父の遺言(5)

 福山は、洋介の父親の店で働き、鑑定士とはなんなのか、その道を極めてみたいと思うようになり。洋介とは、親友のような、兄弟のような、とにかく2人は仲がいいが、いざ鑑定となると、まるで別人のように競うような感じだった。別に勝ち負けなど関係はないのだが。夢とロマンは決して忘れない。


 それから4年が経ち、洋介は20歳になり、福山は30歳になり、お互いいいライパル関係で店も繁盛し。福山家と大泉家は家族ぐるみのつき合いなっていた。

 福山は、店長のことを大ちゃんと呼び。業務時間内は店長と呼ぶが、つい大ちゃんと呼ぶ時がある。店長を尊敬し、師匠でもある。

 そんな時、50歳になった福山の父親は、次期総理候補に挙がり、ほぼ総理の座が見えていた。そんな矢先、病気に縁のなかったせいなのか、病院嫌いなところもあり、仕事が忙しいと特定健診を受けずにいた。そのせいなのか、突然の病に倒れ、政界に激震が走った。


 親父は、病院のベッドの上で言っていた。あと1歩で総理なれたのに、無念すぎる。もし正則が、私の、すまない、気にするな。この1週間後に亡くなった。

 私は親父に何一つ親孝行をしていない、この言葉が頭から離れない。親父の果たせなかった夢を私が果たす、そう決めた。

 大ちゃんは言っていた。やるからにはその道を極めろ、親父に似ている。政治家を極めるとはどういうことなのか、おそらくこの道もゴールのない世界だ。


 あれから10年が経ち、福山は政治家になったが、父親との格差を思い知った。しかし、持ち前のコミュニケーション能力と分析力を使い、政治家とはなんなのか徹底的に分析し、歴史を調べ、今のこの国の何が必要で何が足りないのか、自分の目で、耳で、感じ見極めていた。

 そんな時、福山は自宅のリビングでソファーに座りテレビを見ていると。群馬県に住む福山の友人から、1年ぶりに携帯電話がかかってきた。

 すると、福山はいきなりソファーから立ち上がり、鳥肌が立ち、驚き、その話しに間違いがないか何度も確認している。


 その電話の内容だが、その友人の親友の会社が不渡り手形をつかまされ、3日以内にあと300万必要だと言い、自分のディズニーグッズをすべて処分し、売りたいと言っている。そこで、以前福山がリサイクルショップで働いていたことを思い出し、その店で買い取ってもらえないかと言い。そのディズニーグッズの中には、セル画も何枚かあり、あの幻のセル画らしきものもあると言う。

 そいつが本物なのか、電話では確認できない。セル画の画像をメールで送ってもらう必要があるけど、自分の目で確かめたい。しかし、明日から本会議が始まる、どうしたらいいのか。

 大ちゃんには頼めない、出張買い取りは都内のみ。でも、一応電話してみるか。そう思った福山は、洋介の父親の携帯電話にかけてみると。福ちゃんの頼みならと快く引き受け。以前から福山があのセル画を探していることを知り、お互い探していた。そして、翌日、あの事故が起こった。

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