魔法への想い

魔法への想い(1)

 洋介と福山総理との関係を知ったサクラの父親は、思わず過去に戻ればと言いそうになった。しかし、過去に戻れば歴史が変わる、勝手に歴史を変えるわけにはいかない。魔法で人間を蘇らせることはできない、倫理に反するから、だから命は尊い。そのことは、洋介君もよくわかっている。

 この世界に来て、魔法は無限の可能性を秘めていると思うようになった。でも、矛盾していないか。洋介君は、過去に戻って、魔法界の住人たちを救いたいと思っている。これは歴史を変えることにはならないのか。


 洋介は、その矛盾に対し、歴史を変えることにはならないと言う。そして、確かに、魔法界は存在した。しかし、この世界では魔法界は存在ないことになっている。だったら、存在しない魔法界の住人たちを救ってもなんの問題もない、この世界で生きてもなんの問題もない。ただ未来が動いているだけ、魔法共存の世界という名もとで。


 この時、青の魔法石は洋介の許可なく風花に頼み、福山総理に1冊のノートを手渡し、そのノート表紙には『魔法の未来』と書いてあり。ページを開くと、驚きを通り越し、末恐ろしいほどの魔法への想いが書かれていた。


 このノートに書かれている魔法の概念は、守りに徹すること。攻撃魔法など何一つ書かれていない。そんなのは映画、アニメの世界だけでいい。ただ、一つの考え方として、攻撃は最大の防御とも言うが。

 魔法には、メリットとデメリットがある。しかし、ここに書かれている魔法は、メリットがあまりにも大き過ぎる。

 もし国民に魔法の要否を問うと、魔法は必要だと95パーセント以上の国民がそう言うだろう。ただ、そのせいでデメリットがかすんで見えなくなる。


 例えば、このページによると、電気を半永久的に使える「魔法電池」の呪文のこと書かれている。

 1家に1つ魔法電池があれば、電気は使いたい放題、停電をすることはない。そして、車にも魔法電池が搭載され、どこまでも走り、ガソリン車はいらなくなる。電気はすべて魔法電池で補い。当然、電柱もなくなり、有線電話は魔法電波に代わり、光回線と同じくらい、いや、それ以上の安定したネットワークが可能になり、電話の繋がらない場所など存在しない。

 しかし、一方では、火力発電、水力発電、太陽光発電、風力発電、原子力発電、地熱発電、発電するものは何一ついらなくなり、電力会社なくなり、それに関わる会社が危機に陥り、倒産に追い込まれ。ガソリンスタンドもなくなり、石油会社もなくなる。そして、大勢の失業者が発生する。

 いわゆる、AIが人間に取って代わり、AI失業者が増えるように、魔法が人間に取って代わり、魔法失業者が増え。仕事を奪い、生きがいを奪うことにもなり兼ねない。そして、電気のありがたみがわからなくなる。

 では、それをどうやって解消すればいいのか。電気の基本料金、電気料金を税金として国に治め。その税金を失業者に補てんする。

 果たして、それでいいのか。働くとはどういうことなのか、現在働いている人たちはどう思うのか。

 何かを得ようとすると何かを失う。常にバランスが必要となるが、何かいい得策を考えるべきだと思う。


 例えば、このページによると、復元魔法の呪文のことが書かれてある。

 文字通り、壊れた物を復元できる魔法だが。もし壊れたらなんでもかんでも復元すればいいという考えが当たり前になれば、物の価値や物のありがたみがわからなくなる。


 魔法は、そういう大事なことを忘れてしまいがちになる。だったら、そうならないようにかれすればいいだけのこと。すべては、一人一人のモラルの問題だということ。魔法を制限するということにも繋がると思う。

 魔法は、確かに便利だ。ただ、その使い方がさえ間違わなければいいだけのこと。よく考えて使わなければならない。なんでもかんでも魔法に頼ってはダメだということになる。そうしないと、人間は堕落の底へ落ちていく。そう科学も同様だと思う。


 最初のページ戻ると、こんなことが書かれていた。

 魔法は独占してはいけない。もし魔法を日本が独占すれば、世界から完全に孤立する。従って、世界情勢は見えるが、何も助けてやれない。オリンピックにも参加できない、海外旅行もできない。井の中の蛙状態になる可能性がある。

 ただ、日本は孤立しても日本は生きていける。戦争には絶対に巻き込まれない。あらゆる攻撃から魔法で日本を守り、あらゆる災害から魔法が日本を守ることができる。天気だって魔法で制御できる。魔法で日本のGDPは世界トップになる。

 あとは、一人一人に守りの魔法がかかったミサンガをつけていれば、あらゆる災難から身を守ってくれる。事故・事件などに巻き込まれることはない。即ち、事故・事件など起りようがなくなる。

 しかし、本当にそれでいいのか。守りは大事だが、やはり魔法の独占はよくない。綺麗ごとだが、自分たちだけよければそれでいいのか、それは違うと思う。

 ただ、魔法を独占しない条件として、魔法の権利は日本のものとする。感覚的には、魔法を無償で貸して出すということ。但し、魔法の使用には条件が伴う。こちらが指定した、法律等に従ってもらう、世界共通ということになる。

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