは誰にも負けない。魔法は人を幸せにできる力を持っている、私はそう信じている。魔法は守りの力、必ず魔法を守ってみせる。それがみんなを守ることになり、この世界を、って偉そうなことは言えないけどね。でも、本当にいいのか、私で。自信なさそうに言うと。

 芝の上に座っていたサクラが立ち上がり、洋介の方を向き、あなたでいいんじゃないのと言う。

 洋介は、その答えに、肝心なことを言い忘れたことを思い出し。

「あっ、言っとくけど、鑑定士はやめないからな、夢とロマンが逃げちゃうから」

「いいんじゃないの」


 この時、既に青の魔法石は、姿を消し、自分の部屋に戻っていた。

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